横地、エースの自覚「自分で行く考えしかなかった」
ウインターカップ2回戦にして優勝候補同士の激突となった福岡大学附属大濠(福岡)と開志国際(新潟)は、期待を裏切らない熱戦となった。
開志国際は立ち上がりから大濠のキーマンとなる横地聖真にトリプルチームを仕掛ける先制パンチ。大濠も202cmの留学生プレーヤー、ジョフ・ユセフに徹底的な対策を準備しており、マークする木林優が簡単にはパスを入れさせず、ゴール下に運ばれても横地や西田公陽がすぐに寄せて囲い込んだ。
両チームの得点源となる横地、ユセフともにタフショットを強いられる状況で、違いを生んだのは大濠の1年生、岩下准平だ。シュートタッチの悪かった平松克樹に代わって投入された岩下は、第1クォーターを締める同点ブザースリーで勢いに乗った。初戦の県立海部(徳島)戦で結果を出せなかった岩下は、この試合後の片峯聡太コーチの「思い切ってシュートを打てない選手がいた」との言葉に奮起。1年生らしく攻守にアグレッシブなプレーを見せ、先輩たちが作り出すチャンスを受けて迷わず3ポイントシュートを放って決めていく。岩下は3ポイントシュート10本中7本成功。3ポイントシュートを狙ってファウルを受け、フリースローも3本すべて沈めるなど24得点の大活躍を見せた。
大濠はオフェンスでもディフェンスでも遂行度が高く、ソツのないプレーを重ねていく。オフェンスでは良いスペーシングからパスを回し、タフショットしか打てないシチュエーションは横地に託すにしても、他の選手はオープンなシュートを打っていた。ディフェンスではジョフにタフショットを何本も決められながらも、イージーシュートのチャンスは与えず、勢いに乗らせない。
強引に仕掛けた横地のクラッチシュートで決着
こうして10点前後のリードをキープして、66-58とリードして最終クォーターを迎えた大濠だが、ここからはファウルトラブルに悩まされる。木林が最終クォーター1分が経過した時点で個人4つ目のファウルを犯し、開始3分でチームファウルは3に到達。オープンショットのチャンスが作れなくても、強引にリングに向かう開志国際の勢いに押されるようになる。
残り2分半、高木拓海にフローターを沈められて同点とされるも、直後に鋭く囲い込むディフェンスからボール奪取に成功、ジョフのアンスポーツマンライクファウルを誘って再びリードを奪う。それでも開志国際の勢いは止まらず、残り1分にセカンドチャンスから板澤明日起の3ポイントシュートを浴びて75-76と逆転を許した。
片峯コーチは「次で2点を取ればいいし、取れなかったとしてもセットプレーは用意していた」と冷静さを保っていたと語る。だが、ここでボールを持った横地は冷静ではなかった。それがチームにとっては吉と出た。
横地は振り返る。「決められた瞬間、ヒヤッとしました。ずっとリードしてたのにヤバいって。先生はパスしろって言ってたんですけど、俺はもう自分で行く考えしかなかったです。それでバスカンが取れて最高でした」
自らのポストアップから強引に仕掛けた横地が、2人がかりのディフェンスを打ち破ってのジャンプシュートでバスケット・カウントをもぎ取る。これが決定打となり、ファウルゲームもしのいだ大濠が82-76で大混戦を制した。
スーパールーキー岩下「思い切って打てました」
横地はこう続ける。「前半思ったように得点できなくて、1年生に頑張らせてしまって、自分がもっとやらなきゃいけないと思っていました。あそこでバスカンを決めたのは今後の自信になります。あれでチームが気持ちをつかんで勢いが上がったので、あの一対一は良かったです」
30得点の横地と並ぶもう一人の主役、24得点を記録した1年生の岩下は、「最初は少し緊張しましたが、自分の武器である3ポイントシュートを思い切って打てました。克樹さんの調子が良くない時は後輩の自分が出てチームを支えたい。今日のプレーは自信になりました」と語る。U16福岡県チームでの国体優勝に貢献し、U16日本代表にも名を連ねる岩下は、今大会の注目の存在となりそうだ。
そんな選手たちに対して片峯コーチは「自信になったと思いますが、過信にならないように気を付けながら、ですね」と制するが、コーチ自身も「でも、このチームはもっと強くなると確信が持てました」と十分すぎるほどの手応えを得られた様子。トーナメントを勝ち抜くには、こういう節目の試合で良い勝ち方をすることが非常に大事。開志国際という大きなヤマを乗り越えて、大濠は勢いに乗った。