トレイ・ヤング

トレイ・ヤングを軸とする「怖いもの知らずのヤツら」

2014-15シーズンに年間60勝に到達し、東カンファレンス1位通過を果たしたホークスだが、それ以降は衰退の一途をたどった。24勝、29勝、20勝というのが直近の3シーズンの成績。昨シーズンは試合数が減ったが、それでも勝率は3割を切った。それでも、若手に出場機会を与えて経験を積ませ、近い将来の強豪となるベースを作ってきた。

その筆頭がトレイ・ヤングだ。オフェンスの全権を託されたヤングは、常に自らのアクションでチャンスを作り出し、ステフ・カリーに匹敵する精度を持つ3ポイントシュート、またドライブからのフローターなど多彩なフィニッシュで得点を量産。1年目には19.1だった得点を29.6まで伸ばし、アシストもリバウンドも増やす急成長を見せている。

それだけではない。ヤングの同期のケビン・ハーター、ルーキーイヤーを終えたディアンドレ・ハンターとキャム・レディッシュも先発として30分前後のプレータイムをもらい、平均2桁得点を記録してローテーションにがっちりと食い込んだ。

3年目のジョン・コリンズは反薬物プログラム規定に違反して25試合の出場停止になったが、処分が明けた後には41試合に出場して平均21.6得点、10.1リバウンドと手堅く活躍。またシーズン途中に加入したものの、かかとのケガでホークスではプレーできなかったクリント・カペラも開幕から戦線復帰する。

こうしてベースを築き上げたホークスは、このオフのフリーエージェント市場で攻勢に転じた。ラジョン・ロンド、ダニーロ・ガリナーリ、ボグダン・ボグダノビッチ、クリス・ダン、ソロモン・ヒルを次々と獲得。さらにドラフトではバム・アデバヨに似たタイプのアスリート系ビッグマンとして評価の高いオニエカ・オコングを1巡目6位で指名。分厚い選手層を作り上げた。

バックス移籍が破談になった隙を突いてのボグダノビッチ獲得、優勝争いのできるチームを希望していたガリナーリを「コリンズの控えで」と伝えてなお契約にこぎ着けられたのはラッキーな面もあるが、とにかくフリーエージェントの注目株を迎え入れた。

セカンドユニットまで派手で豪華な陣容が整い、3年ぶりのプレーオフ進出を視界にとらえた。だが、プレーオフで勝ち上がっていけるチームかどうかは現時点では疑わしい。その顔ぶれが、あまりにもオフェンスに偏っているからだ。

ヤングはサイズの面でも意識の面でもディフェンスに難があると指摘されている。ボグダノビッチも同様だ。カペラがロケッツから放出されたのは、スモールボールを極めるためにビッグマンが不要とされたこともあるが、ディフェンスの問題も間違いなくある。ガリナーリは4番ポジションでフィジカルの消耗が激しいディフェンスをするのは厳しい。ディフェンスを武器とする選手はクリス・ダンぐらい。だが、守備を優先してヤングをベンチに置いたり、勝負どころでロンドを使わない選択ができるだろうか?

もっとも、選手を入れ替えればチームがすぐに強くなるわけではない。各ポジションに加わったベテランが良き模範となることで、若手はさらに成長するだろう。先日に引退を表明したビンス・カーターがポジティブな意味で「怖いもの知らずのヤツら」と表現した若手は、目先の勝利にこだわって縮こまることなく、昨シーズンまでと同様にチャレンジを続ければいい。ホークスにはまだ時間が残されている。まずは派手なオフェンスで自分たちの力を出し切ること。良いチームを作るには、まだそちらを優先すべきだ。

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