「このキャンプでいろいろ学べることがある」
バスケットボール男子日本代表はナショナルトレーニングセンターで強化合宿の真っ最中。東京オリンピックを中心とする今年の春から秋にかけての代表活動は、新型コロナウイルスの影響ですべてキャンセルとなってしまい、選手たちは2月のアジアカップ予選以来、久々となる代表合宿を行っている。もっとも、金丸晃輔にとっては2月の招集自体が久々だった。2017年の秋から2年半も代表から遠ざかっていただけに、彼にとっては前回に続いて「また呼ばれた」との感が強い。
「また呼んでくれて感謝の気持ちが大きいです。前回は探り探りでしたが今回は多少の慣れもあって、ラマスさんのやりたいことも多少理解しているつもりなので、余裕はあると思います」と金丸は語る。
シューターである彼にとって、チームオフェンスの中でどのように自分の持ち味を出していくか、シーホース三河とは異なるスタイルへの順応は大変な課題だ。そういう意味では試合がなくても、合宿で彼がやることははっきりしている。「新しいシステムはピック&ロールから始まるので、3ポイントファーストではなくてピック&ロールでズレを作ることを意識している感じ。そこにヘルプが寄ることでシューターは生きてくる。完全にヘルプが行くので、リーグ戦よりノーマークで打てる印象があります」
ただ、レベルの高い国際試合でノーマークで打てる機会は滅多にやってこない。多少窮屈な形でもねじ込む金丸のシュート力は、そんなシチュエーションを打開する場面でこそ生かしたいもの。それでも、ここでエゴを通すつもりはない。「このキャンプでいろいろ学べることがあると思います。ラマスさんからもアドバイスをもらっていますし、シューターとしての動き、スペースの取り方、スクリーンの使い方でいろいろ僕自身も教わりたい」
「切り替えは難しいです。迷っています」
Bリーグでの金丸は今シーズン、試投数にこだわっている。「昨シーズンは打てておらず、そこがシューターとしてダメかと思って打つことから始めて、その結果としてシュートを決めるつもりで臨んでいました。今のところは順調に来ています。試合の中で迷ってしまうシチュエーションもあるんですけど、打てるのにパスやドライブをするよりも打ち切ろうと僕自身が決めています。その意識は昨シーズンとは違います」
長年プレーする自分のチームでも毎年チームメートの入れ替わりがあり、オフェンスの形も変わるためにアジャストが必要となる。代表チームとなれば、その難易度はまた上がる。「切り替えは難しいです。三河だったら打ってるな、というシチュエーションが多いので迷っています」と金丸は率直な気持ちを語る。
試合があれば、シュートを決めて結果でアピールすることもできる。だが今回の合宿では、フリオ・ラマスの望むスタイルに合わせ、チームメートのやりたいプレーを探りつつ、自分の色も出していかなければならない。大変な作業ではあるが、長く離れていた代表チームにかかわることを金丸は歓迎している。そういう意味で冒頭で紹介した「余裕はあると思います」の言葉の意味は大きい。
金丸が持つ日本人屈指のシュート力は上手く代表チームと噛み合うのか。昨年のワールドカップでは八村塁や渡邊雄太のアタックが主体で、3ポイントシュートは打つものではなく打たれるものだった。いくら速い展開のバスケが機能しても、2点シュートしかないのでは勝利は見えてこない。世界を相手にすれば、良いボールムーブでチャンスを作っても、相手はプレッシャーを掛けてくる。そこを乗り越えてシュートを沈める金丸の力は、日本代表に必要なものだ。