優勝へのターニングポイントはシーホース三河戦
アルバルク東京はBリーグ2代目王者となり、長いシーズンを終えた。その後も優勝報告会など活動が続き、オフの気分はまだ味わえていないようだが、渋谷区長を表敬訪問した菊地祥平は「うれしい忙しさ」と多忙な日々を表現した。「シーズンが終わってからも連日、何かしらチーム行事が入っています。他のチームがオフに入っている中、いろいろお誘いも来るのですが、うれしい用事で断らなければいけないので申し訳ない感じですね」
キャリア11年目にして自身初の優勝だけに、その喜びもひとしおだ。「ファイナルは今回を含めて3回出場したんですけど、優勝は初めてです。『やっとだな』って」
優勝に手が届く戦力が揃っていても、それだけで優勝できるほど単純な世界ではない。優勝するには何か決定的な強みがあるもので、A東京にとってはシーホース三河とのセミファイナルを勝ち切ったことが大きかったと菊地は言う。
「アルバルクに来た1年目も多分優勝すると思ったんですけど、あと一歩のところで負けてしまいました。その時に優勝するには何かが足りないんだって実感したんですけど、今年はセミファイナルで三河さんに競り勝って、その時から優勝すると思っていました。2試合とも延長で、そこで競り勝ったチーム力は、相手が琉球さんでも、千葉さんでも勝てると確信しました」
数字では表せない貢献「求められなくなったら価値はない」
菊地は今シーズン、出場57試合のうち54試合で先発を務めた。キャリア11年を誇るベテランの菊地だが、出場試合数も先発も過去最多の数字だ。その一方で平均4.4得点はキャリアワースト。それでも先発を任されるのは、数字では表せない貢献があるからだ。
「少しの役割であっても、いることでチームに貢献しないといけない。チームの価値観として選手への期待の大きい小さいはありますが、そこを期待されてスタートで起用してもらいました。プレータイムが少ないとか、数字に残る残らないという部分ではなくて、たとえ数字が一切なくても期待に応えて出していただけるだけで僕は大きいと思います。求められなくなったら、それこそチームにいる価値はないです」
A東京は各選手が自分の役割を理解し、徹底的にそれを遂行することでBリーグを制した。菊地はロールプレーヤーとしての期待に応え続けることで、自身の価値を高めた。そのことを問うと、菊地の表情が緩んだ。
「Bリーグになってメディアさんに取り上げていただき、バスケを知らない人も見にきてもらえるようになりました。バスケの醍醐味って得点とか派手なダンクですし、もちろんそこに注目していいと思います。ウチのチームはそれができる選手がたくさんいますし、それをしなきゃいけないチームだと思っているので。でも玄人目線で見ていただいて、少しでも褒めていただけるのはありがたいです。僕のファンは男性や、年配の方が多いですが、そこでもそういった声をかけていただいて『間違ってなかったんだな』と思うとうれしいですね」
ルカの来シーズン予告「たくさん死んでもらうから」
シーズンは終わったが、まだ完全にオフモードになっていない菊地だが、ファイナル以降はバスケをやっていないそうだ。「今までにないほどバスケットに関わって、バスケットボールに触って、体育館に拘束されてきたので、このギャップを味わいたいというか、一切バスケに関わらない時間を増やしたいという思いが強いですね」と菊地は素直な思いを口にした。
今シーズンのA東京はルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチの下、「試合のほうが楽」と選手が漏らすほどの厳しい練習を積んできた。濃密なシーズンを終えたばかりなだけに、開放感を味わいたいのは自然な流れ。さらに言えば、来シーズンもそれぐらいタフな練習が待っていることをルカコーチから予告されたという。
「ルカからは『来シーズンもたくさん死んでもらうから』と言われ、その分もオフ期間はしっかり休んでほしいと言われました。自分でもある程度の準備はしますが、それを超越するような練習量が待っているので、逆に完全に休まないと(笑)」
短いオフが終われば、再び選手が嘆くほどの練習量が待っている。それでもそれがチームの力になることを理解している。菊地は言う。「冗談半分ではなく、ルカの場合は本気で言っているので、僕たちはついていくだけです。優勝という結果が出ているので、それについていけば来シーズンも必ず良い結果が出せると、チームとしても確信があります」
来シーズン、Bリーグ初の連覇を目指すことになるA東京。そのためには老獪なテクニックで自分の役割を完遂する菊地の存在が不可欠だ。まずは蓄積した身体の疲れを癒し、メンタル面もリフレッシュして来シーズンを迎えてほしい。