ケガ人が続出する中、ENEOSの強さをあらためて証明

第87回皇后杯のファイナルラウンドが12月16日からスタートし、7連覇中のENEOSサンフラワーズが78-59で富士通レッドウェーブを撃破し、19日に行われる準決勝へと駒を進めた。

最終的なスコアでいえば、女王ENEOSがいつも通りの強さを見せたと言えるが、その中身はこれまでと大きく違う。この試合、第1クォーター途中に渡嘉敷来夢がゴール下でオコエ桃仁花のレイアップシュートをブロックした後の着地で、右膝を痛めて負傷退場。日本代表シューター林咲希、センターの梅沢カディシャ樹奈の主力２人がすでに欠場していた中で、大黒柱がまさかの離脱。普通のチームであれば、ここで大きく動揺して一気に崩れてもおかしくない。

しかし、女王はこの非常事態でもチームの根幹である堅守をしっかりキープ。宮澤夕貴が後半にしっかり得点を重ねて22得点とエースの仕事を果たすだけでなく、梅沢の欠場を受けて先発出場の中村優花が11得点11リバウンドのダブル・ダブル。ベンチスタートの藤本愛瑚が非凡なオフェンス能力を発揮しての11得点と、これまであまり出場機会がなかったメンバーがステップアップした。ENEOSが絶対女王であり続ける理由は日本代表の主力を多く輩出するタレント力だけでなく、ここ一番でそれぞれがやるべきことを確実に遂行し、個に依存しない高いチーム力があってこそだと、あらためて証明する快勝劇だった。

満身創痍のチームを司令塔として牽引し、勝利の原動力となったのが宮崎早織だ。自身も試合序盤に左足を捻って一時ベンチに下がるも、すぐにコートに戻って36分16秒とほぼフル出場を果たし、13得点7アシストを記録した。

「宮澤選手が大事なところで決めてくれたこと、岡本（彩也花）選手もここ一番で3ポイントシュートを決めてくれました。そして中村選手に、途中から出てきた藤本選手などみんながディフェンス、リバウンドを頑張ってくれたことが勝利に繋がったと思います」

こう試合を振り返る宮崎は、渡嘉敷の負傷退場を受けても守備でしっかり踏ん張ったことが勝因だと続ける。「タクさん（渡嘉敷）がいないと、リバウンドがすごく弱くなるので、みんなでリバウンドに入るというのはタイムアウト明けで心がけて、話して入りました。ずっとENEOSはディフェンスからと言ってきています。そのディフェンスを大事なところで一本、しっかり守れたと思います」

「自分がどれだけ通用するのかすごく楽しみです」

吉田亜沙美の不在、藤岡麻菜美の引退を受け、今シーズンの宮崎はWリーグでこれまで不動の先発を務めている。ただ、負けたら終わりの一発勝負のトーナメント戦での先発は、リーグ戦とは違う緊張感もあった。「7年目にして初めてのスタートだったので、プレッシャーというより『私で大丈夫なのか』という不安はありました。それも、みんなが助けてくれたおかげで頑張れました」

現在、ENEOSは大卒2年目の高田静が故障離脱中。前述の吉田、藤岡の件もあり、宮崎以外の司令塔は高卒2年目の星杏璃のみ。それだけに宮崎は多くの責任を担うが、「不安も少しありますけど、自分がどれだけ通用するのかすごく楽しみです」と力強く語る。

「みんなとコミュニケーションを取ってうまく試合を作れるのかが鍵になってきます。そして我慢の時間帯、大事な時に選択ミスをしない。そのために引き出しを多く持っていきたいです」

そして先発ポイントガードが自分になって優勝を逃したとは絶対に言われたくない、という強い負けん気を見せ、吉田からも心強いメッセージをもらっている。「流さん（吉田）から連絡がきて、『絶対に大丈夫だから。緊張したら自分の顔を思い出して』と言われ、それで緊張はほぐれました。負けたくない気持ちは絶対にあります」

故障者続出の今、ENEOSの8連覇には宮崎が主力としてフル稼働することが不可欠である。吉田、藤岡の前には大神雄子、楠田香穂里など女王ENEOSの歴史は名ポイントガードによって紡がれてきた。この系譜に宮崎が名を連ねる力を持っていると証明できるのか。今回の皇后杯は彼女にとって大きな飛躍を果たす絶好のチャンスだ。