アデトクンボ、ドンチッチといった選手の動向は?
NBAファイナル第2戦の前に放送された『NBA TV』にNBAコミッショナーを務めるアダム・シルバーが出演。まだ開催方式とスケジュールが決まっていない新シーズンの見通しを語るとともに、来年に延期された東京オリンピックにも触れた。
2020-21シーズンの開幕は早くても来年1月以降となる見込み。10月下旬に開幕する通常のスケジュールから考えれば2カ月半遅れ、それに伴い6月上旬から中旬にかけてのシーズン終了は8月下旬となりそうだ。オリンピックの日程は来年の7月25日に予選ラウンドがスタートし、決勝は8月7日。開催時期そのものが重なっている。
オリンピック期間中にNBAのシーズンを中断する案について、シルバーは「可能性が低い」と断言する。「オリンピックの間だけ中断すればいいわけではなく、合宿も必要だしその後には休養も与えなくてはならない」
こうなると、NBAのスター選手が不在のアメリカ代表がオリンピックを戦う可能性がある。プレーオフに進出するチームの選手は代表に参加できない。レギュラーシーズンをやっている間から「プレーオフに進出できなかったらチームUSAに」と内々で各選手に打診することになるのだろうか。
アメリカ代表は昨年のワールドカップで不本意な成績に終わっており、そのリベンジの意味でも東京オリンピックでは金メダルという結果を出したい。プレーオフ進出チームから選手を選べないとしても、大学生選抜やGリーグ選抜、あるいはその混合チームよりも、NBA選手を集めた編成の方がずっと強力なのは間違いない。それと同時に、プレーオフに進出できない前提で代表参加を打診するのは選手のプライドを傷つけることになるし、誰に話を持ち掛けているのかが漏れればスキャンダルとなる。『チームUSA』でマネージングディレクターを務めるジェリー・コランジェロは頭を悩ませることになりそうだ。
そして、問題はアメリカ代表に限らない。ヤニス・アデトクンボやルカ・ドンチッチを始め、オリンピックでメダルを狙う強豪国のエースをNBA選手が担うケースは多い。ギリシャ代表のアデトクンボは「MVPと金メダルを交換しても構わない」と語るほどオリンピックを重視している。またスロベニア代表は最終予選でオリンピック出場権を勝ち取らなければいけない立場。ドンチッチは今シーズン開幕の時点で「最終予選にもオリンピック本大会にも出場したい」と息巻いていた。
これは日本代表にとっても大きな問題だ。ルーキーイヤーで及第点以上の活躍を見せた八村塁は、来シーズンもウィザーズの重要な戦力としてプレーすることになる。今シーズンは不振に終わったウィザーズだが、来シーズンはジョン・ウォールとブラッドリー・ビールの2枚看板が揃い、八村を含む伸び盛りの若手を融合させてプレーオフ進出を目指す。自国開催とはいえ八村がどれだけ代表活動に参加できるのか、現状では不透明だと言わざるを得ない。
アダム・シルバーは言う。「アメリカににはタレントが多いので、いずれにしても競争力のあるチームを編成できる。ただ、各国代表のスター選手が我々のリーグでプレーしており、彼らが参加できないとなれば代表チームにとって大きな影響がある。オリンピックにとっても我々にとっても非常事態だ。2つの競合する事情をかみ合わせる方法を見つけ出さなければ」
アダム・シルバーはともかくNBAの各チームにとっては、自分たちの重要な資産であるスター選手を、自分たちの管轄外となる代表チームに送り出し、ケガのリスクがあるオリンピックには参加させたくないのが本音だろう。だが、選手たち自身は程度に差こそあれ、オリンピックでのプレーを望んでいる。様々な意見をすり合わせるのは、そう簡単ではなさそうだ。