文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一

序盤から川崎の攻守が噛み合い、一方的な展開に

川崎ブレイブサンダースが千葉ジェッツをとどろきアリーナに迎えた東地区強豪対決の第1戦。接戦の予想に反し、序盤から川崎の一方的なペースとなった。

第1クォーター、外国籍選手オン・ザ・コート「2」の川崎はニック・ファジーカスとジョシュ・デービスのポストプレーを軸にオフェンスを展開。ゴール下で激しく寄せられても2人は確率良くシュートを決めていく。またディフェンスでは千葉の速攻の出どころをつぶし、千葉のアウトサイドのシュートが当たらなかったのもあって点差が開いていく。アーリーオフェンスから辻直人の3ポイントシュートが決まり13-4、開始わずか3分で千葉にタイムアウトを取らせた。

タイムアウト明け、千葉は石井講祐のフリーを作りだして3ポイントシュートを決めるも単発に終わる。川崎は篠山竜青、長谷川技、再び長谷川とスティールを連発。そこからの速攻を確実に得点へとつないで、13-0のランを含む猛攻で第1クォーターで28-13と大差を付けた。

第2クォーターは千葉がオン「2」。それまでとは打って変わってギャビン・エドワーズとレオ・ライオンズの外国籍選手2人で押す千葉がビハインドを10点まで縮めるも、ここで石井が個人ファウル3つでベンチへ下がるなど噛み合わない。その後、川崎では野本建吾が主に守備でハッスルし、オン・ザ・コート数の差を感じさせなかった。

ジャッジとの戦いに意識が向いた千葉は自滅

前半を終え42-30と川崎がリード。千葉のお株を奪う堅守速攻が機能し、ファストブレイクによる得点は千葉の2に対し川崎は17と差がついた。そして第3クォーター、篠山がスティールからのワンマン速攻を決めれば辻がバスケット・カウントをもぎ取り、長谷川がトランジション・スリーで続いて優位を固めていく。

第3クォーター残り6分48秒の時点でファジーカスを止めに行った小野龍猛が個人4つ目のファウルを取られてベンチへ。前半から基準が定まらぬジャッジに両チームともフラストレーションを見せるシーンがしばしば見られたが、それはビハインドを背負う千葉に顕著に出てしまい、戦う意識がジャッジに向くことに。

残り1分、直前の判定に納得できずイライラしていたマイケル・パーカーが、ディフェンスに転じたところで野本への接触でアンスポ―ツマンファウルをコールされベンチに下がることに。野本が3本のフリースローをすべて決めて74-49。この時点で勝敗の行方はほぼ決してしまった。

千葉は第4クォーターに入って西村文男とエドワーズを中心に猛反撃、特にオフィシャルタイムアウト後には14-0のランで76-83と7点差まで追い上げた。しかし、反撃もここまで。ラスト1分を川崎が締め、87-80で勝利。通算成績を20勝11敗とし、2位の千葉と1ゲーム差に迫った。

完全復活の辻「あとは突き進むだけ」

勝った川崎の北卓也ヘッドコーチはチームのパフォーマンスを次のような言葉で称えた。「全般的に見てディフェンスは良かった。ブレイクのチームなのでまずはそこを抑えようと。オフェンスも第1クォーターと第3クォーターは30点ぐらいで、想定外ぐらいに得点できました」

辻直人は29分半のプレーで21得点6アシストと大活躍。これで5試合連続の2桁得点、自ら力強くボールをプッシュしてクリエイトの役割も果たし、完全復活を印象付けた。「まあ、復活は前からしてたんですけどね」と辻はニヤリと笑い、「ディフェンスもオフェンスもやろうとしていたことができて、気持ち良くプレーできました」と満足気だった。

この試合で一番の出来だったのは第3クォーター序盤、篠山のオフボールスクリーンを使いフリーになって、長谷川からのパスを受けると、原修太のファウルに体勢を崩されながらもジャンプシュートをねじ込んだ3点プレーだ。ハーフタイムに準備して逆襲に出ようとした千葉の勢いをくじく貴重な一撃に、辻は謎のパフォーマンスを披露(写真)。聞けば仕込んでいたものではなく、その場のテンションで自然に出たものだとか。「あれが何なのか、あの時の辻直人に聞くしかないですね」と口調もなめらかで、いよいよ完全復活の趣き。「あとは突き進むだけなので、一戦一戦、目の前の試合に勝つという集中力を大事にしたいと思います」と意気込む。

第4クォーターの失速も「得失点差のことが話に出て、それを意識してリズムを乱してしまった」とのこと。油断したわけでもガス欠になったわけでもなく、第2戦では修正できると言う。

川崎は連戦の初戦を落とす悪いクセを解消できたが、連勝できなければ意味はない。勝って通算成績で千葉に並ぶか、千葉が巻き返すか。注目の第2戦は今日16時5分にティップオフ。