文=丸山素行 写真=野口岳彦

ファジーカスと八村の加入には「今までにない安心感」

ニック・ファジーカスと八村塁が加わった新生日本代表は韓国と強化試合を行い、88-80で勝利を収めた。2人で総得点の半分以上となる45得点を挙げ、期待通りの活躍を見せたが、馬場雄大の貢献度の高さも見逃せない。

6得点2アシスト2スティールと数字は平凡だが、そんなスタッツ以上のインパクトを与えていたのは間違いない。代表戦であることを感じさせない落ち着いたプレーを随所に披露した馬場は「2人がいることで心の余裕が自然と出てきて、それによって普段のような、Bリーグで出せているようなプレーが落ち着いて出せました」と語る。

馬場が言う心の余裕とは、これまでの日本になかったインサイドでの得点力を指す。「ペイント内で点が取れるのが一番大きいかなと思います。今まではそこで苦労してましたし、今までにない安心感というのが自然とコートに流れてるのかなと思いました」

またその安心感は思わぬところで恩恵をもたらした。「劣勢だとフィジカル負けと感じてしまうこともあるかと思いますが、心に余裕がある分、そうは感じなかったです」

スタッツ上、馬場は1リバウンドとなっているが、多くの場面でディフェンスリバウンドに絡んだことには注目すべきだ。「身体能力という部分でプラスになれることがあるので思い切りやりました。相手に取られるケースも少なくやれた」と言うように、フィジカル負けせず、抜群の跳躍力を誇る馬場だからこそ、チームとしてマイボールにできたシーンは何度もあった。

八村のプレーに触発「そこの刺激が僕にとっては大きい」

昨日の試合は速攻からの得点が目立ち、日本の武器となることを予感させた。特に馬場はダンクを狙うなど、果敢にフィニッシュまで持っていく姿勢を見せた。「正直、塁が入ってきてからその思いが強くなった」と馬場はその胸中を明かす。

「周りにあまりそういうの(フィニッシュまで持っていく)をする選手がいないので、今まではこれでミスしたらどうしようという思いもありました。でも塁がそれを体現して、『行っていいんだ』っていう思いになりました。自分も行けると気持ちに任せてやってるところがありました」

Bリーグでは馬場のような日本人ダンカーは少ない。そもそもアタックできる選手も決して多くはないのが現状だ。だが今の代表には八村がいる。八村は昨日の試合でコースト・トゥ・コーストや豪快なプットバックダンクなどを披露した。馬場はそれらを八村からのメッセージだととらえている。

「それこそプレーが物語っていて、『やれよ、できるだろ?』みたいな感じで。そう勝手に感じたんです。あいつに影響されて、今やっていてそこの刺激が僕にとっては大きいです」

「後輩からそんなの、ダメですよね(笑)」と年下の八村のプレーに感化されたことに対し、馬場は苦笑いを浮かべた。だがそれは自分が代表の中心になるという覚悟があるからだ。「塁もそうですし、富樫(勇樹)もそうですけど、この年代が一番頑張らないといけないですし、自覚を持ってやる必要がある」と馬場は言う。

日本バスケ飛躍の時「今までの日本とは違う」

ベストメンバーではなかったが、苦渋を飲まされ続けてきた韓国に勝利したことは大きな一歩だ。だが馬場は今のチームに自信を持ち、目先の勝利に一喜一憂しない。そこには今までにない、勝者のメンタリティがある。

「塁も当たり前だと思ってますし、そこだと思うんですよね。変わっていく必要があるわけですし、今までの日本とは違うので。韓国に勝ったからって満足してる場合じゃないです。勝って当たり前、いかに内容を上げていくかというところなので」

フリオ・ラマスヘッドコーチは会見で「今日プレーした11人のうち7人はチームに固定する選手だと思っている」と発言した。バックコート陣の中で最長となる23分のプレータイムを得た馬場は主軸を担う立場となっている。

八村の存在が馬場をより高みへ連れていく。このプラスの連鎖が日本をもっともっと強くしてくれそうだ。