文・写真=鈴木栄一

富樫に加えて西村まで欠く状況をハードワークで補う

2月17日、千葉ジェッツがホームの船橋アリーナでアルバルク東京と対戦した。前日、序盤からリードを許するなどいいところなく65-79で敗れたことに加え、故障離脱中の富樫勇樹の穴を埋めていた西村文男まで戦線離脱。この大ピンチをチーム全員が泥臭くハードにプレーする本来の戦い方で乗り越え、79-69で見事な勝利を収めた。

第1クォーター、千葉はギャビン・エドワーズ、小野龍猛と2人のゴール下を起点に得点を重ねると、さらに大野篤史ヘッドコーチが「前日、田中(大貴)に対して一番ハードワークをしていたと思ったので起用しました」と先発に抜擢したアキ・チェンバースも5得点をマーク。昨日(15-22)とは違い、24-21と五分五分の展開で終える。

第2クォーター、A東京のゴール下の要であるアレックス・カークが残り約7分で早くも個人ファウル3つとファウルトラブルでベンチに下がった隙を突く。このクォーターだけでオフェンリバウンドを5本奪取するなどインサイドで優位に立つと、リードを11点に広げて前半を終える。

第3クォーターに入っても千葉の流れで試合が進んでいくが、残り約3分半にエドワーズ、約1分に小野がそれぞれ4つ目のファウル。千葉にとって2桁リードを保つも、ここまでチームをけん引していた中心2名をベンチに下げざるを得ない展開で、第4クォーターに突入した。

伊藤をセンターに据えるラインナップが奮闘

ここで千葉は石井講祐、原修太、レオ・ライオンズ、マイケル・パーカー、伊藤俊亮と普段では見られないラインアップが奮闘。「レオのカークに対するファイトが不足していると感じました。そこでハードワークできるのが伊藤と思ったので起用しました」と大野ヘッドコーチが説明した伊藤を筆頭に、守備でしっかり踏ん張ったことでリードを維持。A東京に反撃のきっかけを与えず、残り4分にはエドワーズ、小野がコートに戻ってしっかり締める危なげない展開だった。

千葉の大野ヘッドコーチは次のような言葉で選手たちを鼓舞していた。「言い訳できることは一杯ありますが、そこで言い訳するチームか新しいチャレンジをするチームか、どっちになりたいのか。そして昨日できなかったことを徹底する。チームメートを助けるために自分がやれるすべてのことをやろうと言いました」

また、千葉の勝因は、A東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチのコメントが端的に示している。「富樫不在において千葉の鍵は、速攻、ギャビンと小野のローポスト、オフェンスリバウンドとなります。そして今日はオフェンスリバウンドを15本取られ、速攻から多くのポイントを許しました。ギャビン(20得点)と小野(17得点)のポストも抑えられなかった」

ザックのプライド「僕たちが1位でなければ」

千葉は富樫、西村が欠場し、本職の司令塔が阿部友和だけという状況だったが、阿部の出場時間は20分以下。ライオンズがボールの運び役を担い、石井を相手の1番ポジションにマッチアップさせるなど、いつもと違う選手起用を余儀なくされたことに、大野ヘッドコーチは「もうしたくない、というのが実際の気持ちですね」と苦笑するも、「逆境というか、アクシデントがあった中でも前を向いた戦ったことは評価できます」と続けた。

得意のローポストからの攻めを軸に17得点、4アシストと攻撃の起点となった小野は、「ウチはなぜか1人欠けると強くなりますね」とこちらも苦笑いした後、この2試合での収穫と反省を語っている。「今日みたいな試合を勝てるのはウチの強い部分です。ただ、こういう事態だから頑張るのではなく、昨日もっと頑張らないといけない。そこがウチの弱い部分です。上に行くためにはそこを改善していかないと」

一方、連勝を逃したA東京も、馬場雄大と竹内譲次が欠場しており、ケガ人が続出している状況は千葉と同じ。1勝1敗でしっかり上位対決を乗り切ったと評価すべきだ。この2日間、竹内の代役としてオン・ザ・コート「1」の時間帯で4番を担ったザック・バランスキーは、「僕たちが1位でなければいけないというプライドは持っています。ケガで誰かしら抜けていますが、どこよりも練習をやっている自信はあります」と東地区首位の座に強いこだわりを見せる。

A東京と千葉、チャンピオン候補の両チームがともに苦境を乗り越えられる底力を持っていることを証明し、痛み分けに終わった2日間となった。