富山グラウジーズの前田悟は2019-20シーズンの新人王を獲得した。41試合に出場し開幕8試合目からは先発を務め、平均プレータイム27.4分で11.5得点、2.8リバウンド、1.3アシストを記録。ルーキーらしからぬ安定したパフォーマンスでケガ人が相次いだ富山の危機を救った。そんな前田に、新人王受賞で締めくくったプロデビューシーズンを振り返ってもらった。
「アドバイスをくれる人が周りにいて、環境にも恵まれていました」
──新人王の受賞、おめでとうございます。
シーズンが始まる時から新人王を目標にしてやっていたのでうれしいです。チームスタッフや先輩方、スポンサーの皆さんのおかげで受賞できたと思っていますし、本当に感謝したいです。受賞できたのは、勝負どころで決めきれたこと、勝利に直結するシュートを何本か決められたこと。そういう意味でインパクトを残せたのかなと思います。後は、一番の目安にもなる数字をしっかり出せたのが大きかったと思います。
今シーズンはコーチや先輩たちから「思いっきりやれ」と言われていました。自分の武器はシュートだと思っているので、そこに関しては躊躇なく思いっきりプレーできていたのが結果に繋がったと思います。
──平均11.5得点というスタッツを残しました。試合を重ねるにつれて、他チームからも『富山のスコアラー』と認識され、マークも厳しくなっていったと思います。ルーキーにもかかわらず、それを乗り越えたことがポイントになりました。
そうですね。結構早く、開幕5戦目の川崎ブレイブサンダース戦あたりからマークされているなと感じました。試合や練習でも上手くディフェンスを振り切れないと思った時は、いつもコーチに聞きに行っていました。後は、映像を見て「ここをもっとこうすれば良かった」とか「次はこうしよう」と考えて、実際にプレーできたのが良かったと思います。
外国籍選手の(アイザック)バッツ選手が加入してからは、「俺をこう使え」というアドバイスをくれていました。中でも、アルバルク東京戦の土曜日(1月25日)が全然ダメだったんですけど、試合後にホテルで一緒にケアを受けながらパソコンで映像を見て、「俺がこうスクリーンに来るまで待って、そこから動け」と教えてくれたり。そういうアドバイスをくれる人が周りにいて、本当に環境にも恵まれていました。教えてもらったことを実践できたことで、自分でも日々の成長を感じましたし、自信を持ってプレーできていたことが良かったです。
「大学時代はメンタルがすごく弱かったんです」
──それでもシュートは水物で、決まらないことが続くと打つことすら躊躇する時もあると思います。それでも前田選手はシュートを打ち続けることができました。そのメンタルはどこから来ているのでしょうか?
ヘッドコーチからは「絶対に打ち続けろ」と言われていました。練習中でも打たなかったりすると「なんで打たなかったんだ?」と言ってくれたり。後は「打たなくなったらパスしないよ」とも言われていました。シュートを打つことは、入っても入らなくても自分の仕事です。逆にシューターとして出ている以上、打たなくなったら試合に出る意味がないと思っています。
プロに入ってからはポジティブに考えられるようなりましたけど、大学時代はシュートが入らなくなると打てなくなったりして、メンタルがすごく弱かったんですよ。今も確率が悪い時はありますけど60試合のすべてが良いわけないので、そこはポジティブに考えてプレーできました。
──大学時代にメンタルが弱かったのは意外でした。ポジティブに考えられるようになったきっかけはあったんですか?
なんでだろう? でも、大学4年生ぐらいから徐々にポジティブに考えられるようになってきました。きっかけは分からりませんが、自分でいろいろと試行錯誤して考えたりしていました。昔は勝負どころとかすごく嫌いで、できればボールに触りたくない感じだったので(笑)。でも、今では「パス持ってこい」みたいに思っています。
──阿部友和選手は以前の取材で、「俺にパス出せみたいな顔をしている」と前田選手のことを話していました。
そう思ってプレーしていますし、周りからは態度に出てると言われますね(笑)。
──先ほど自分の映像を見ていると言っていましたが、他の選手の映像も見たりしますか? あこがれの選手とか。
金丸(晃輔)さんや折茂(武彦)さんですね。2人はオフボールの動きがすごく上手いんです。そんなにドリブルをつくタイプではないのにディフェンスを振り切ってあっさり点を取れるので、どうやっているのかなと思っていました。2人の映像もすごく見たりして、自分でも取り入れていました。
スピードをそんなに出さなくてもしっかりディフェンスを振り切っている金丸さんのプレーを見ていたら、相手をだましたりする駆け引きが好きになりましたね。大学までは4番でやっていたので、そんなにシューターという感じではなく、いろいろなことをしていました。なので、あまり相手との駆け引きを楽しむという感じではなかったんです。ただ、今はどうやったら相手をだませるのかというのを、すごく楽しんでプレーしています。
「地方クラブがビッグクラブを倒すのはやり甲斐がある」
──大学までは4番メインで今はシューターですが、プロ1年目からこんなにできると思っていましたか?
正直、自信はありました。昨シーズンに特別指定で加入した時は、チームの状態もすごく良い時だったので少ししか出られませんでした。なので、来シーズンに活躍しようと思ってずっと準備していたので、自信を持ってシーズンに入れました。でも、ここまでのスタッツを残せるとは思っていませんでした。
──自信を持ってシーズンを迎えることができていたんですね。ちなみに、新人王はシーズン前から狙っていたと話していましたが、受賞の確信が持てたのはいつですか?
どうですかね(笑)。でも、シーズン序盤は同世代だと僕か熊谷(航)選手ぐらいしか試合に出ていなかったので、行けるかなとは思っていました。でも、実際は分からないじゃないですか(笑)。だから取れるかは最後まで不安がありました。
──来シーズンはどの賞を狙っていますか? 来シーズンの目標や課題も教えてください。
シューターとしては3ポイントシュート成功率賞を狙いたいですね。あとはフリースローの確率が悪いので、そこは上げないといけません。ピック&ロールとかも増やしていきたいですし、一人でもっと打開できるようになりたいです。金丸さんもドライブからのフローターとかが上手いので、フィニッシュや得点を取るバリエーションを増やしたいです。
来シーズンは今シーズン以上に相手チームからもマークされると思いますけど、その中でプレーできることはとても楽しみですし、自分が成長できるチャンスだとも思っています。チームとしても来シーズンは強豪チームばかりの東地区に入りますが、地方クラブがビッグクラブを倒すのはやり甲斐があると思うので楽しみです。
──それでは最後に、富山ブースターへのメッセージをお願いします。
無観客試合を経験して、ブースターさんの後押しがすごく大きいとあらためて感じました。プロとしてやる以上はお客さんの前でプレーしたいと思っているので、すごく寂しくて変な気分でした。今は早く富山ブースターさんの前でプレーしたいと強く思っています。アワードがあるかどうかも分からない時から、Twitterとかで「新人王は前田だ」と言ってくれていて、本当に温かくて感謝しています。
新人王の前田選手に、どんな時でもシュートを打ち続けることができた理由などを聞きました。今はとにかくシューターとしてプレーすることが楽しいようで、醍醐味は「タフショットを決めた時に相手が悔しがるのが好きですね(笑)」とのことです!#Bリーグ #富山グラウジーズhttps://t.co/cDlsapW3PD pic.twitter.com/7TXqiP7J1O
— バスケット・カウント (@basket_count) May 18, 2020
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