文=泉誠一 写真=B.LEAGUE、泉誠一

バスケットボールにも大きな影響を与えた3.11

今週末、東日本大震災から7年目の3.11を迎える。犠牲になられた方々にお悔やみ申し上げるとともに、今なお避難生活を強いられている多くの皆様には1日も早く日常を取り戻せるよう願ってやまない。

あの日は春の香りがする暖かい金曜日だった。JBLの東芝(現川崎ブレイブサンダース)vs北海道(現レバンガ北海道)戦を取材しに行こうと下調べを始める。午後2時46分、立っていられないほどの大きな揺れは初めての恐怖体験だった。仕事部屋のバスケットボール型掛け時計が落ち、派手に割れた。ガラスの破片を拾いながら、平常心を保とうと努力する。しかし、テレビをつけると映画のような光景が飛び込んできた──。

ほどなくして、当時のJBLやbjリーグからその週の開催中止の一報が流れる。クライマックスを迎えたWリーグは、JX-ENEOSサンフラワーズvsトヨタ自動車アンテロープスのファイナル1戦目を終え、福島県に移動した矢先の出来事であった。2戦目以降は行われることなく、セミファイナルまでの結果に準じてJX-ENEOSが静かに3連覇を成し遂げた。JBLもシーズン途中で中止となったが、bjリーグは被災した関東以北を除くチームで復興支援ゲームが続けられた。

『B.LEAGUE HOPE』の下、バスケファミリー一丸で

3.11以降、各チームは支援物資や義援金を募り、選手たちは自らが寄付サイトやチャリティーオークションに参加しながら温かい『支援の輪』が広がっていく。有事だからこそ、当時は袂を分かちあっていたJBLとbjリーグが手を取り合い、チャリティーゲームができないものかと期待していた。チャリティーの名の下に友好関係を築けていれば、その後に待っているFIBAから制裁を受けることなく、正しい方向へと導けていたかもしれない。だが、歩み寄りは実現せず、それぞれが有志での活動を続けるに留まった。

一方、サッカー界はJFAをトップとし、震災後すぐさま被災地へ向けたメッセージと支援を行うサイトを立ち上げた。サッカーファミリーが一丸となった発信力は個々で行うよりも大きく、そして早い。

その後、日本バスケットボール選手会が発足されたことで、選手たちが協力し合いながら率先してチャリティー活動ができるようになった。今では『B.LEAGUE HOPE』ができ、リーグとして整備されたことは当時を振り返れば大きな前進である。

今年1月には、地震発生からまもなく2年目を迎える熊本でオールスターゲームが行われた。バスケットが持つ力を通して、被災地を勇気づける素晴らしい活動となった。また、先月に台湾東部で発生した大きな地震の義援金を募る活動はJBA、Bリーグ、Wリーグのバスケットボールファミリーが手を取り合ってサポート。チャイニーズ・タイペイを迎えたワールドカップ予選のホームゲームで募金活動が行われ、BリーグやWリーグの各会場にも募金箱が設置された。

Jリーグ、そしてBリーグの初代チェアマンである川淵三郎は著書『虹を掴む』の中で、『以前から私は世の中に貢献できればいいなと漠然と考えていた。(中略)Jリーグでも「寄付させてもらってありがとう」と言えるような状態に早くなりたい』とチャリティーへの造詣が深い。その意志を汲む形で『B.LEAGUE HOPE』ができたことは、人のために何かをしたいと思っていた選手たちにとっては大きな道標になる。

福島vs仙台の『復興応援スペシャルマッチ』

7度目の3.11は日曜日であり、Bリーグ開催日。B1各ホームゲームでも復興支援イベントが用意されている。島根スサノオマジックはチャリティーサイン会を実施。三遠ネオフェニックス、アルバルク東京とシーホース三河のホームゲームでも連日募金活動が行われる。東日本大震災や熊本地震を風化させず、あの時の気持ちを思いだして今年も支援の輪が広がることを願っている。

B2では、福島ファイヤーボンズvs仙台89ERSが『復興応援スペシャルマッチ』と銘打って、様々なイベントを用意している。同じく甚大な津波被害に見舞われた岩手県の岩手ビッグブルズも『東日本大震災復興祈念試合』で地元を盛り上げる。正直に言えば、Bリーグのチーム数の多さには否定的な筆者だが、チャリティーの観点から言えば、多くのプロチームが大きな傷を負った地域を元気にすることには大賛成である。今週末は7年経った被災地でBリーグを観戦し、ついでに地元の旨いものを食べたりしながら復興支援がオススメだ。

レギュラーシーズン60試合のうち、半分はホームゲームである。平均集客数はB1では3000人弱、B2でも1500人ほどを毎試合集めている。かつてフランチャイズ展開のように増え続けたプロチームなのだから、コンビニ同様にいつも募金箱を設置すればよい。入場時やチケット売場、物販ブースの横に置くことで、例えば毎回1人10円を募金してくれるだけでも毎シーズン2000万円以上が集まる計算だ。

しかし、金額の問題ではない。川淵さんが夢見る「寄付させてもらってありがとう」ではないが、60試合と長いレギュラーシーズンがあるからこそ、寄付や社会貢献することを日常化させることができるのではないだろうか。シーズン中はファンから温かい支援を募り、オフシーズンになれば選手たちが出向いていく。知名度の上がっているBリーグがさらに認められるためにも、チャリティー活動は大事である。