昨シーズンの大阪エヴェッサは、天日謙作ヘッドコーチが9年ぶりに復帰して『走るバスケ』に回帰。アイラ・ブラウンは加入1年目にしてこのスタイルにフィットし、帰化選手のメリットを生かして主に3番ポジションでプレー。リングに突き進む持ち味を存分に発揮するとともに、Bリーグになって4年目で初の勝率5割超えへとチームを導いた。新シーズンはスタイルこそ同じだが、さらに若く、大きく、走れるタレントを揃えて、さらなる躍進を狙う。アイラもまた、さらに自分を高めるとともにチームの躍進にこれまで以上に貢献するつもりだ。
「チームから求められる仕事は何でもやる」
──オフはアメリカにいたと思いますが、新型コロナウイルスの影響がある中でどう過ごしていましたか?
普段のオフシーズンはアリゾナ州やワシントン州、またメキシコに行ったりと旅行しながらトレーニングをしているのですが、今年はいつも使っている練習施設が閉まっていたりして、バスケットボールとかウエイトトレーニングをするのが難しいという現状がありました。そこは余った時間を有効活用できるよう意識を切り替えて、自分のサイドビジネスの新しいアイデアを考えたり、将来のことを考えたりしました。バスケットボール以外のことをじっくり考える時間は普段はなかなか持てないし、僕も38歳なので、今すぐじゃなくても5年以内ぐらいには引退するかもしれないから、その先のことについても考えてみました。
──サイドビジネスは何をするつもりですか。それとももう事業をやっているのですか?
今はアメリカでビデオゲームができるラウンジを経営します。将来的にはもっと規模を大きくして、ソニーと提携するぐらいになるのが夢なんです。今は普通のゲームがプレーできるようになっているのですが、VRのゲームも今後は導入したいですね。今後の計画としては不動産の事業もやろうと思っていて、テキサスか沖縄に不動産を所有したいと思っています。
ゲームラウンジは今はテキサスでやっているのですが、いずれは日本でもやってみたいです。日本でも良い物件が見つかれば是非やりたいですね。『バスケット・カウント』がビジネスパートナーになってもいいと思うなら、その話をしましょう(笑)。
──私はゲームをやる側なので、お客さんになりますよ(笑)。大阪エヴェッサに話を移しますが、昨シーズンに天日謙作ヘッドコーチが就任し、『走るバスケ』で結果を出しました。アイラ選手も加入1年目でしたがこのスタイルにフィットし、リムアタックの回数が多くてプレーを楽しんでいるように見えました。
実際、昨シーズンは3番ポジションが多く、すごく楽しくプレーできました。バスケットにアタックするとかプルアップジャンプシュートを打つとか、アグレッシブに攻めることが自分本来のバスケットのスタイルだと思っていて、そんなプレーがすごくできたので昨シーズンは楽しかったです。それでも今シーズンは3番ポジションよりも4番でプレーすることが増えるはずで、そういう意味では琉球とかSR渋谷でやっていたプレースタイルに戻るのではないかと考えています。ただ、チームから求められる仕事は何でもやるという気持ちで取り組んでいくつもりです。
──今オフの大阪は補強でも攻めました。チームに合流したら英語が話せる若手がいっぱい加入していて驚いたのでは?
そうですね。その前に話は聞いていて、スモールフォワードに多くの若手を加えると知った時は驚きました。3番ポジションでプレーするのを楽しんでいたのですが、そこは自分がコントロールできることではないし、チームが前に進むのに必要なことと受け入れてやっていきます。駒水大雅ジャック、角野亮伍、エリエット・ドンリー、土屋アリスター時生はみんな若くて才能がある選手です。新加入の彼らとコミュニケーションを取ることをすごく楽しんでいます。彼らは英語が話せるし、成長するためにハードワークしたいという思いが強い選手です。僕がアドバイスしたらすごく聞いてくれるし、その成長を助けてあげたいと思います。もちろん若い選手だし、プロとしての経験もこれからなので、成長するには時間が必要だとは思いますが、Bリーグでの彼らの将来はすごく明るいものになるはずです。
「個人よりもチーム、一番大事なのは西地区優勝」
──大阪が良いバスケットをするためのポイントはどこになりますか?
自分たちのアイデンティティを守って、やるべきことを一つひとつ実行していくことが一番大事だと考えています。今シーズンは新加入の選手も多いですし、ルーキーもたくさん入りました。それでもシステム自体は同じなので、これまでやってきたことを守りながら、組織としてプレーできるかどうか。特にルーキーのところは僕のようなベテランがどんどん声を掛けて、彼らがどんなプレーをすればいいのか迷わないように、上手くサポートしてあげたい。
あとはお互いのプレースタイルを理解して、お互いにどんなプレーをしたいのかをより深く知ること。もちろん、時間のかかることだけど、そこを大事に考えてしっかり深めていきたいと考えています。
あとは自分が4番でプレーすることも踏まえて、ポストでの得点を効率的に奪うことを考えたいです。ジョシュ・ハレルソンは素晴らしいポストスコアラーだけど、彼は同時に素晴らしいシューターでもあるので、彼にポストだけで仕事をさせたらもったいない。そこは僕がやるのも必要だし、それだけじゃなくコーチ陣や選手みんなで一番良いプレーは何か、チームとして向上するには何をすべきかを考えながら作り上げていきたいと思います。
──アイラ選手は3×3日本代表候補選手でもあります。オリンピックが1年延期になったことをどう受け止めていますか?
オリンピックの延期はショックだし、悲しい気持ちになりました。それでも来年にオリンピックが開催されるとしたら、自分にはプレーするチャンスがあるはずで、コンディションを整えてプレーする準備をしておきたいです。まずはみんなが健康であることが大事で、ワクチンの開発だとかか進んでオリンピックが万全の状態で開催されることを期待しています。
──特にベテラン選手にとっては、1年延期が大きなマイナスになるケースもあります。そういう意味で弱気にはなりませんか?
僕は年齢に関しては全く心配していません。アメリカでは、歳を取れば取るほど良くなるという意味で「ワインのように月日を重ねる」という言葉がありますが、自分はまさにその通りだと思っています。今でも年齢を重ねるごとに自分の能力をどんどん向上させられると考えているから、オリンピックが来年になったからといってネガティブな受け止め方は全くしていません。この先の1年もこれまで通り、試合の中で自分を磨いて、他のどの選手よりもハードワークをして追い越して、良い選手になりたいです。
──今シーズンの目標をどこに置きますか?
個人としての目標よりもチームの目標が大事だと思っているので、西地区で1位になることを目指したいです。個人の目標をあえて挙げるなら……1試合平均16得点か17得点は取りたいですね。でも一番大事なのは西地区優勝です。そこだけを目標にしていきます。
──最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
新型コロナウイルスの影響で収容人数の50%しかファンの皆さんがアリーナに入れない厳しい状況ではありますが、アリーナに来てくれる人たちにも、テレビやスマホで見ている人にも、ファンの皆さん全員に素晴らしいプレーをお届けしたいです。ハイライトに残るようなプレーをたくさん見せて、アリーナでも家でも、どこで見ていても全員を楽しませるようなプレーをしていきます。引き続き、大阪エヴェッサへのサポートをお願いします。皆さんもステイセーフで、健康に気を付けて過ごしてください。
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