今シーズン終了後、折茂武彦、桜木ジェイアール、正中岳城とリーグを代表するベテランが相次いで引退を発表した。一方で、まだまだコート上で強烈な存在感を発揮している百戦錬磨の猛者はおり、38歳の柏木真介はその代表的な存在だ。この2シーズン在籍した新潟アルビレックスBBで復活を遂げ、新シーズンは古巣のシーホース三河に電撃復帰を果たす柏木に両チームへの思いを聞いた。
「新潟に来て、もう一度バスケットを楽しむことができた」
──まずは新潟での2シーズンを振り返りましょう。特に加入1年目は主力として地区優勝に大きく貢献しました。
すごく大きな2年間だったと正直に思います。あそこまでプレータイムをもらえること自体が、前に所属していた三河、名古屋Dではしばらくなかったです。それが新潟に来て、もう一度バスケットを楽しむことができました。この年齢で、そう思えたことがすごく大きかったと感じます。多くの時間プレーすることで、忘れかけていたものをいろいろとよみがえらせることができました。これは新潟に来たからこそ味わえることができた気持ちです。
──個人としてのパフォーマンスは、どのように感じていますか。プレータイムが増える中でも、ほぼケガもなく過ごせました。
最初、こんなにプレータイムを得られるとは思っていなかったので、「よく動いたな」という気持ちも正直あります。その中で、ケガをせずにやれたことで「まだできる」という気持ちにもさせてもらえました。ただ一つ言えるのは、三河を出る時は身体が動くという前提での決断でした。それを僕自身で確認をすることができ、周りに対してもまだ動けることを見せられたと思います。
──この2シーズン、特に思い出に残っている場面はありますか。
加入1年目は、こういうバスケをしたらハマるんだろうなというイメージ通りにできました。結果として、できすぎた部分もあるんですけど、そこには本当に大きな達成感がありました。なので、どれか一つの試合ではなく、1年目のシーズンを通して成長を感じながらできたことが思い出深いです。そして、ホームゲームでのブースターの歓声、選手を後押ししてくれるエネルギーは、新潟に来て最もすごいと思いました。
チームの歴史が長いこともあって、ファンの皆さんはバスケをよく知っています。勢いに乗った時にはとても盛り上がりますし、逆にチームがダメな時はブーイングもされる。それを含めて本当に愛がある、そういった熱さはとても感じました。
──ずっと注目されましたが、先輩の五十嵐圭選手と久しぶりにプレーできたことへの思いを教えてください。
それが新潟に行った理由でもありました。2人で一緒にプレーしたのはルーキー、2年目以来でしたけど、少なからずお互いが年齢を重ねて良い経験をしていたことで若い時とは違う味を出せていると思いました。それは今振り返ってみても変わらないです。
「昔は昔、今回は新しいチャレンジ」
──新シーズンは三河への復帰となります。三河はこれまで出戻りの選手がいなかったので、柏木選手の復帰は大きな驚きでした。
三河からしたら初めてのことであり、最初は僕自身も戻っていいのか、迷いみたいなものはありました。ただ、新潟のおかげでバスケットに対して、もう一度新しい気持ちで向き合うことができたこともあって移籍を決めました。驚いたのは(桜木)ジェイアールの引退ですよ。復帰にあたって「また一緒にやろう」とか「帰ってこい」という話をずっとしていました。それが実際、三河に戻ることが決まってすぐに、「実は引退します」と聞いて、「いやいや、話が違うじゃん」みたいなところはありました(笑)。もう一回一緒にやりたい思いは強かったので、正直に言ってちょっとショックでした。でも、ここまでやってきた選手ですから、今はお疲れ様という気持ちです。
──その桜木選手が引退となると、柏木選手が在籍していた3年前から主力であり続けているのは金丸晃輔選手だけです。世代交代が進むチームの中で、自分はどんな役割を担っていきたいと考えていますか。
もちろんメンバーが違うので昔のようにいくとは思っていませんが、若手に中堅と良い選手は揃っており、ちょっとしたマインドを変えることでチームは良くなっていくイメージはあります。どんなチームのスタイルでも、結局のところ大事になってくる根本的な部分は変わらない。それは新潟での経験で確認できたものです。
そして前に在籍した時と今では大きくメンバーも違って、戦い方も変わっています。これまでの経験で得た良いものはしっかりチームに埋め込んでいきたいですが、昔は昔、今回は新しいチャレンジという気持ちが強いです。
──ここ数シーズンの三河は、トップ戦線に絡めていないです。そこに多くのタイトルに貢献してきた柏木選手が戻ってくることで、ファンの期待も大きいと思います。
この歳で期待していただけるのはうれしいです。ただ、若い選手のようにバリバリ動けて自分でどうにかしていける部分については、昔とは全然違います。もちろん頑張りますが。そこはあまり期待してほしくないなっていう……(笑)。バスケットは個人でやるスポーツではない。良い選手が5人いても勝てないチームを見てきましたし、実際に自分も経験してきました。良い選手が一つになった時には大きな破壊力を持つので、そうなるようにチームを仕向けていくつもりです。
「僕の中では勝負どころでプレーする方が大事」
──起用法はまだこの先の話だと思いますが、先発として出場したいギラギラした感じはありますか。
今年もう39歳になりますし、そんなつもりはないですよ。もちろん出てと言われたらスタメンで出ます。ですが、こだわりがないと言ったら変なところもありますが、チームを背負っていく若手がいて、むしろ彼らに良い経験をさせてあげないとチームは強くなっていかないです。スタメンで出ることより、僕の中では勝負どころでプレーする方が大事と思っており、どちらかと言えば、そういった場面に絡みたい気持ちの方が強いですね。
──オフシーズンに長年活躍したベテランの引退が続きました。コロナ禍で先行きが不透明な状況もある中、自身のキャリアに対して今はどんな考えですか。
今回のコロナの影響があっても、気持ちと身体がついてくる限り現役を続けていきたいという思いにあまり変化はありません。新潟に来て(五十嵐)圭さんが40歳であんなにバリバリで活躍している姿を見ることで「自分ももっとやりたい」という気持ちにさせてもらいました。
──五十嵐先輩より先に引退したくない気持ちはありますか。
年齢の順番通りに行きたいな、っていうのはあります(笑)。
──最後に新潟、三河のブースターへのメッセージをお願いします。
新潟のブースターさんには、選手を後押ししてくれるとはこういうことなんだというくらい、応援への見方を変えてもらいました。新潟に来なかったらこの気持ちも味わえなかったです。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
三河のブースターさんに関しては、自分に期待していただけるのはありがたいです。それをチームの結果で返せるように、一生懸命プレーしていきます。またこれから一緒に戦っていきたい気持ちです。
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