『ミスターキングス』への道をひた走る岸本隆一「これからの財産になるシーズン」

2018/05/21
Bリーグ&国内
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文・写真=鈴木栄一

「持っているものを信じきれなかったことが情けない」

5月20日、琉球ゴールデンキングスはチャンピオンシップのセミファイナル第2戦で千葉ジェッツに64-72で敗退。第1戦に続いての連敗で、今シーズンが終了した。

第2戦に関しては試合を通して拮抗した展開が続き、スコア以上の惜敗だったと評価できるかもしれない。だが、キャプテンであり、琉球の持ち味である3ポイントシュート攻勢の中心だった岸本隆一は、素直に千葉との力の差を認める。「自分たちのミスで流れを渡してしまった。僕らは開幕前に大きくメンバーが変わって1シーズン戦っただけで、連携面での差がありました。ルーズボールなどの反応についてもまだまだ足りない。現時点で、向こうの方が力は上でした」

また、岸本個人としては持ち味である3ポイントラインから数メートル下がった位置からのロング3ポイントシュートや、ゴール下への積極的なアタックなど思い切りの良いプレーが持ち味。しかし、この試合ではそれを発揮できなかったと悔いている。

「今日のゲームはいつもと違っていて、どこかで迷いながらプレーしてしまいました。それにはすごく悔いが残ります。今シーズン、そして今までのバスケ人生で培ってきた自分の持っているものを信じきれなかったことが、すごく情けないです。ただ、この経験は前に進むためには必要だった。今、すぐには切り替えられないですけど、もっと自分の気持ちを整理して来シーズンにつなげていきたいです」

「これからそれぞれの財産になるようなシーズン」

言うまでもなく頂点に到達できなかったことは、琉球にとって無完全燃焼に終わったシーズンであったことを意味する。しかし、リーグ随一と評された大型補強を経て、勝率5割以下に終わった昨シーズンから42勝18敗の勝率7割と大きな成績アップを果たした。

「いろいろメンバーも変わった中で目標には届かなかったですが、昨シーズンは負けたクォーターファイナルを突破できました。皆で同じ方向を向いてともに過ごした時間はすごく有意義なもので、間違いなくこれからそれぞれの財産になるようなシーズンだったと思います。そこに関して言えばすごく充実して楽しかったシーズンでした」

岸本個人にとっても、一つの転機となるような貴重な1年間だった。琉球のこれまでの変遷を見れば、地域密着を重視する方針からこれまで日本人選手は沖縄県出身の『うちなーんちゅ』が中心となっていた。しかし、Bリーグで勝つための大型補強を経た今シーズンのチームにおいて、うちなーんちゅで継続的に出場機会を得ているのは岸本のみ。琉球というチームにおいて、地元出身選手がコートに立つことの重さ、意義を考えればこれは大きな責任となる。

また大型補強は、これまで長年チームメートとして強い絆でつながっていた選手が去ったことも意味する。プロの世界では致し方ないとはいえ、「ずっとファミリーのように戦ってきたメンバーがいなくなることに寂しい思いもありました」(岸本)と感じるのは自然な感情だ。

こういった様々な環境の変化もあり、チームが躍進する一方で岸本は大きな重圧と向き合いながらのシーズンであった。「フランチャイズプレーヤーで、キャプテンというところもあって自分が一番崩れてはいけないと今シーズンずっと思っていました。プレッシャーは毎回感じるものですし、むしろプレッシャーしかなかったです」

しかし、だからこそ得られたものも大きかった。「苦労した分、言い方は悪いかもしれないですが、見返りがすごくあったシーズンでした。自分のバスケ人生において、あとで振り返った時に大きな分岐点の一つとして、すぐに浮かぶシーズンになった。すごく充実していたと思います」

「自分の可能性について期待が持てる終盤戦でした」

岸本にとって確固たる成長への手応えを得られた今シーズン。それは相手チームの反応が端的に示していた。彼の持ち味であるロング3ポイントシュートへの警戒はシーズンが進むにつれて大きく強まっていき、「こんなところまでスリーを止めにくるんだというのは、終盤にすごく感じていました」と語る。ただ、それは相手に脅威を与えられる選手として一つステップアップしたことの証明でもある。「少しずつボールを持たせてはいけないと相手に思われる選手になってきたのかなと、自分の可能性について期待が持てる終盤戦でした」

来シーズンに向けては、この厳しくなった相手のマークをより巧みに利用する賢さが必要となってくる。「(相手の厳しいマークを)もっと利用しないといけない。そのためには戦術理解度をもっと上げていかないと、相手に抑えられてしまいます。どうすべきだったのか振り返って、来シーズンはもっと良い選手になっていきたいです」

今、日本各地に多くのプロバスケットボールチームが存在している。だが、満員の会場となる人気チームにおいて、名実ともに看板選手と評価される実績を残しファンに愛されている地元出身選手はごく僅か。岸本は、その限られた選手の代表的な存在である。

「自分が勝負を決めてやるくらいの強い気持ちを本当に心から持てるようになりたい。そのためには、もっとハードワークをしていかなければと、思っています」

大きな手応えと後悔を得た今シーズンを終え、岸本は琉球のフランチャイズビルダーとしてより進化を果たすため歩みを止めるつもりはない。