快進撃を続けるヒート、パット・ライリー球団社長の哲学は「今にしか興味がない。勝つためにリスクを取る」

快進撃を続けるヒート、パット・ライリー球団社長の哲学は「今にしか興味がない。勝つためにリスクを取る」

2020/09/12
ヒート

上位指名権を得るため戦略的に負けるタンキングに「NO!」

「良い計画を強引にでもすぐ実行するほうが、完璧な計画をいずれ実行するよりずっと良い」

これはNBAのベテラン幹部の間で有名なジョージ・パットン将軍の格言だ。これを忠実に遂行しているのが、ヒートのパット・ライリー球団社長だ。この四半世紀、ライリーは長期的な育成プランを信用せず、直近のシーズンで結果を出すことを考えてチームを作ってきた。それが今シーズンは最高の形でハマり、ヒートはわずか1年でカンファレンスファイナルへ進出するチームとなった。

昨シーズンは39勝43敗とパッとしなかったが、ヒートにとって珍しいことではなかった。レブロン・ジェームズが退団したビッグ3解体以降、徹底的に批判されるほど弱いわけでもなく、上位が目指せるわけでもない平凡なチームであり続けた。オフのたびに意欲的なチーム作りを目指すこと自体は良いのだが、それでプレーオフ圏内に滑り込むか弾かれるかの順位になっては、今のNBAのレギュレーションでは不利となる。

NBAの『育成』においては、タンキング(わざと成績を落とすこと)してドラフト上位指名権を得て、有望な選手を指名したりトレードの駒に使うことで数年後のための土台を整えるやり方がまかり通っている。だが、ライリーは数年間の低迷をあえて受け入れたりはしない。これまでも「私は辛抱強くない。すぐに優勝を狙えるチームを作りたい」と語ってきた。

ヒートも選手の育成やスカウティングを疎かにしているわけではない。近年の成功はジョシュ・リチャードソンで、2015年に2巡目40位で指名したリチャードソンの市場価値が上がったからこそ、昨夏のトレードでジミー・バトラーを獲得することができた。

今の躍進を支えているバム・アデバヨは2017年の1巡目14位指名。タイラー・ヒーローは2019年の1巡目13位指名。ダンカン・ロビンソンとケンドリック・ナンに至っては2018年のドラフトで指名されず、ロビンソンは2ウェイプレーヤーから、ナンはGリーグから這い上がってきた。彼らはザイオン・ウイリアムソンやジャ・モラント、ルカ・ドンチッチやベン・シモンズといったNBAのスタータレントではないが、彼らよりも長くシーズンを続け、ヒートの躍進を支える重要な戦力となっている。

マイアミという華やかな街をホームタウンとしながら、ヒートにはハードワークの文化が根付いている。ドラフトのトップ指名を受けられなくても、このリーグに入って来る選手は誰もが才能の塊だ。ヒートはそれを日々の練習で磨き、試合で自信を付けさせる。そこにジミー・バトラーというピースが合わさり、ヒートは1年で強豪チームへと駆け上がった。

『ESPN』は「自分のチームが(タンキングで)ただ負けるのを眺めている人たちは、別の方法でヒートが勝っているのを見て、自分たちのやり方の愚かさに気付いただろう」というNBAチームのフロントのコメントを紹介している。

ヒートの勢いがカンファレンスファイナルも続くのかどうか、それは試合を戦ってみなければ分からない。来シーズン以降もその躍進が続くのか。これも答えを知るには推移を見守るしかない。だが、ライリーがタンキング以外にも勝ち方があることを示したのは間違いない。「私は今にしか興味がない。成功するかどうかは分からないが、我々は勝つためにリスクを取る」と語るライリーのやり方は、決して間違ってはいない。

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