文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

ディフェンスマインドで第1戦の借りを返す勝利

栃木ブレックスにとって先週末の川崎ブレイブサンダース戦は、チャンピオンシップ進出を確保する大事な試合であると同時に、チャンピオンシップでの戦うを占う試金石となった。結果は初戦を落とし、第2戦に勝利。その翌日にチャンピオンシップ進出が確定した。

栃木の日本人ビッグマン、竹内公輔は「自分が起点というか、リズムを生むような選手にならないといけない」と特にオン・ザ・コート「1」の時間帯での自身の役割を語る。第1戦では鎌田裕也とのマッチアップで優位を作れず「悔しい」と漏らしたが、第2戦では鎌田を圧倒するとともに相手のエース、ニック・ファジーカスのシュートをブロックするなど存在感を放った。リバウンドを含めたディフェンスだけでなく、12得点と攻撃面でも活躍。ただ、竹内はディフェンスに注力した結果だと話す。

「まずはディフェンスの強度を昨日よりも数段階上げました。今日は40分通してチーム全員が激しくディフェンスできました。それで川崎のシュートが落ち始めてそのリバウンドをチームで取れたと感じています。たくさん点を取ろうというのはなかったです。1対1で点を取ったシチュエーションは少なかったですし、ディフェンスで激しくやって良いパスをもらえたからフィニッシュできました」

良いディフェンスが良いオフェンスにつながるとよく言われるが、この日の竹内はそれを体現するパフォーマンスで、川崎を相手にしても栃木が十分に戦えることを証明した。

走れるビッグマン「リムランが求められています」

オフェンス面での竹内は、得点以上に速攻の先頭を走る姿が目立つ。栃木2年目のシーズンも終盤を迎え、『堅守速攻』のスタイルに見事にフィットしている。ただ、これも竹内に言わせれば「ディフェンスで『前に、前に』という気持ちが出ているので、リングに向かう気持ちがついた」であり、ディフェンスマインドの産物だ。

「リムラン(リングに向かって走ること)が自分には求められています。そこで自分がスコアできなくてもウイング陣が走ってノーマークでシュートを打てます」と、自分が走ることで栃木が良いオフェンスを展開できることを竹内は理解している。「ディフェンスって気持ちだと思うので、とりあえず気迫を出す。ウチはディフェンスで激しくやって、オフェンスはスマートにしようと。それができている時はやっていて強いなと感じます」

32歳のベテランが速攻の先頭を走る。日本人ビッグマンはプレータイムがそう長くはもらえないものだが、竹内はチームでライアン・ロシターに次ぐ26.8分を任されている。試合を通してタフに戦い、そして走り続けるのが大きな負担なのは間違いない。それでも竹内は走る。

「僕はリングからリングまで走るので、その分、ウイング陣はしっかりシュート決めろって感じです(笑)。決めてくれたら楽になりますよ、という無言のプレッシャーです」という竹内。第2戦は会心の勝利だっただけに、いつもよりも心なしか饒舌になっていたようだ。

ホームを離れても「僕たちならできる」と自信

今シーズンの栃木はスタートダッシュに失敗して苦労したが、もうチームのスタイルは出来上がった。『ワイルドカード下位』という一番下の序列でチャンピオンシップに参加するが、堅守速攻のスタイルがハマればどのチームにも負けない自信がある。同時に、それができなければ真逆の事態になることも理解している。

「やることをやらないと昨日みたいなひどい試合になりますし、負けてからエンジンがかかるのではいけない。チャンピオンシップでは取り返しがつかない」と竹内は警鐘を鳴らした。

昨シーズンはリーグ全体の勝率トップでチャンピオンシップに出場したことで、セミファイナルまでホームアリーナで戦うことができた。ファンがともに戦うブレックスアリーナはまさに黄色い要塞と化し、優勝の大きな後押しとなった。今シーズンはアウェーでの戦いとなるが、竹内は「僕たちならできると思っています」と強気な姿勢を崩さない。

アウェーでの川崎戦、とどろきアリーナはほぼ真っ赤に染まった。その中での1勝1敗は「自分たちにとって良い経験になった」と言う。アウェーでもやれる、その手応えは単なる1勝を大きく上回る価値があったはずだ。