文・写真=泉誠一

インカレ優勝回数に比例するBリーグへの有望選手輩出割合

大学日本一を決めるインカレ(第69回全日本大学バスケットボール選手権大会)が、来週11月20日に東京都内で開幕する。

3連覇中の筑波大学は、アルバルク東京入りしたエースの馬場雄大が抜けた影響もあり、関東大学リーグは5位(前年優勝)と苦戦を強いられている。今年の関東大学リーグは開幕3戦目で全勝も全敗チームもいなくなる、希に見る混戦状態であった。その混戦を抜け出して優勝したのが拓殖大学である。川崎ブレイブサンダースの北卓也ヘッドコーチの母校であり、藤井祐眞、長谷川技、ジュフ・バンバの3人がOBとして活躍している。関東大学リーグを制したチームが日本一に近い存在であり、過去68回を数える日本一決定戦を振り返っても優勝チームは関東勢しかいない。ゆえに、第1シードを確保した拓殖大学が今年の優勝候補筆頭となる。

おおまかに15年前まで遡れば、現在Bリーグで活躍する多くの選手を集約できる。ちょうど15年前は、五十嵐圭(新潟/中央大学)ら1980年生まれの選手たちが4年生として活躍した年。そこから現在までの15大会を振り返ると、優勝したのは6チームしかいなかった。東海大学の4回を筆頭に、青山学院大学と筑波大学が3回、日本大学と慶應義塾大学が2回、そして専修大学の1回である。

インカレ優勝回数に比例するように、現B1選手の出身校No.1は東海大学であり、26人のOBが活躍中だ。東海大学は18クラブ中7割を占める13クラブに卒業生を送り込んでおり、中でもアルバルク東京は4人(竹内譲次、田中大貴、ザック・バランスキー、小島元基)、琉球ゴールデンキングスは3人(石崎巧、古川孝敏、須田侑太郎)と多く、その他のクラブでも複数の選手が在籍する人気ぶり。2番手以降も優勝回数に準じており、青山学院大学の20人、筑波大学の11人と続く。

今年は出足が早いと予想される特別指定選手たち

昨シーズン、在学中ながら特別指定選手としてB1を経験した杉浦佑成(SR渋谷/筑波大学)と森井健太(新潟/早稲田大学)が、大学バスケ最後の大会に臨む。B2まで範囲を広げれば、野﨑零也(FE名古屋/白鴎大学4年)、柿内輝心(熊本/中央大学4年)、永田渉(岩手/明治大学1年)もインカレ出場組だ。彼らの去就も楽しみで、大きくなって戻って来てくれることをファンは期待しているだろう。

これまでは年明けすぐに行われていた天皇杯だが、今大会からフォーマットが変わり、来週末(11月25日、26日)には3次ラウンドが行われる。残念ながら、Bリーグ以外のカテゴリーは全滅しており、 大学生たちにとってはインカレが引退試合となる。それにより、今シーズンの特別指定選手やプロ契約を果たす新卒ルーキーの出足が早いと予想される。大阪教育大学4年の土屋アリスター時生は、昨シーズンと同じく西宮ストークスと特別指定選手としてすでに契約をした。インカレが終われば、さらに賑やかになりそうだ。

B1に属する選手の出身校を見ると、関東と関西の大学でほぼ占められている。今年のインカレ出場校の中で、それ以外の地域からB1選手を輩出しているのは唯一、川崎のルーキー小澤智将の東海大学九州だけだった。その東海大学九州には196cmのスモールフォワード、林翔太郎に注目していただきたい。まだ線は細いがスピードがあり、Bリーグでも見てみたい選手の一人だ。期待値が高いのが明治大学の齋藤拓実である。172cmのポイントガードだが、切れ味鋭いドライブから相手のブロックをかわすダブルクラッチでスコアを上げていく姿は、見ている人たちを魅了している。シーホース三河の比江島慎も「映像を見ました」と一目置いており、千葉ジェッツの富樫勇樹とのマッチアップが今から見たい逸材だ。全国各地に点在するBリーグクラブだけに、関東や関西だけではなく地元選手をプロとして迎え、将来のエースとして育ててもらいたい。

将来のBリーガーの『見本市』とも言える大学日本一決定戦。ヘッドコーチの出身校や選手自身の出身地、各クラブの足りないポジションなどを掛け合わせながら、各クラブのファンの方々もどの選手に来てほしいかを考える楽しい季節がやってきた。