「やっぱりJXは強い、と証明していかないといけない」
ここまでWリーグ9連覇。『女王』JX-ENEOSサンフラワーズは静かに決戦の時を待っている。全勝優勝を果たした昨シーズンに比べ、今シーズンはトヨタ自動車アンテロープスに1敗を喫しての32勝1敗。ただ、その1敗がチームから隙を消し去った。
タイトルを決める週末を前に、キャプテンの吉田亜沙美は語る。「毎年毎試合、気持ちの部分は変わらないですね。2冠という目標は変わらず、そこに向かって進んでいます。いろんな変化の中で他のチームも強くなっていますが、私たちは10連覇に向かって、自分たちに挑戦します。一発勝負でも『やっぱりJXは強い』と証明していかないといけない。そこに集中して、JXのバスケットを徹底してやることが第一です」
「自分たちに挑戦する」という言葉からは、これまで積み重ねてきたJX-ENEOSのバスケットへの揺るぎない自信が感じられる。相手どうこうではなく、自分たちのバスケットさえできれば絶対に勝てるという確信が、吉田にはある。「内海(知秀)ヘッドコーチから佐藤(清美)ヘッドコーチ、それからトム(ホーバス)と、やらないといけないことは大きく変化せず、ディフェンスからブレイクというJXのバスケットが徹底してできていますし、それで連覇し続けていて、選手たちはJXの走るバスケットをすれば絶対に勝てると自信を持っています。相手がどことか関係なく、走るバスケット、アップテンポのバスケットができれば結果はついてきます」
宮崎早織への期待「気持ちの問題だけ」
もっとも、JX-ENEOSも万全ではない。吉田が務めるポイントガードの2番手は、藤岡麻菜美が長期離脱中、山田愛もケガ明けという状況。吉田と宮崎早織で回すことになりそうだ。会見での吉田は「宮崎に頑張ってもらって、私を休ませてほしい」と報道陣を笑わせたが、4年目の宮崎にとっては笑ってはいられない大一番となる。
吉田は宮崎を「良くも悪くも流れを変えてくれる選手です」と表現する。「スピードや思いきったシュートでチームが救われたゲームもたくさんあります。逆に彼女がミスから入ってしまうとチームがガタッと崩れてしまう。そういうものを持ち合わせた選手なので、マイナスな部分を自分でどう克服していくか。これから日本を背負っていけるガードになると思うので、そこは期待しています」
もちろん、キャプテンとして先輩としてサポートは欠かさないつもりだ。「彼女の場合は気持ちの問題だけなので、気持ちを強く持って試合に臨んでいければ、どこのガードにも負けないくらいのプレーヤーです。これから緊張感も増してきますが、その中で彼女が経験をどう生かしていけるか。早い段階で私と代わってゲーム勘を多く持っていければいいかと思います」
会見で名前を挙げたのは期待の表れだ。今シーズンのチーム全体を吉田は「どの選手も成長して、気持ちを持って毎試合に臨んでくれた」と評したが、宮崎はその筆頭で、セカンドユニットで最長となる543分のプレータイムを得て大きく伸びた。「宮崎はまだ成長できるし、もっと頑張ってもらわないと。今の経験をチャンスとして頑張ってもらいたいです」と吉田は言う。
本川とのマッチアップ「今からワクワクしています」
『10連覇』というワードが目立つが、まずは土曜のセミファイナル。相手はシャンソン化粧品シャンソンVマジック。キャプテンの本川紗奈生は吉田とのマッチアップについて「アシストの多い吉田選手を止めればセンター陣の得点は止められる。まずはこの選手をブッ潰したい」と笑顔で挑発したが、吉田も考えは同じ。「3ポイントシュートもドライブも警戒しないといけない選手なので、軸をブラせればいいと思います」と語る。
長らく代表でともにプレーし、リオ五輪での印象も色あせないAKATSUKI FIVEの1番2番のコンビ。セミファイナルの舞台で本川と対戦できることを吉田は楽しみにしている。「敵ですけど、一緒にバスケットができるとワクワクさせられる選手ですし、逆に私もモチベーションを上げさせる存在であったらいいなと思うんですけど」
本川とのマッチアップをイメージする時、吉田の頭に浮かぶのは『攻める本川、止める吉田』の姿だ。「ドライブに行く瞬間や、どっちに行くかはだいたい分かるので。お互いにバレバレだとは思うんですけど(笑)。だからこそ、チームとしての勝ち負けとは別に、個人としての勝負という部分で本当に楽しみで、今からワクワクしています」
「清美さんのバスケを信じて40分間集中して徹底して」
「早く試合がしたいです」と言う吉田は、自信を備えていると同時に油断もしていない。「10連覇が懸かっていますけど、毎年変わらず2冠を達成するのがチームとしての目標です。皇后杯でまず一つ。そしてリーグで最後はみんなで笑って終わりたいです。清美さんのバスケットを信じて40分間集中して徹底してやれば自然と結果はついてくるので。その中で私たちもバスケットを楽しんで、ファンの方にも楽しさや感動、勇気を与えられるようにやっていきたいです」
10連覇へ死角なし。そう思わせる吉田の言葉だが、勝負はやってみなければ分からない。だからこそ吉田は「早く試合がしたい」と言うのだろう。セミファイナルとファイナル、シーズン最後の2試合は、ファンの期待を裏切らない、熱くクオリティの高いものになりそうだ。
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