過去の成功例にも目もくれなかったシャック
現役時代に4度の優勝を達成し、引退後にはバスケットボール殿堂入りを果たしたシャキール・オニール。NBA史上最高のセンターの一人と呼ばれるシャックの全盛期は、誰がマークについても止められないアンストッパブルな存在だった。だが、歴代最高の選手の一人にも、どうしても克服できなかった弱点があった。言うまでもなく、フリースローのことだ。
その成功率の低さから、試合終盤になるとシャックに故意にファウルを仕掛けてプレーを止める『ハック・ア・シャック』という戦術が生まれた。今でも、『ハック戦術』と呼ばれるこの手法を用いるチームは多い。
そんなシャックに、『Business Insider』が一つの疑問をぶつけた。それは、どうして現役時代に下手投げのフリースローを試さなかったのか、というものだった。リック・バリー、ウィルト・チェンバレンなど下手投げでフリースロー成功率が改善した例は存在する。オーバーハンドより下手投げの方がボールにスピンがかかり、バックボードにボールが当たった後でリム内に収まりやすい、というデータもある。
こう問われたシャックは開口一番「つまらないから」と答えた。
もっとも、彼なりの理由もある。「成功例があるというだけで、誰にでもできるわけではない」というのが彼なりに導きだした結論だ。それに、フリースローが下手だったからこその『メリット』もあったと語る。
「想像してくれよ。俺がステフ・カリーみたいにフリースローを決めたら、もっともっとヤバい選手だったはずだ。マイケル・ジョーダンやウィルト・チェンバレンを超えて、史上最高の選手になっていたと思う。でも、弱点があったおかげで謙虚なままでいられたんだ」
インタビューの最後、最近フリースローを打ったことがあるかを聞かれたシャックは「もう4年は打っていないかな。引退したからね」と答えた。
本当にマイケル・ジョーダンを超えたかどうかは分からないが、ただでさえ歴代最高センターの一人であるシャックが弱点を克服していたら、レジェンドの一言では表せない存在になっていたはず。ただ、分かりやすい欠陥を抱えたままキャリアを送ったのもシャックの選択だ。今の『愛されキャラ』に通ずるのであれば、それもまた良かったのだろう。