文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

攻守にわたる活躍で飛車角落ちの京都を牽引

京都ハンナリーズは昨日のアルバルク東京との第1戦に惜敗した。ジョシュア・スミス、伊藤達哉という主力2人を欠いたことで苦戦が予想されたが、ふたを開けてみればあと一歩のところで勝利を手にする接戦を演じた。

その立役者となったのはマーカス・ダブだ。15得点15リバウンドのダブル・ダブルに加え、5アシスト2ブロックと攻守で京都を牽引した。直近2試合を欠場し3試合ぶりの実戦となったが、「いつも通りエナジーを出して戦うことにウエイトを置いていたし、ディフェンスファーストでプレーした」と平常心を持って臨んだという。

「ディフェンスが好き」と昨シーズンから語っているように、ダブのディフェンス力には定評がある。昨日の試合で言えば、マッチアップしたアレックス・カークを7得点に封じた。1試合平均16.3得点のカークが2桁得点に到達しなかったのは、昨日の試合で5度目だ。結果的に敗れはしたが、終盤まで京都のペースで試合が推移したのは、ダブがカークを封じたことによるものが大きかった。

それでもダブはチームメートのおかげだと謙遜する。「チームディフェンスの賜物です。やっぱりピック&ロールにしても、チームメイトがしっかりヘルプしてくれて対応してくれたことが一番大きな要因なので感謝したい」

求められる『エクストラ』の活躍を体現

ディフェンスでの貢献もさることながら、ゲームハイのジュリアン・マブンガに次ぐ15得点を挙げたオフェンスでの貢献も大きかった。特に守備に定評のあるカークやジャワッド・ウィリアムズとのマッチアップを制してインサイドで得点を量産し、スミス不在の穴を埋めた。

インサイドの軸であるスミスの出場停止は限りなく大きな痛手なはずだが、京都にはそれを感じさせないパフォーマンスを見せた。その裏にはキャプテンの内海慎吾の言葉があったという。「リーダーの慎吾がチームに対し『ムーブオン(前に進もう)俺達には試合が待っている』と話してくれた。チーム一丸となって戦い、各選手がチームのためにいつもより一つ多く、『エクストラ』の活躍、バスケットをしようと話をしたんだ」

ダブはこう続ける。「もちろんジョシュがいなかったから、できるだけポストアップをしようとした。インサイドでボールをもらってそれで攻める、もしくはパスアウトするという意識だった」。ダブが見せたオフェンスでの多大な貢献は、内海が言う『エクストラ』を体現した結果だった。

『エクストラ』の力を発揮することで逆境に立ち向かう

1試合を通じて速攻での得点が0という数字が示すように、京都は早打ちせず24秒になろうがスローペースで試合をコントロールしていた。約35分間京都のペースで試合が進んでいたが、ターンオーバーから失点するなど、最後の5分間はA東京の強度の高いディフェンスの前にペースを乱された。

「もっとスローダウンしなくてはいけなかった」とダブは終盤のオフェンスを悔いた。「テンポが上がったことでミスも出てしまい、守られて良いシュートが打てなかった。良いリバウンドを取ってファストブレイクを出せれば良かったけど、それが出せなかった時は攻め急ぐのではなく、スローダウンしてしっかりとオフェンスを組み立てて良いシュートを打つべきでした」

昨日の試合で主に得点でチームを牽引したマブンガだが、苦痛に顔を歪めるシーンが何度か見られた。浜口炎ヘッドコーチは「マブンガは厳しいかもしれない」と試合後の会見で漏らしており、さらなる苦境に立たされるかもしれない。

それでも「ウチは誰がいないというのが関係ない。いるメンバーでやるだけです」と浜口コーチが言うように、一人ひとりが『エクストラ』の力を発揮することで逆境に立ち向かうだろう。ケガ明けのダブだが「やれることはそのタイミングですべてやる」と静かに闘志を燃やす。