カワイ・レナードを失っても勝負強さは変わらず、多彩かつ狡猾に勝利をもぎ取るラプターズ

カワイ・レナードを失っても勝負強さは変わらず、多彩かつ狡猾に勝利をもぎ取るラプターズ

2020/01/08

ラプターズ

バスケIQの高い選手が連動することの強み

昨シーズン王者のラプターズは、オフにカワイ・レナードとダニー・グリーンが移籍。今シーズンになってマルク・ガソルやパスカル・シアカム、ノーマン・パウエルらの主力がケガで離脱して危機的状況にあります。それでも開幕からここまで高勝率をキープしています。さすがにエース格のシアカムが離脱すると攻守に困るシーンも出ていますが、それ以上に優勝チームらしく多彩かつ狡猾さを感じさせるチーム戦術で乗り越えてきています。

プレータイムが38分を超えリーグで最も長くコートにいるカイル・ラウリーは、現在のラプターズを象徴するプレーをしています。オフェンスでは本職のポイントガードとして7.4アシストを記録しながら、離脱したシューターの代役として8.8本の3ポイントシュートアテンプトもあり、選手の組み合わせに応じて複数の役割を受け持ちます。また、ディフェンスではエースガードをチェイスすることもあれば、誰のマークをしているのか分からないほどに大胆なポジションをとってインサイドをカバーし、鋭い読みでリーグ3位の16回のオフェンスチャージを奪っています。

試合の中で変動していく複数の役割を攻守それぞれでしっかりとこなし、その上でチームメートの動きに応じたフォローもしなければいけません。ラプターズでプレーするにはスキルや身体能力だけでなく、チーム戦術への理解と適切な判断力が求められます。ラウリーのプレータイムは、それを高水準でこなすことへの高い信頼が数字に表れたものです。

複合的な要素を持つチーム戦術は数字の上でも理解しにくく、ラプターズのディフェンスレーティングはリーグで2番目に良いにもかかわらず、リーグ最多の11.8本のオフェンスリバウンドを奪われています。つまり、リバウンドをキープできないのに守れるチーム、です。ケガ人続出でインサイドの層が薄くなり、ゴール下が弱くなったと思われますが、その一方でペイント内失点42.2点はリーグで3番目に少なく、「リバウンドは奪われるけどゴール下は守れる」という状況です。

またオフェンスでは試合の前半はレーティングで21位と悪いのですが、後半に限るとリーグ6位と変貌します。ラプターズのフィールドゴール成功率はリーグ19位の45.3%しかなく、強引でもシュートを決めていける戦力は持ち合わせていないのですが、多彩な攻撃手段と試合の中でディフェンスの効果的な攻略手段を見つけ出し、鍛えられた判断力で実行していきます。そのため前半の得失点差は+1.4と平凡ながら、後半は+4.3とエリートチームに様変わりします。

ラウリーに次いで多様な役割を任せられているのが3年目のOG・アヌノビーで、試合開始時点ではセンターを守っていたと思えば、次々にマークマンが変更され、終盤にはポイントガードに密着してパスの出所を抑える役割をしている試合もありました。オフェンスでもコーナーでのシューター役からドライブで切り崩したり、ハイポストでの中継役になるなど目まぐるしく役割が変化していきます。

しかし、レナードの後任として期待されながら平均得点は10.9点に留まっており、ラウリーと違い複数の役割を完璧にこなしているわけではありません。それでもヘッドコーチのニック・ナースはアヌノビーを信頼して起用し続けており、チーム戦術への理解と判断力を重視していることが分かります。

チーム史上最大の30点差からの大逆転を達成したマーベリックス戦では、第4クォーターにベンチメンバー+ラウリーでフルコートのゾーンプレスディフェンスを披露するなど、選手の個性も上手く生かした複数の奥の手を備えてもいそうです。試合に勝つためには圧倒的な破壊力を持つ戦力も大切ですが、ラプターズの戦いぶりは攻守にわたって多彩かつ柔軟に対応していくことも重要だと感じさせてくれます。

ファイナルMVPのレナードが移籍したことで圧倒的な強さは感じないラプターズですが、勝利をもたらすロジックは変わらず存在しています。その一方で選手に求める判断力の水準が高すぎるせいか、ラウリーだけでなく長くチームにいる選手を重用しすぎる面があり、開幕当初は7人ローテで戦っており、これがケガに繋がった可能性も否定できません。

チーム内の共通理解が進んだからか、最近は多くの選手を起用するようになってきましたが、ラウリーの長すぎるプレータイムは不安要素にもなっています。チーム戦術は深まっているだけに、後半戦は個人の力をどこまで伸ばせるかがキーファクターになりそうです。

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