文・写真=鈴木栄一

「どんな試合にも勝ちたい」と平常心で初戦へ

いよいよ今週末にスタートする2017-18シーズンのチャンピオンシップ。川崎ブレイブサンダースはワイルドカード上位で参戦するが、第7シードとは思えないくらい評価は高い。その大きな要因は『リーグ最強ビッグマン』であるニック・ファジーカスを擁することだ。4月下旬に日本への帰化申請が通り、帰化選手として起用できることで、その存在はより大きくなっている。

来たるべきシーズンクライマックスに向け、否が応にも緊張が高まるが、ファジーカスはいつも通りのメンタルで迎えることを意識している。「チャンピオンシップになったらからといって、試合に向けてのモチベーションに大きな変化はない。どんな試合にも勝ちたいと思っているし、あまり自分たちにプレッシャーをかけすぎるのも良くないからね」

帰化選手となった影響として、ファジーカスのプレータイムや役割に大きな変化はない。それでも、彼をオン・ザ・コート「1」の時間帯でも制限なく起用できることで、ジョシュ・デービス、ルー・アマンドソンの両外国籍選手のプレー可能時間が大きく増える。彼らはともにゴール下へのアタックを得意としており、ファジーカスが彼らと一緒にオフェンスをする時はアウトサイドにポジションを取る場面が増えてきている印象を受ける。

この点についてファジーカスはこう語る。「ジョシュ、ルーはインサイドでのプレーを強みとしている。一方で、自分はどこでプレーしても問題ないし、他の選手のプレーを楽にさせていきたい。ジョシュやルーが、より力を発揮できる助けとなるならアウトサイドにいる」

実際ファジーカスは3ポイントシュートを含めた非凡な外角シュートを持っており、外に開いても相手にとって脅威なのは変わりない。「ビッグマンである僕が3ポイントシュートやアウトサイドシュートを決めることで、相手のディフェンスにストレスを与えることができる。それに元々、大学時代やNBAではストレッチ4(外角シュートを多く放つ4番ポジション)に近い役割だった。インサイド、アウトサイドのどちらでも与えられた役割をこなすだけだ」

千葉への対策は「走れる回数を減らすこと」

クォーターファイナルの相手となる千葉ジェッツとは同じ東地区で何度も戦い、5月2日にも対戦したばかりと互いのスタイルは熟知している。その中で、ファジーカスは千葉の最大の武器であるトランディションオフェンスを防ぐための鍵は、どれだけ自分たちのハーフコートオフェンスを遂行できるかだと考えている。

「彼らはディフェンスリバウンドをしっかり取れば走れて、トランジションオフェンスをより多く出せることを分かっている。それが彼らのディフェンスのモチベーションになる。だからこそ、こちらがどれだけ効果的なオフェンスができるかがカギになる。こちらのシュートが多く決まれば、その分、走れる回数が減ってフラストレーションが溜まりやすくなる。ハーフコートオフェンスでターンオーバーをせず、自分たちの形でシュートを打てれば、守備でもすぐに戻れて相手のトランディションにも対応できる。スローダウンさせることができれば、彼らはアドバンテージを失うことになる」

「ただ、それは簡単なことではないけどね」と語るように、分かっていても対策が難しいのが千葉の高速バスケットであることも重々承知している。

「自分たちに対する自信は昨シーズンと変わらない」

2012-13シーズンにファジーカスが川崎に加入して以降、チームは1年置きにリーグ優勝をしている。昨シーズンは準優勝に終わり、「以前にマサ(通訳の大島頼昌)とサンフランシスコ・ジャイアンツみたいだと話したことがあるよ」と、ファジーカスもこの流れは理解している。ちなみにメジャーリーグのジャイアンツは2010年、12年、14年と王者になっている。

「シード順位を見ればアンダードックと見られるかもしれないけど、自分たちに対する自信は昨シーズンと変わらない。シーズン序盤は苦戦した部分もあったが、今はメンバーが揃って勢いを持って戦える」と、チームの現状に手応えを感じているファジーカスは、文字通り準備万端でチャンピオンシップを迎える。

さらに今回のチャンピオンシップは川崎にとって東芝を母体としたチームでのラストダンスとなる。「僕たちには東芝のチームとしてのいろいろな思い出がある」とファジーカスも、大きな節目であることは理解している。

ただ、それと同時に『日本人』ニック・ファジーカスとしての第1章であることも強く意識するところだ。すでに来シーズンのチーム残留が発表されているなど川崎愛を貫くファジーカスにとっては、名実ともに川崎のホームタウンプレーヤーとしての最初の栄冠をつかむ舞台。今回のチャンピオンシップ、モチベーションには事欠かない。

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