「ディフェンスの遂行力」で川崎の連勝をストップ
1月5日、富山グラウジーズは敵地で川崎ブレイブサンダースに88-56で圧勝し、前日に敗れた雪辱を果たした。
相手は12月末にマティアス・カルファニ、篠山竜青と主力が相次いで大ケガを負い、その穴を埋めるのに試行錯誤の段階ではあるが、富山も大黒柱の宇都直輝が12月14日の試合で全治6週間から8週間の負傷で戦線離脱と万全の状態ではない。そんな状況の中、文句なしの試合内容で川崎の連勝を16で止めたことは富山にとって大きな弾みとなる。
宇都に代わって先発を務める司令塔の阿部友和は、勝因についてこう振り返る。「12月25日のホームでの川崎戦では、自分たちのバスケットボールを第3クォーターの半分まではできていましたが、最後にまくられてオーバータイムで負けてしまいました。昨日は、自分たちのディフェンスができていなかった。しかし、今日は自分たちのディフェンスをもう1回やろうとチームで声をかけあい、それができました。オフェンスより、ディフェンスの遂行力が高かったことによる勝利でした」
抜群の瞬発力とサイズを兼ね備えた強力ドライブなど、個で局面を打開できる宇都がいないことで、富山はよりボールをシェアしチームで攻めることが求められる。阿部も「僕自身については、よりチームをコントロールする方向に回っています。その時々で、調子が良い選手にしっかりボールを集め、チームを落ち着かせることが仕事です」と、強く意識している。
「やるべきディフェンスをやってリズムを作れるか」
いよいよ明日から天皇杯のファイナルラウンドが始まる。富山にとってはチーム初のファイナルラウンド進出だが、阿部にとっては千葉ジェッツで連覇を達成した2017年、2018年以来だ。この一発勝負の大舞台に帰ってこられたことに「高揚感はめちゃくちゃあります」と意気込む。
「2度の優勝は本当に忘れられない経験。一発勝負のトーナメントで、リーグ戦とは会場の雰囲気もちょっと違い緊迫したものがあります。その中でプレーするのはすごく緊張感もありながら楽しいです。この舞台に戻ってこられたのはすごくうれしいです」
富山の対戦相手は宇都宮ブレックス。リーグ戦の成績を見れば宇都宮有利の下馬評だが、リーグ戦とトーナメントが別物であることを阿部は身をもって知っている。「最初に優勝したとき、年末に川崎にリーグ戦で連敗したあと、決勝で20点差近く(実際は88-66)で勝ちました」
そして、その番狂わせを起こすための鍵となるのは、やはりディフェンスになると続ける。「相手がどうこうというより、まず、自分たちがやるべきディフェンスをやってリズムを作れるかです。川崎相手にもこういう試合ができるように、今のメンバーでもポテンシャルはあります。ただ、宇都宮は穴がないチームであり、自分たちから仕掛けて崩していかないといけないです」
勝負の世界に絶対はなく、トーナメントには波乱がつきものだ。「何が起こるか分からないので、チャレンジャーの気持ちを忘れないでジャイアントキリングを一発かましたいと思っています」と闘志を燃やす阿部と共に、富山がどんな戦いを繰り広げてくれるのか見逃せない。