秋田ノーザンハピネッツは『秋田らしいバスケと秋田らしい補強』で再びB1に挑む

2018/07/09
Bリーグ&国内
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秋田ノーザンハピネッツ

文=鈴木栄一 写真=B.LEAGUE

特定の個に頼らず全員バスケに磨きをかけてB1へ

昨シーズンのB1を『昇格組』として戦った島根スサノオマジック、西宮ストークスはシーズン序盤から苦戦が続き、レギュラーシーズンは島根がリーグワーストの11勝、西宮がワースト2位の12勝と低迷。両チームともに残留プレーオフで1回戦で敗れて降格が決定し、『B1の壁』を痛感する結果となってしまった。

B1に臨むにあたり、この両チームは対照的なチーム作りを行っている。島根はB2で戦ったチームを解体し、B1でプレーしていた選手を多く集める刷新路線。西宮はB2で戦っていた主力をほとんど変えずに挑む継続路線で臨んだが、ともに機能しなかった。

それを踏まえて、今シーズンの昇格組、秋田ノーザンハピネッツとライジング福岡に目を向けてみよう。秋田にとってはB1初年度に降格した雪辱を果たす1年となるが、6月下旬に『チームの顔』を長年務めてきたエースシューターの田口成浩が千葉ジェッツに移籍する激震に見舞われる。田口が抜けることが秋田にとって大きな戦力流失であることは間違いない。だが、秋田がここまで興味深いチーム編成を行っていることにも注目したい。

まず、田口の穴は確かに大きなものだが、昨シーズンの秋田はペップの愛称で知られるジョゼップ・クラロスヘッドコーチの下で大きなスタイルチェンジを断行している。振り返ればBリーグ1年目は安藤誓哉、田口の2人が1試合35分近く出場し、2人に大きく依存していた。

しかし、ペップの秋田は、前から激しいプレッシャーをかけ続けるハードなディフェンスからの攻守の素早い切り替えで得点を重ねていくスタイル。その要となる守備の強度を1試合通して保つためにも、頻繁な選手交代を実施した。1試合で10人から11名が10分以上プレーするようなローテーションシステムを採用している。それは結果的にではあるが、貢献度は高いとはいえ、これまでに比べると田口への依存度を下げることとなっていた。そのペップは続投しており、今シーズンはこの文字通り全員バスケにより磨きをかける構えだ。つまり、特定の個に頼るのではなく、ロスター全体の質を高めることが今オフの方針となっていた。

秋田ノーザンハピネッツ

自分たちのスタイルに合う『B2の実力者』を補強

その状況で秋田は興味深い補強をしている。注目したいのは、愛媛オレンジバイキングスから加入した俊野達彦、青森ワッツから加入した下山大地。B2でプレーしていた2人の選手だ。

1番、2番をともにこなせるコンボガードの俊野は昨シーズン、1試合平均12.4得点(B2の日本人選手ランキング2位)、5.2アシスト(全体4位)、4.5リバウンド(日本人2位)が示すB2随一のオールラウンダーで、bjリーグ時代から個で打開できるシュート力の持ち主として知られていた。

下山はB2屈指のシューターであり、3ポイントシュート成功数で一昨年はリーグ3位、昨シーズンはリーグ2位となっている。キャッチ&シュートでのクイックリリースも得意としている。

素早い攻守の切り替えから、相手の守備陣形が整備されないうちにアーリーオフェンスでどんどん仕掛ける秋田の目指すスタイルとの相性は2人とも相当に良いはず。昨シーズンの戦いを通じて、自分たちのスタイルに合う『B2の実力者』を見つけ出すというやり方で、秋田は自分たちの限られた予算の中で最適の補強をしたように思える。

他にもFイーグルス名古屋から加入した成田正弘は、特に平面でのプレッシャーディフェンスに期待が高まる若手ガード。そして唯一B1からの新加入となる野本建吾も川崎ブレイブサンダースでは出場機会に恵まれなかったが、ボールをプッシュできる200cmの大型フォワードで、日本人選手では貴重な個性を持ち、秋田のスタイルで輝くことができるタイプだ。

秋田ノーザンハピネッツ

田口以外のコアメンバーは残留、B1東地区に挑む

このように秋田は、昨シーズンの昇格組だった島根、西宮のどちらとも違うチーム編成を選択した。ともに1994年生まれでコンタクトの強さを武器とする中山拓哉と一瞬のキレ味が光る小野寺祥太の若手ガードコンビ、豪快なダンクを繰り出せる身体能力が魅力の白濱僚祐らと、田口以外のコアメンバーを維持しつつ、B2で実績のあるベテラン組を補強してのB1チャレンジとなる。田口という大きな柱が抜けても、チームの戦い方にブレはなく、全体の選手層としては底上げされた。

また、個人的には関東以外の大学出身、bjリーグでもファイナルズなど大舞台の経験がなく、Bリーグでもここ2年はB2と、いわゆるバスケ界のメインストリームとは違う道筋でキャリアを歩んできて今年29歳になる下山、30歳の俊野とベテランの域に入りつつある2人が、B1の舞台でどこまでやれるのかも注目だ。田口はステップアップのため慣れ親しんだ古巣を離れたが、それは青森出身の下山、愛媛出身の俊野にとっても同じである。

彼ら2人が活躍すれば、B2でしっかり結果を残すことでB1へのステップアップにつながる。そうなればB2を主戦場とする多くの選手のモチベーションアップにもなるはずだ。田口はいなくとも、このように新シーズン、秋田がリーグNo.1の激選区である東地区でどんな戦いを見せてくるのか様々な意味で見逃せない。