キングスを率いる佐々宜央『下克上戦記』vol.9~負けた悔しさをどう生かすのか

2018/06/14
Bリーグ&国内
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文=鈴木栄一 写真=鈴木栄一、B.LEAGUE

オフの大型補強から大きな注目を集めてきた琉球ゴールデンキングスの2017-18シーズンは、チャンピオンシップのセミファイナルで千葉ジェッツに連敗を喫し、ファイナルまであと一歩の所で終わった。ヘッドコーチとして初めて体験するシーズンは佐々宜央にとってどんな1年だったのか、シーズンが終了したこの時点で振り返ってもらった。

「惜しいレベルにはまだ行っていない」

──シーズンお疲れ様でした。まずはチャンピオンシップで最後の試合となった千葉との差はどこにあったと感じているか教えてください。

この2点差、3点差のゲームの時に最後、相手がシュートを決めきるのに対し、ウチはシュートで終えられないケースが出てきてしまっているのは、もう天と地くらいにやっぱり力の差がある。惜しいレベルにはまだ行っていないのかなと僕は思っています。

千葉のようなチームと競るまでになるのも大変なことですが、ここから勝つためには安易に「惜しかったね」、「お疲れ様でした」という終わり方にしてほしくない。みんなそれぞれバスケット人生があるわけで、自分で乗り切ってもう一つ上のレベルに行かなければいけない。ビッグプレーヤーになるには細かいところがどれだけ大事なのか。シュートを最後に決めるだけでなく、最後に自分たちのやるべきプレーをやりきれるのか。そこに違いが出たと感じました。

──では、この一年を振り返るにあたり、手応えがあった部分について教えてください。

チーム全体としてディフェンスをやっていこう。ルーズボールも含めてフィジカルに戦おうという意識をまずは重視しました。そこに関して手応えはありました。試合全体において流れの中でのディフェンスは良くなっています。ここで止めなきゃいけないっていう勝負ところにおいて、1対1で最後守れるかっていうところにはまだ弱さがありますが、総合的にディフェンスのところでは満足しています。

──その一方で、課題について特にどのような点が挙げられますか。

オフェンスに関してはディフェンスよりも繊細なところがあり、しっかり積み上げられませんでした。そこは選手に申し訳ない気持ちと、もうちょっとできたはずだと自分でも思っています。特にパスについてはリーグトップのチームと差があります。ビッグマンも含めて、僕のバスケットはパスを繋げていくスタイルです。個人技で打開しながら、最後キックアウトのパスを出すというところで、やっぱりもっとレベルを上げていかないといけない。肝心なところでパスミス、考えられないパスミスが起きてしまう。そういうプレーをさせてしまっている自分がいたので、そこは反省しないといけないです。

「ルーキーコーチとして最高の経験をさせてもらった」

──最初の黒星となった開幕戦の第4クォーターで4点。そしてシーズン最後の黒星となったこの試合、第4クォーターは8点で終わりました。得点力不足の解消には何が必要となのか、今だから感じるところはありますか。

組み立てについては、なんとかしなければいけないです。あとは、ディフェンスに引き続き集中していく中でも、オフェンスに対してももうすこし重きを置かないといけない。あとは個々の生かし方で、ゴー・トゥー・ガイの存在とかいろいろと考えなければいけません。

──リーグ随一の熱狂的ファンがいる琉球で指揮を執った感想はいかがでしたか?

沖縄のファンの方々に、ホームゲームですごい応援をしてもらいました。僕は沖縄出身ではない内地の人間ですが、必死に何かを届けたいと思いながらやってきたつもりです。支えてくれた人たちのために戦えた一年間というのは誇りに思います。いろいろなチームがある中、今の沖縄の応援が当たり前だと思ったら勘違いで、ファンの方たちには本当に感謝しています。ルーキーコーチとしてこんな経験をさせてもらえたのは本当に最高でした。

──人気チームの指揮官だからこそのプレッシャーもあったと思います。

実は最初、食事が細くなってしまった時期もあったんです。それで開幕節で一回勝った時に、食べられる時に食べておいた方がいいと思ったら、そこから意外と食いまくって太ってしまいました(笑)。本当に苦しかったですけど、勝負の世界は何が起こるか予測できないので、開幕前には「入れ替え戦に行ったらどうしようか」などと考えていた中では、新米コーチとしたらどん底に落ちた1シーズンではなかったのかなと思います。

一年間、試合に臨むにあたって楽しいと思いたかったところはありますが、正直プレッシャーをいつも感じながらの戦いでした。客観的に見ると、今の琉球ならベスト4で及第点という成績かもしれません。でも奇跡を起こしてくれると期待してくれる人もいて、自分はそういう期待に応えたかった。緊張、プレッシャーを感じながらのチャンピオンシップで、自分の緊張が少し選手に乗り移ってしまったところはあります。

「長所を出し切れずにチームを勝たせられなかった」

──浮き沈みがあった中でもターニングポイントとなった試合はありますか。

選びきれないですね。ただ、一番キツかったのは開幕戦の前に参加したマカオでの国際大会です。そこでチームを最悪な状況に持っていってしまいました。それでも開幕節でサンロッカーズ渋谷に負けての2戦目で初勝利を挙げたのは自分の中で大きかったです。あそこで連敗だったら、全く変わっていたはずです。ターニングポイントを強いて挙げるなら、この初勝利の試合になります。

──様々な手応えや反省がある中、ヘッドコーチ1年目を終えてどんな総括となるのか最後に教えてください。

自分に足りないところが何なのかよく分かったシーズンでした。アシスタントコーチともよく話しましたが、試合終盤での采配があまり良くないと自分でも思います。セルティックスのブラッド・スティーブンスが終盤の采配で神と言われています。自分がスティーブンスのところまで行けるとは思わないですけど、接戦での終盤となった時にどういう選手の組み合わせで、どういうプレーをさせるのか。明確なゴー・トゥー・ガイがいないとは言え、チームの長所を出し切れずにチームを勝たせてあげられなかったという思いがシーズン中にありました。そういう状況での対応力について、成長していかなければいけないと思います。

今は次に行きたい、休む暇がないという気持ちです。コーチとしても人としても一歩一歩成長するため、この負けた悔しさをどう生かすのか考えていきたいです。