文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

連勝できない東地区「不思議だし、面白い」

川崎ブレイブサンダースは今シーズン51試合を戦って34勝17敗、東地区3位につけている。前節にチャンピオンシップ進出が確定したが、レギュラーシーズンはまだ残っている。地区2位のアルバルク東京とは3ゲーム差、首位の千葉ジェッツとは4ゲーム差。残り9試合で逆転するのは容易ではないが、北卓也ヘッドコーチは「可能性がある限りは上を目指しますよ」と断言する。

中地区から東地区へと移った今シーズン、特に前半戦での出遅れが響き、地区首位争いに絡むことなく3位に甘んじているが、指揮官は「この順位が今のチームの位置を一番明確に示していると感じます」と、現実を正面から受け止める。

「もちろん、開幕前から大変だと思っていて、実際に大変なんですが、面白いゲームが展開できていると思います」と北ヘッドコーチは言う。「とにかく連勝ができない」というのが東地区を戦ってみての感想だ。

「他のチームもそうなんですけど、これまであまり起こらなかったことが今シーズンは起きています。例えばA東京さんとは、1戦目で30点差で勝ち、2戦目で30点差で負けることがありました。千葉さんとは1戦目は大差がついてて第4クォーターに追い付かれました。2試合目は負けてて追い付くところまでいきました。ああいうことがなぜ起こるのか分からない。力が同じぐらいであれば普通は競るものですが、今シーズンはああいうことが結構起きています。そういう事例があるので、20点リードしていても安心できないし、逆に負けていても『まだ行ける』というのがあります。それが不思議だし、面白いところです」

「チャンピオンシップを見据えながらの戦い」

シーズン終盤戦の戦い方について「そこまで変えようとは思いませんが、チャンピオンシップを見据えながらの戦いはしています」と北ヘッドコーチは明かす。だからこそ、「連勝できない」ことを気に掛けている。

「連勝しなければいけないのはチャンピオンシップも一緒です。1勝1敗だと第3戦をやらないといけない。昨シーズンは第3戦になるとホームのチームが勝っているので、そこがまたどうなるか。ファンの方々の応援の力が増していて、ホームコートアドバンテージが年々強くなっていると感じます。アウェーで戦うとなると、相手チームだけでなくその部分のプレッシャーとも向き合うことになります。このままの順位だとそうなってしまうので」

だからこそ冒頭の「可能性がある限りは上を目指しますよ」という言葉につながる。当然、チャンピオンシップには万全の体調で臨みたいもの。それでも、チャンピオンシップ進出を確定させた後の琉球ゴールデンキングスとの第2戦でも、選手起用に変化はなかった。

それも「チャンピオンシップを見据えながらの戦い」の一つだと指揮官は明かす。「私も沖縄でのゲームは初めてだったんですが、あの雰囲気は独特でした。沖縄のファンはそもそもバスケットが大好きで、相手チームの良いプレーに対しても盛り上がってくれる。それでいて第4クォーター終盤に我々が追い上げた時の、キングスを後押しする応援はものすごかったです。結果的に延長で負けましたが、あれを選手に経験させることができた。そのプレッシャーの中で逆転して、勝てそうなところまで行けたのは収穫です」

もし来月また琉球と沖縄市体育館で対戦するとなれば、その収穫がモノを言うはずだ。

「チャンピオンシップにつながる良いゲームを」

エースのニック・ファジーカスは平均30分半の出場。酷使が続く中、プレータイムを減らしても不思議ではないが、先の琉球との第2戦では普段より長い33分間プレーしている。ケガのリスクは考慮しないのだろうか。指揮官の回答はシンプルにして明確だった。「プレータイムを減らしてもケガする時はケガします。集中して試合をさせないと、むしろそちらが危ないです」

「だから、そこまで変えようとは思わないんです。選手も勝ちたいと思ってやっているので。順位が完全に確定したら、完全にチャンピオンシップを見据えるかもしれませんが、今の時点でそうやろうとは思いません」

ここに来てジョシュ・デービスの得点が安定してきた。鎌田裕也と野本建吾も調子を上げてオン・ザ・コート「1」の戦いぶりが改善され、シーズンを通して積み上げてきたことが形になってチームは仕上がりつつある。「ジョシュはフリースローが入るようになったのが大きいです。フリースローをもらっても外すのでは流れが悪くなるので。鎌田は守備は身体を張ってよく頑張ってくれるし、今シーズン試合に出るようになって落ち着いてプレーできるようになったのが大きいです。野本はスピードを生かしてくれれば。何かを起こしてくれる選手なので、チャンピオンシップの秘密兵器として何かやってくれたらうれしいですね」

まずはレギュラーシーズンの残り9試合をどう戦うか。「60試合は長いようであっという間ですよ。チャンピオンシップにつながる良いゲームをしたいですし、東芝がオーナーとしては最後のシーズンになりますので、そういう面も含めて最高のシーズンにできれば。私が一番長くて、社員で20年以上やってきているわけですから。寂しいのは寂しいですが、有終の美を飾りたいと思います」

シンプルに、目の前の試合に勝つことに集中する。ただそれと同時に、チャンピオンシップを見据えた駆け引きがあり、長きに渡る東芝時代のラストを勝利で飾りたいという願いもある。ラスト9試合は難敵ばかり。厳しい戦いが続くが、そこからプラスを得ては積み重ね、川崎はチャンピオンシップへと向かう。