ケガを抱えた彼を信頼し、ドラフト全体3位指名
今でこそセブンティシクサーズで不動のセンターとして活躍するジョエル・エンビードだが、NBAドラフトにエントリーした際には、指名されなくてもおかしくはなかった。
カンザス大学時代からケガに苛まれ続け、ドラフト時期にも足を痛めていた。指名したところでデビューがいつになるか、そもそも実現するかどうかさえ分からない。そんなコンディションにあったエンビードの指名に踏み切ったのが、当時シクサーズのGMだったサム・ヒンキーだ。
2014年ドラフト全体3位で指名されたエンビードは、デビューまで2年を要した。ようやく昨シーズンからプロとして試合に出場できるようになったが、もしヒンキーがエンビードのケガを大きなリスクと考えていたら、NBA選手になる機会を得られていなかったかもしれない。
結果として、ヒンキーは大きな賭けに勝った。エンビードは昨シーズンわずか31試合の出場に留まるも、平均20.2得点、7.8リバウンドを記録し、そのポテンシャルの高さを発揮。今シーズンは開幕から大車輪の活躍を見せ、好条件での延長契約を勝ち取った。しかし、エンビードに最高の舞台を用意したヒンキーは、2016年4月、つまりエンビードが今の活躍をし始める前の時点でシクサーズのGMを辞任している。
『NBA.com』とのインタビューで、今もヒンキーと連絡を取り合っているかを聞かれたエンビードは「たまにメールで連絡を取るし、話してもいるよ。僕をドラフトで指名してくれたのは彼で、自分が健康な状態に回復するよう全力を尽くしてくれた人だから」と答えている。
恩人ヒンキーが球団の職を失ったことを気にかけているエンビードはこう語る。「彼が仕事を失うことになった原因は俺にあると思っている。だって2年もデビューできなかったわけだから。彼には大きな貸しがある」
図抜けた才能の持ち主であっても、チャンス、あるいはタイミングに恵まれなければ、陽の目を浴びることなく消えていく。それがNBAという世界だ。エンビードは自分を守ってくれるフロントに恵まれ、チャンスを与えられ、それをモノにした。ヒンキーにとっても、エンビードがコートで躍動している姿を見るのは感慨深いだろう。エンビードにできる最高の恩返しは、シクサーズの優勝に貢献し、NBAのトッププレーヤーになることだ。