グリズリーズ

伝統とトレンドを融合させたコンビ

グリズリーズ再建の軸となるジャ・モーラントとジェイレン・ジャクソンjr.は、派手さよりも堅実さを主眼に置いたプレーで、グリズリーズの伝統と現代バスケのトレンドを融合させるようなコンビとして、着実に成長を続けています。

2年目となったジャクソンの最大の特徴は3ポイントシュートの成功率が40%を上回ることで、そのシュート力への信頼は高く、チームとしてもオフボールスクリーンでジャクソンをフリーにして打たせるパターンも使ってきます。シュートの上手いビッグマンが珍しくない時代ですが、スクリーナーを用意されるビッグマンは非常に珍しく、オフボールで大きく動いた後でも正確なシュートを打てるシューターと同じような使い方をされています。

ジャクソンの良さは単にシュートが上手いのではなく、滑らかなドライブからのフィニッシュも持っていること。インサイドでのビッグマンらしいターンシュートも含めてすべての決定率が高く、また「どのプレーが効率的に決まるか」を判断したプレーチョイスができます。若手とは思えないスムーズさと判断力が、堅実なプレースタイルを支えています。

そして、ジャクソンの確率の高いプレーを生み出しているのがモーラントによるゲームメークで、こちらもルーキーとは思えない堅実さが光ります。モーラント最大の特徴は「あまり目立たないこと」。豪快なダンクシュートも見せる高い身体能力とスキルを持ち合わせながら、がむしゃらに自分で行くシーンはほとんどなく、パスを回してチームメートにチャンスを作り出します。リーグの中で自分の立ち位置を証明しなければいけないルーキーにもかかわらず「余力を残したプレー」をしているのが印象的です。

ただし、モーラントは手を抜いているわけではありません。特に試合終盤の勝負どころになると途端に自分で攻めていくプレーが増えます。試合の多くをチームメートが快適にプレーできるようにゲームメークしながら、最後は自分で試合を決めに行くのはすでに実績のあるベテランスター選手のようです。

モーラントのアシストは前後半で大きな違いはありませんが、平均得点は前半が7点に満たないのに対し後半は11点を超えてきます。フィールドゴール成功率も50%を超えており、試合終盤に支配力を増してくる勝負強さも持ち合わせています。20歳の選手が試合を通じて慌てることなくゲームメークできるだけでも素晴らしいのに、チームを勝利に導くために明確な結果を示しているのは驚異的です。

一方で課題になっているのがリバウンドで、グリズリーズはセカンドチャンスでの失点が4番目に多く、ディフェンスリバウンドを取り切れないことがあります。特にジャクソンはビッグマンながら5本しか取れておらず、またゴール下でのファウルが多いことで結果的にプレータイムが短くなるなど、堅実なプレースタイルとは違って若さも見せています。

ジャクソンとモーラントの若きコンビは、堅実かつ勝負強いプレースタイルでグリズリーズの伝統的な特徴を引き継いでいます。チームは負け越している状況ではありますが、西カンファレンスは8位の座が勝率5割を下回る争いになっており、プレーオフ進出を狙える順位につけています。12月以降は13勝9敗と勝ち越していることもあり、若きコンビの成長がそのままチームの成長に直結するだけに、2人には大きな期待がかかっています。