文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

『ファジーカスキラー』がその威力を発揮

3月30日、アルバルク東京は川崎ブレイブサンダースを敵地で撃破し、チャンピオンシップ出場マジックを2とした。最大の勝因はリーグ3位の攻撃力を誇る川崎を71点に封じたディフェンスだ。指揮官ルカ・パヴィチェヴィッチもディフェンスの勝利を強調した。「特に(ニック)ファジーカス選手、辻(直人)選手、いかにここを抑えるかということはプランにありました」と明かし、「マッチアップした選手はよくディフェンスの仕事をしてくれた」と称えている。

名前こそ挙げなかったが、その賛辞がファジーカスのマークについたジャワッド・ウィリアムズへ向けられたものであることは間違いない。サイズ的にはアレックス・カークにマークさせるところだが、ルカコーチが付けたのはウィリアムズだった。

「クイックネスがあるから、回り込んで簡単にボールを入れさせないことを心掛けた」とウィリアムズが言うように、ボールを預けるだけでも時間をかけさせ、川崎の攻めを停滞させた。「自分よりも体重が重い選手とマッチアップの機会があって、自分のクイックネスや頭を使って相手の裏をかく」とウィリアムズはそのディフェンスの極意を語ってくれた。

ファウルのコールに苦しみ4つのファウルを犯したもの、集中力は途切れることなく我慢強く守り続けた。22点を献上したものの、うち9点はフリースローで、フィールドゴール14本中6本成功、4つのターンオーバーを誘発するなどエースを自由にさせなかった。

2月11日の対戦では、ファジーカスを今季最少得点である10点に封じている。『ファジーカスキラー』としての自覚はあるかとの問いに対して、「ここで持たせないとか、こういうところはやらせない、という部分は持ってます。それにプラスアルファでチームの戦術があるので抑えられた」とウィリアムズはチームディフェンスを強調した。

「何万本とシュート打ってきた」経験則が生きる

ディフェンスでの貢献もさることながら、要所で12得点を挙げたオフェンス力も見過ごせない。特に5点差に詰められた場面では3本のフリースロー成功させ、その直後には3ポイントシュートを沈めるなど大事な場面での得点が光った。

「何万本とシュート打ってきて、そういう場面を何度も経験している。これは自分がシュートする場面、というのは感覚でつかんでるからそこは思い切って打つ。あとは入るのを祈るだけだ」と経験がその勝負強さを生み出している。

10年前を遡ると、ウィリアムズはレラカムイ北海道(現レバンガ北海道)で平均24.7得点を挙げるエーススコアラーだった。だが今シーズンは、オン・ザ・コート「2」の場面で違いを生み出すロールプレーヤーとしての役目を担っている。

もともとスコアラーだっただけに、プレータイムが制限されてロールプレーヤーになることは抵抗があったに違いない。それでもウィリアムズは「自分の点数やアテンプトよりも、勝利を優先している。ルカと話して自分の役割はこれだと分かった上でA東京にきたので、自分を殺すとは思わず勝利を優先してチームファーストに徹しているだけ」と意に介さない。

ひもをいじるルーティンの真意は?

ウィリアムズはボールがデッドになった際、バッシュのひもをいじるシーンがしばしば見られる。靴ひもがほどけやすいのかと問うと、そういうわけではなく、一種のゲン担ぎだと語った。

「ひもが緩く感じることが、あると言えばある。ルーティンとしての意味合いも含まれる」とウィリアムズは言葉を濁すそこは「チャンピオンシップに行ったら教える」と、その行動の究明はレギュラーシーズン後に持ち越された。

主にオン・ザ・コート「2」での出場が多いウィリアムズだが、彼のパフォーマンスは勝敗に直する。チーム力を強さに挙げるA東京だが、個の力があってこそ、その戦術は威力を発揮する。そうした面を鑑みてもウィリアムズの貢献がA東京の強さの根幹となっているのは間違いない。

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