文=丸山素行 写真=野口岳彦

ハイスコアゲームの大接戦、劇的な結末

金曜ナイトゲームの川崎ブレイブサンダースvsシーホース三河。NBLラストシーズンのファイナルと同じ、屈指の好カードとなった両者の対戦は期待に違わぬハイレベルな点の取り合いとなった。残り1.6秒で放った比江島慎の劇的な3ポイントシュートにより、三河が104-99という超乱打戦点を制した。

先手を取ったのは三河だった。桜木ジェイアールが1on1から得点を量産してインサイドを支配。ダブルチームに来た際には、最後までシュートを打つ素振りを見せ、後出しでパスをさばく余裕を見せる。ディフェンスでも篠山竜青に前線から激しいプレッシャーをかけ続けるなど川崎から6つのターンオーバーを誘発。桜木とダニエル・オルトンがともに8得点とインサイドで優位を作った三河が第1クォーターを終えて29-20とリードした。

それでも川崎は辻直人とニック・ファジーカスがエースの働きを見せ、長谷川技が要所で3ポイントシュートを沈め、必死に食らい付く。第2クォーターで盛り返し、第3クォーターでは30-30と一歩も引かずに打ち合い、74-79と5点ビハインドで最終クォーターを迎えた。

ここも一進一退の攻防が続くが、残り2分半で辻がこの日6本目の3ポイントシュートを決めて95-95の同点に追いつく。ここから川崎が一時は逆転に成功するが、比江島がフリースローを2本沈めて残り42秒で99-99と再び同点に。

三河はこの最終盤で全員が集中したディフェンスを披露する。ズレを作られ桜木がガードの藤井祐眞につくことになったが、桜木はプレッシャーを与えドリブルでの打開を許さない。他の4人はディナイでパスコースを与えず、最終的にジョシュ・デービスに苦し紛れのシュートを打たせてポゼッションを奪取した。

残り時間は15秒、三河は比江島にボールを託す。比江島はゆっくりとボールを運び時計を進ませると、残り1.6秒でマークにつく辻の意表を突く3ポイントシュートを沈め、激戦に終止符を打った。

両チームとも指揮官が相手を「さすが」と称える

勝利した三河の鈴木貴美一ヘッドコーチは「我々もしっかりスカウティングして挑んだのですが、さすが川崎さんという感じでした」と試合を振り返る。執拗にインサイドを攻め、そこからのインサイドアウトも効果的に決まった時点で『三河のゲーム』となったはずが、それでも最後まで粘った川崎の戦いぶりを称えた。

その点で「もう少し良いディフェンスができるように頑張りたい」と今シーズンワーストの99点を奪われたディフェンスを課題に挙げた。

大接戦を制す3ポイントシュートを含め23得点を挙げた比江島は、「スリーを打つと決めてました」と最後の場面を振り返る。「シュートタッチは良いと自分で判断し、中にいってミスするより打ち切ろうと思っていました。ファールがかさんでいたんですけど、ファウルをもらうよりは自分のシュートタッチを信じて思い切り打ちました」

足りなかった「もう少しのディフェンスの踏ん張り」

敗れた川崎の北卓也ヘッドコーチは「スタートが少し劣勢になりましたけど、選手が非常に頑張ってくれて、最後は分からないくらいの試合にはなりました。残念ながら負けてしまったということで非常に悔しいです」と肩を落とした。

「プラン通りのことはある程度はできたんですけど、そこでのもう少しのディフェンスの踏ん張りというか、ハードさがないと難しいかなと思いました。さすが三河さんだなという感想です」と、こちらもディフェンスの課題を指摘しつつ、相手の戦いぶりを称えた。

6本の3ポイントシュートを含むシーズンハイの26得点を挙げた辻は「今日の試合は今まで練習してきたピック&ロールからのスリーもそうですし、アシストもそうですし、今シーズンに入って一番良くできたという実感はあります」と手応えをつかんだ様子。

それでも比江島に決勝シュートを許し、「あの場面で決められたのは僕の責任なので」と表情は固かった。

両チームともに3ポイントシュートの成功率が50%を超え、フィールドゴールの成功率も60%を超える超ハイレベルな点の取り合いは三河に軍配が上がった。両チーム合わせて203点という高い得点力が際立ったが、この後に行われる第2戦では両ヘッドコーチが課題に挙げたディフェンス面がカギとなりそうだ。