ニックスでの騒動に振り回され、笑顔が消えた数年間
今シーズン開幕前にニックスからサンダーにトレードされたカーメロ・アンソニー。新天地ではラッセル・ウェストブルック、ポール・ジョージと『ビッグ3』を結成し、主にスポットアップシューターとしての役割を担っている。
2013年に得点王に輝いたカーメロは、昨シーズンまで5年半も地元ニューヨークの顔として活躍し続けた。しかし、元ブルズとレイカーズで指揮を執り、ヘッドコーチ時代には3度のスリーピート(3連覇)を達成したフィル・ジャクソンが球団社長に就任すると、カーメロとの間に確執が生まれ、カーメロには常にトレードの噂がつきまとうようになった。
ジャクソンとの確執が表沙汰になった2017年の春、ニックスはコンディションに何の問題もないカーメロをベンチに追いやった。表向きはプレーオフ進出の可能性がなくなった時点で若手に経験を積ませるための措置だったが、ジャクソンによる『カーメロ外し』であるのは明白だった。
カーメロの表情からは、次第にトレードマークの笑顔が見られなくなった。移籍確実と見られた昨夏は、契約に含まれていたトレード拒否条項がネックとなり、なかなか移籍先が決まらなかったものの、西カンファレンスの強豪サンダーへのトレードがまとまり、再スタートを切った。
カーメロは、『ESPN』とのインタビューで、ニックス時代を次のように振り返っている「ニューヨークでは球団と街であらゆることが話題になり、常に緊張感があった。安定した生活なんて、とてもじゃないけれど送れなかった。ここオクラホマシティでは、楽しさを取り戻せているよ。僕のことを知っている人なら、いつだって笑って、笑顔を見せる自分が当たり前だった。ここ数年は、そういう自分を失っていた」
カーメロは、『バスケットボールの聖地』と呼ばれるマディソン・スクエア・ガーデンでのプレーを楽しんでいた。しかし、球団内外を取り巻く騒動に我慢がならなかったと話す。
「ニューヨークで一番タフだったのは、どんな状況でも仕事に出て、笑顔でいないといけなかったこと。それが家族や友人との時間にも影響を及ぼした。本当は落ち込んでいても強い自分を演じるというのは、大変な努力だよ」
サンダーでは、ニックスのようにすべてを引っ張る必要がない。ウェストブルックがエースの地位を確立しており、カーメロは与えられた役割をこなして勝利に貢献すればいい。メディアやファンが一つの勝ち負けに一喜一憂して、日替わりする論調に振り回されることもない。オクラホマシティのファンは、勝っても負けても常にサンダーを支持し、声援を送ってくれる。
「そして、この土地にやって来た」と言うカーメロは深く深呼吸し「リフレッシュできている。新鮮な空気を吸えているんだ」と語った。
今シーズン終了後、カーメロは現在の契約を破棄できるプレーヤーオプションを行使し、フリーエージェントになる可能性が高い。現時点でサンダーと再契約するかは分からないが、笑顔を取り戻すためにはオクラホマシティでの生活が必要だった。
コンディションの維持さえできれば、まだ数年もトップレベルでプレーできるだけの力がある。再びバスケットボールの楽しさを感じたままシーズンを終え、ベストな決断をしてもらいたい。