渡邊雄太

誰をロスターに残すか、ラプターズは『戦略的に』決定

新型コロナウイルスの流行に伴う変則スケジュールにより、プレシーズンの試合数も削減され、主力の調整が主になっています。例年であれば、プレシーズン終盤になるとロスター入りを目指す選手たちのサバイバルが試合の中心となるのですが、今回その立場にいる選手たちは、各試合第4クォーターの短いプレータイムで精一杯のアピールを繰り広げています。

ラプターズでのロスター入りが期待される渡邊雄太は、2試合続けてセカンドユニット中心の第3クォーターに登場し、ローテーションに入る戦力として機能するのかを試されました。迎えたプレシーズン最後のヒート戦は、9分のプレータイムで2本の3ポイントシュートによる6得点3リバウンド2アシストと上々の活躍で締めくくりました。

ただし、主力中心の第3クォーターまでには出番がなく、サードユニットに近い第4クォーターの出場となっており、このレベルでは十分に活躍できるものの、シーズン本番でのローテーションには入れないことを示されたといえます。

チームの序列で言えば14番目前後に位置しており、いつ正式契約が結ばれてもおかしくない状況にありますが、総合的な実力で下位の選手が優先されてロスターに選ばれ、それによって上位の選手が外れるケースも多々出てきます。

各チームは15人のロスターと2人の2ウェイ契約の合わせて17人しか支配下におけないため、戦略的にロスター枠を使ってきます。基本的に試合に出場するのは10人程度、プレイオフになれば8人前後まで減ってきます。それ以外の選手はケガやファウルトラブルが発生した場合の代役か、シューターやリバウンダーなど強力な一つの武器を持ち、打開が必要な場面で起用される選手です。ベンチには入るものの役割が限定されるため、総合的な実力よりもピンポイントの場面で仕事ができるかが問われます。

プレシーズン最終戦で対戦したヒートには、2019年のドラフト2巡目で指名したKZ・オクパラという選手がいます。昨シーズンは5試合で計26分しかプレーしておらず、その時点での実力ではロスター枠に入る選手ではありませんでしたが、フロントは彼を1年間チームに帯同させることで大きく伸びると考えてロスターに加えました。プレシーズン最終戦、先発起用のチャンスを与えられたオクパラは試合開始から目を見張るほどエネルギッシュに動き回り、ゲームハイの24点と驚異的な活躍を見せて、信頼に応えています。

ロスターに残るかどうか、これは『現在の実力』だけで決まるわけではありません。チームにとって13人目以降であれば、そもそも試合に出る機会が少ないだけに、ポテンシャルの高い若手が優先されます。また、ヒートのロスターには若手たちのメンターとしてユドニス・ハズレムもいます。コート上だけでは見えない要素も含めて、誰をロスターに残すかが戦略的に決められます。

シーズン前半でチームに足りないピースを見極め、後から加える戦略のチームや、ケガ人発生のリスクを優先して考えているチームは、あえて15人のロスター枠を埋めません。現時点で未契約のベテランもいれば、Gリーグで新たな才能が出てくる可能性があるため、トレードも含めてロスター枠は空けておいた方が柔軟な対応ができます。

渡邊はプレシーズンで素晴らしい活躍をみせ、ロスター入りの可能性を生み出しました。複数のポジションを埋められる上、攻守にスマートなプレーを続けたため、起用しやすい選手と評価されているはずで、15人のロスター枠に入る可能性が高いと見ていいでしょう。あとはラプターズが何を判断基準にするかによります。

それでも、仮に15人のロスター枠から外れたとしても、このプレシーズンでのアピールは無意味ではありません。長いシーズンではケガ人や戦術変更など、チーム編成も日々変化してくるだけに、チャンスは必ず巡って来るはずです。逆にロスター枠に入ったところで、14番目か15番目の選手ではプレータイムはほとんどありません。これでアピールは終わりではなく、常に準備し、さらに成長していかなければいけません。