文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

「一つずつ返す」の精神で大逆転勝利を実現

Bリーグ初年度王者の栃木ブレックスは、2シーズン目リーグで開幕から苦戦を続けていたが、それでも1月18日、19日に行われた滋賀レイクスターズ戦に連勝して勝率を5割に戻した。特に第2戦では最大16点差を覆す逆転勝ちを収めている。田臥勇太も「タフな試合でしたけど、誰もあきらめずに最後まで戦って最後まで粘ることができた結果です」と試合を振り返った。

試合の入り方はいつだって大事だが、栃木は開始3分で0-6とリードされスタートダッシュに失敗した。「出だしから全部完璧にやるというのは本当に難しいことなんです」と田臥も言う。

その後、第3クォーターにはビハインドが16点にまで広がった。16点というのは簡単に追いつける点差ではないし、心が折れてもおかしくはない。それでも「そこでパニックになったり、ネガティブになったり弱気になったりせずに、一つずつ返していきました」と田臥が言うように、栃木は強靭な精神力でリカバーしていった。

荒れた試合を勝ち切り「良いレッスンになった」

「上手くいかない時こそ、みんなが同じ方向をどれだけ向いて、冷静にスマートにやっていけるかというのはすごく大事なこと」と田臥。スマートという言葉が出たが、16点もの差が開いた要因として、審判と戦ってしまった側面があった。審判の笛に納得がいかず、安齋竜三ヘッドコーチがベンチテクニカルをとられ、竹内公輔もテクニカルファウルをコールされた。会場にも険悪な雰囲気が漂っていた。

「ファンの方も試合の状況でテンションのアップダウンは当然あったと思うんですけど」と田臥はそのシーンを苦笑とともにそのシーンを思い出し、「それでも一緒に冷静になって、最後まで勝負どころで声を出してくれて後押ししてくれたので」と、会場一体の熱気を持ちながらも『スマートに』勝ち切った戦いを振り返る。

結果として怒涛の反撃を見せて1点差で勝ち切った試合を田臥は「良いレッスンになった」と総括した。安齋コーチも「ファンの方たちに勝たせてもらった1勝」と表現したこの試合、田臥も同じ感覚を持っている。「平日にもかかわらず集まってくれたファンの方の後押しがあって、ああいう形にできた部分も本当にあったと思うので、感謝の気持ちでいっぱいです」

勝率5割も最下位という現実に「引き締まる思い」

シーズンの半分を消化し、ようやく15勝15敗と勝率5割に。それでもチャンピオンシップ進出までの道のりはまだ遠い。「勝率は5割ですけど、最下位ですからね。まだまだこれからだと思います」と田臥も言うように、他地区であれば2位か3位の成績だが、東地区では勝率5割でも最下位なのだ。

「もう本当に一つでも多く勝っていかないといけないというマインドだけです。あらためて引き締まる思いですね」と連勝の余韻に浸るのではなく、勝って兜の緒を締めた。

今週末は好調のレバンガ北海道、そして翌週は強豪のシーホース三河と強敵との対戦が続く。状況は厳しいが、チームにとっては先々の計算をせずに目の前の試合に集中するだけ。栃木がどこまで巻き返し、最終的にどこに着地するか。田臥のリーダーシップと勝負どころでのプレーに引き続き注目したい。