文・写真=鈴木栄一

バーレルを抑えた上で、勝負どころで貴重な得点

5月14日、琉球ゴールデンキングスは名古屋ダイヤモンドドルフィンズとのチャンピオンシップ・クォーターファイナルにおいて、第2戦、第3戦ともに終盤までもつれる死闘を制し、なんとかセミファイナル進出を決めた。

この2試合、ゴール下の守護神として獅子奮迅の働きを見せ、チームの危機を救ったのがヒルトン・アームストロングだ。インサイドのエース格であるハッサン・マーティンが精彩を欠く中、アームストロングは第2戦で約30分出場、6得点14リバウンド2ブロックを記録。得点は多くないが、第4クォーター序盤に連続ダンクを決めてチームに勢いを与え、残り47秒にオフェンスリバウンドからのセカンドチャンスでリードを4点に広げるシュートと、ここ一番での価値のあるシュートばかりだった。

そんなベテランビッグマンの活躍を、佐々宜央ヘッドコーチは「ヒルトンはこの2試合すごかったです。点数は少ないですが、あれだけ疲れている中でもやってくれました。多分、彼がバーレルとマッチアップしている時はほとんどやられていないです。リバウンドで頑張って、オフェンスも耐えてくれました」と讃える。

指揮官も言及したジャスティン・バーレル封じについて、アームストロングは次のことを重視していた。「リングから遠ざけて守ること。身体能力に加えてポストアップの能力も高い選手なので、いかにリングから遠いところでボールを持たせるかが大事だった。もちろん何回かはやられてしまったけど、チームとして守ることができた」

「ここで自分が持つものを100%出し切れるように」

セミファイナル進出については「すごくうれしいし、幸せ。日本でセミファイナルに行くのは自分にとって初めてなので楽しみだ」と、千葉ジェッツに在籍していた昨シーズンは果たせなかったクォーターファイナルでの勝利に笑顔を見せた。

負けたらシーズン終了となるこの日、アームストロングはいつも以上に闘志を前面に押し出していた。ただ、そこに審判の判定に苛立ち冷静さを失ってしまった昨シーズンのような脆さは全くない。あくまで冷静さを備えつつ、熱く激しくプレーした。第3戦を控えたインターバルで「ロッカールームで僕以外にすごくしゃべっていたのはヒルトンでした。リーダーだと思いました」と佐々ヘッドコーチが明かす統率力も発揮した。

このアームストロングの『絶対に負けたくない思い』は、チームであり沖縄という土地への深い愛情に拠るものだ。「ファンは自分のハートであり、身体の一部分と感じているんだ。ファンの皆さんの後押しにチームは元気づけられており、本当に感謝しているよ」

「今日はとにかく『まだアメリカに帰りたくない』という一心だった。キングスという球団、チームメート、ファンの皆さん、そして沖縄という土地のすべてが気に入っている。とにかくアメリカに帰る前に、ここで自分が持つものを100%出し切れるようにという気持ちだった」

必勝を期した特注シューズ「孫悟空のような気合で」

ちなみにこのチャンピオンシップから、アームストロングは『ドラゴンボール』の主人公がデザインされた特注のシューズを履いている。ドラゴンボールのキャラクターが描かれたシューズはカール・アンソニー・タウンズなどNBA選手もお気に入りとして使っているものだ。

「インスタグラムで多くのNBA選手のシューズをカスタムしていた人物を発見したんだ。その人物に連絡して、こういうデザインでとお願いして作ってもらた。素晴らしいシューズが来たよ」

新しいシューズ、お気に入りのデザインのシューズを履くことで気分が上がり、それがプレーにも良い形で反映されるのは、読者の皆さんにも経験があるはず。プロキャリアの長いアームストロングも、それは変わらない。「チャンピオンシップ用に取っておいたんだ。僕はドラゴンボールが大好きで、孫悟空のような気合でチャンピオンシップに臨めば良いチャンスが来るという気持ちだった。僕にとって大きな意味を持っているシューズなんだ」

セミファイナルで当たる千葉ジェッツとはレギュラーシーズン最終節に対戦するも、琉球は連敗。6日の試合は控えメンバーが多く出るコンディション調整の側面が大きかったが、ガチンコ勝負だった5日の試合でも琉球は76-80で競り負けている。その試合で痛手となったのはアームストロングがファウルアウトし、わずか約10分半の出場となったことだった。

ともにアメリカの名門コネティカット大出身の両者だが、ギャビン・エドワーズのインサイドアタックをアームストロングがどれだけ抑えられるのか。ゴール下の鉾盾対決が明暗を分ける一つの重要な鍵となることは間違いない。