文=丸山素行
文武両道、一人の人間として成長する環境へ飛び込む
中学生にして日本代表候補に名を連ねる田中は、今年3月に中学を卒業。注目の進路はアメリカのプロアスリート養成機関、IMGアカデミーだった。6月6日、その田中がユースに所属した横浜ビー・コルセアーズ、IMGアカデミーと合同で会見を行った。
40年前に設立されたIMGアカデミーは世界最高峰のスポーツアカデミーとして知られ、東京ドーム約50個分の広大な敷地を持ち、プロトレーニングも可能な質の高いトレーニング環境が整っている。現在は約1200人の生徒が在籍し、田中のような海外出身の生徒と、地元アメリカ出身の生徒の割合はほぼ半分だという。
IMGアカデミーは簡単に言えば小中高一貫の私立校となり、スポーツだけでなく勉強との両立が求められる。田中も以前から「勉強が心配」と漏らしていたが、文武両道を求められる環境がIMGスクールの長所でもある。IMGアカデミーの日本地区代表、田丸尚稔は語る。「トップアスリートになる条件はスポーツがうまくなるだけではなく、一人の人間として成長しなくてはいけない。アスリートとして、人として成長するような環境を提供することがIMGアカデミーの使命です」
田中は「信じられなかったですけど、アメリカのトップの高校に行けると決まったので、そこで精いっぱい頑張って家族の代表、日本の代表としてしっかり勉強とバスケをして、人間性を良くして日本のバスケを強くしていきたい」と意気込みを語った。
そんな田中の人間性を高く評価するのが、IMGアカデミー副代表のクリス・チャチオだ。「彼のバスケットボールの才能が素晴らしいのは皆さんご存知の通りですが、しばらくすれば、彼の素晴らしい人間性にすぐに気づかれると思います。彼の人間性に感銘を受けました。我々としても彼をサポートしていくことを楽しみにしています。トッププレーヤーとしてNBAで戦うことが彼の一つの夢だと思いますが、IMGアカデミーとしては彼には世界で戦える、社会で戦えるリーダーになってもらいたい、そんな思いで受け入れたいと思っています」
「夢に向けて精一杯頑張ったら絶対叶うから」
会見の途中にはサプライズとして、ナッシュからIMGのユニフォームとキャップが送られた。背番号は『2』を選択。田中が憧れるNBA選手、カイリー・アービングがキャバリアーズ時代につけていた番号だ。
田中は高ぶる気持ちを抑えきれず笑顔を見せた。そして、あらためてIMG進学の理由を語り、こう締めくくった。「うれしいという言葉しか出てこないですし、本当に感謝してます。バスケを愛してやってます。夢を持った子供たちに、周りにどんなことを言われても、『夢に向けて精一杯頑張ったら絶対叶うから』というメッセージを送りたい。そこでIMGが一番良いのかなと思って決めたので、言葉だけにならず自分もしっかりバスケと勉強を頑張っていきたいです」
IMGアカデミーの入学式は8月28日。田中の挑戦のカウントダウンはすでに始まっている。