
2020年夏、東京オリンピックは1年延期となったが、チェアマンが交代したBリーグは実質的な『フェイズ2』に入った。新しいプロリーグとして『BREAK THE BORDER』を掲げて急成長したBリーグは、新体制で次の成長を目指す。そのBリーグをスタート時からトップパートナーとして支えるソフトバンクは、日本バスケット界の成長と今後の可能性をどう見ているのだろうか。ソフトバンク株式会社のサービス企画本部で、バスケットボール関連の事業を取りまとめる原田賢悟副本部長に現状を聞いた。
「Bリーグはバスケットボール自体がエンタメ」
──ソフトバンクでは長くお仕事をされていると思いますが、これまでどんな業務にかかわってきたのですか。
ソフトバンクの前身であるJ-フォン東京に中途入社して、モバイル事業の代理店営業、法人直販営業を担当し、その後は企画部門に長くいました。ソフトバンクになってからは移動機調達企画やキャンペーン企画、オンラインショップ運営、サービス企画とソフトバンクが提供する様々なサービスを担当してきました。社歴としてはトータルで20年です。現場で何が起きているのか自分自身の目で確認しないと気が済まない性分なので、これからも現場にこだわっていきたいと思います。
──どおりで現場でご一緒する機会が多いですね。バスケットボールにかかわる仕事はいつから担当されていますか?
2017年からです。Bリーグが誕生した時にはかかわっておらず、2016年にBリーグとのパートナーシップが決まり、川淵三郎さんと孫(正義)社長が握手する記者会見を見て「すごいことを始めたな」と思ったのを覚えています。Bリーグを担当する前から何度か試合会場に行くチャンスをいただき、クラブ、選手、ファンの皆さまの一体感を体感させてもらい、いつの日かバスケの『Bリーグ』が『プロ野球』やサッカー『Jリーグ』に追い付く日が来るのだろうなとイメージしました。「この先、どんな未来がひらけるのだろう」とワクワクしたことを覚えています。
個人的には学生時代から今に至るまでずっとバレーボールをやっています。昔からバレーボールの方がメディアでの扱いは多かったという認識ですが、Bリーグ開幕後はバスケットボールの方がメディアの取り扱いが多くなった印象です。またBリーグの2016-2017シーズン開幕戦でのLEDコートやチアのパフォーマンスなど、同じアリーナスポーツであるバレーボールにはないエンタメ性を感じました。
──もともとソフトバンクはプロ野球球団を持っていて、野球の中でもかなりの成功を収めています。同じスポーツで新たにバスケに参入したのは、プロ野球にはない魅力があったからだと思いますが、どんな狙いがあったのでしょうか。
バスケットボールは世界的に人気があり、競技人口が最も多いスポーツです。また、バスケットボール競技自体がアリーナスポーツでコンパクトに行えるので、最新のテクノロジーとの親和性があり、スポーツビジネスとして大きな可能性を感じています。

「可能性は間違いなくあるので、そこはやりきりたい」
──最初にBリーグとソフトバンクがパートナーシップを結んだのは2016年3月のことでした。当時はまだBリーグがどれほどのものか全く分からず、期待値だけでパートナーシップを決めたと思いますが、今年の契約延長は実際のBリーグの価値を冷静に見ての判断でした。Bリーグの誕生から4年間、ソフトバンクから見た満足度はいかがですか?
ソフトバンクとしてサポートしきれなかった4年間だったと思っています。
Bリーグには、もっともっと伸びしろがあると思っています。ソフトバンクではこれまでも『バスケットLIVE』などでB1、B2全試合のライブ映像を提供してきましたが、それはファンの皆さんに一方的に映像提供するだけで、双方向でのコミュニケーションはありませんでした。まだファンの皆さんの満足に足るものは提供できていないと考えています。
──「5Gで新しい映像体験を」とはよく聞きますが、それが実際にどのようなものになるのかはいまいち想像できません。Bリーグの開幕に向けて準備中のものもあるとは思いますが、3年後、5年後、10年後にはどんなものが実現しますか?
2020年3月に5Gサービス提供を開始しました。5Gサービスはスポーツ界、エンタメ界の視聴観戦体験を大きく変えることのできるテクノロジーです。試合会場に行けなくとも、試合会場と同じ、もしくはそれ以上の臨場感を味わっていただくような視聴体験を提供できると思います。現在、2020-21シーズンに向けて様々な映像サービスを提供できるように準備を進めています。楽しみにしていただければと思います。
また、何年先になるかわかりませんが、『スターウォーズ』の世界を再現したいと思っています。テーブルの上にバスケコートが立体で出てきて、ゴーグルなどを着けることなく自分の目で立体映像の試合をライブで楽しむことができる。そのような世界がそう遠くない未来に実現できるのではと思っています。
──今はプロ野球もJリーグもシーズン中ですが、新型コロナウイルスの影響に苦しんでいます。Bリーグは10月に開幕しますが、アリーナに観客を入れて試合ができるかどうかは怪しい状況です。会場にファンを入れられず映像で見るしかないとなった場合、ソフトバンクのテクノロジーがBリーグの命綱になります。
アリーナに5000人のファンの皆さまが観戦に来るとしても、観戦における目的は一緒じゃないですよね。選手とコミュニケーションを図りたい人もいれば、ファン同士の繋がりを大事にしている人もいる、チアのパフォーマンスやエンタメに期待している人もいるはずです。それぞれのニーズに合ったいろんな観戦体験をどのように提供できるのかを考えています。
プロ野球やJリーグ、エンタメ世界でコロナ対策としてファンの皆さまとのコミュニケーションを始めています。それぞれの良いところを取り入れてファンの皆様が次も視聴したいと思えるような映像を提供していきたいと思います。
──それでは、新型コロナウイルスの影響を受けながら新しいシーズンの開幕を待つファンへのメッセージをお願いします。
コロナ禍の状況は誰も経験したことがありません。クラブ、選手、スタッフ、ファンの皆さまの安心安全をどのように確保するのか、我々スポンサー企業も一緒になって考えていきたいと思っています。コロナ禍においてバスケ界全体が苦しい時だからこそ、精一杯応援していただきたい。その応援の環境を整備していく事が、スポンサー企業としての役割と考えています。みんなでBリーグを支えていきましょう。コロナを乗り越えた時に「さすがBリーグ」と思えるような状況をクラブ、選手、スタッフ、ファンの皆さまと作っていきたいです。