マルク・ガソル

長い中断期間を利用してケガを治し、完全復活をアピール

昨シーズンのNBAで優勝したラプターズは、最後の最後まで本命とは見なされていなかったが、プレーオフに入って無類の強さを見せ、マジック、シクサーズ、バックス、ウォリアーズを打ち破った。盤石のディフェンスと変化に富んだ戦い方のバリエーションが、勝負どころでの強さを支えている。カワイ・レナードが移籍したことで、前年以上に過小評価されているかもしれないラプターズだが、彼らは前年同様に自分たちの実力に揺るぎない自信を持っている。

『バブル』に来てその自信をさらに強める要因となっているのが、マルク・ガソルのパフォーマンスだ。35歳の彼は左ハムストリングのケガに苦しみ、今シーズン中断まで36試合にしか出場できなかった。それが長い中断期間でケガを治し、身体を作り直して大幅に体重を落とした。その結果、『バブル』では若々しいプレーが復活。プレータイムは20分強に留まっているものの、彼がインサイドに入った際のディフェンスには抜群の安定感がある。

「対戦チームが何をしようとしているかを読んで、それを潰すことを考えている。片方のコートともう片方をつなぐのが僕の役割だ」と、プレーオフファーストラウンドを控えた会見に出席したガソルは言う。「チームメートが楽にプレーできるようにパスやスクリーンをして、自分でもシュートを決める。一番重要なのは試合に勝つことだ」

カワイ・レナードがいないことも彼には関係ない。レナード抜きでここまで勝ち上がったことをすごいと思わないか、との質問に「思わない」と断言した。

「バスケットボールはテニスとは違う。ラファエル・ナダルやノバク・ジョコビッチなど個人が注目されるスポーツではなくチームスポーツなんだ。バスケットボールはチームがすべて。チームとしてどれだけ上手くプレーできるか、様々な個性がいかにお互いを補ってプレーできるか。スター選手がチームメートやコーチ陣といかに調和できるかが大事なんだ」

前年王者としてプレーオフに臨むにあたり、去年のチームとは経験において絶対的な差があるとガソルは言う。「昨シーズンはチームとして素晴らしい成長ができたけど、バスケットボールにおいても人生においても経験はその後に生きるもの。今回のプレーオフで上手く活用できると思う」

その一方で、挑戦者としての姿勢は変わっていない。「より強いチームになるという目標を達成するために毎試合を戦い、試合ごとに課題を見つけ出しては修正していく。実際、それ以外にやれることはないんだ。今シーズンは多くの面でいつもと違うけど、その点についてはどのチームも変わりない。やることはすごくシンプル、試合ごとに修正を積み重ねて16勝する、それだけだ」

グリズリーズで11シーズンを過ごし、試合ごとに課題を拾い上げては修正する作業を重ねてきたガソルのキャリアは、ラプターズ移籍を機に栄光に満ちたものとなった。だが、彼は変わらない。一つずつ学んでは前に進み、勝利を積み重ねていく。