「やれないことはないと思っている」
12月21日、千葉ジェッツは横浜ビー・コルセアーズと対戦し、延長戦の末に勝利した。東海大2年の大倉颯太は、特別指定選手として初めて登録された試合でBリーグデビューを飾った。
第2クォーター残り1分48秒、44-29とリードした場面で藤永佳昭に代わりコートに立った大倉は、緊張を微塵も感じさせないプレーを見せ、残り11秒にはピックから3ポイントシュートを沈めて初得点を記録した。
「大野(篤史)さんにも出すぞって言ってもらっていたので、もちろん準備はしていました。こういう機会を作ってくれたチームメートやスタッフの皆さんに感謝したい」と、堂々とした口調で大倉は試合を振り返った。
その後、試合は延長までもつれる接戦となり、大倉に出番は訪れなかった。それでも大倉は「あの2分では何も分からなかったですけど、やれないことはないと思っているので。いろんなことに積極的に挑戦していきたい」と、確かな手応えを得たようだ。
もともと千葉は大倉を練習生として迎え入れたが、西村文男が戦線離脱、富樫勇樹もケガを抱えながらのプレーを強いられている状況で、大倉の起用を決めたと大野ヘッドコーチは語る。
指揮官も絶賛「肝っ玉座ってるな」
それでも、多くの特別指定選手が十分なプレータイムを得られない状況で、セーフティーリードとは言えない場面で大倉を起用したことは勇気のいる判断なはず。そこに大倉への信頼が垣間見えるが、地元が同じという彼のプレーをずっと見てきたことを大野コーチは明かした。
「地元が同じでミニバスぐらいから知ってます。彼が全中で優勝した時も見に行って。注目というよりは応援していました」。同じ石川県出身、さらに言えば布水中の後輩でもある大倉への称賛は続く。「バスケットをよく知っているというのが第一印象で、ポテンシャルもすごく良いです。今日もシュートばかりフォーカスされますけど、その前にギャビンに出したパスも、なかなか大学生には出せないようなパスを出していたので、見ててうれしくなりますよね(笑)。スクリーンでしっかりビッグマンを見て、3ポイントをチョイスできる、あのメンタリティが好きですね。肝っ玉が座ってるな、って思いましたよ」
結果的に2分弱のプレータイムに留まった理由を「いきなり後半の苦しいところで颯太に出ろと言っても、彼に酷かなと思ったので」と、これから出場機会が増えることを予感させた。
東海大で1年生からスタートに定着し、チームの主力となった大倉には、多くのチームがオファーを出したと予想される。「もちろん成長できる場所というのは感じていて、大野さんはすごく良いヘッドコーチだと聞いていたので、決断はしやすかったです」と大倉は語り、大野コーチの存在も決断の理由の一つに入っていたようだ。
富樫「チームの助けになってほしい」
大倉は以前から富樫のピック&ロールのプレーを参考にしていると話していた。「もちろん毎試合見ています(笑)。勇樹さんもいて、僕は絶対に成長できる環境だなと思った」と、富樫の存在が千葉加入の背中を押したことは容易に想像ができる。
そのあこがれの富樫の目に、特別指定選手のプレーはどのように映ったのか。「大学生が練習生としてプロのチームに入って、プレーセットも分からなければみんなとの交流もない中で気まずいと思います。それでいきなり出ることになりましたが、練習でも堂々とプレーしてましたし、何も言うことはないです」
さらに「プロに入ってもいいんじゃないかと思う選手の一人でもあったので、ビックリとかもないです。練習生としてうまくなってほしいというか、すでに活躍できる選手なんじゃないかなと思うので、チームの助けになってほしい」と、最高級の賛辞を贈った。
そもそも大倉とは「高校生の時から知っていて、ウインターカップで話したり、大学に入ってもずっと連絡を取り合ってご飯を食べにいったりする仲です」と旧知の仲だという。
練習生から特別指定選手へと昇格し、いきなり結果を残した大倉。シーホース三河の岡田侑大のように、大学を中退してプロの世界へと飛び込む選択肢もあるが、「オフシーズンでプロを経験することで成長できると思ってこの決断に至りました。これも大学で活躍するために含まれている経験だと思うので、この3カ月弱を濃い時間にして大学にしっかり持ち帰りたい」と、そうした道は考えていないようだ。
いずれは大学に戻る大倉が千葉でプレーできる期間は限られている。それでも指揮官とエースが口を揃えて称賛するほどの選手であれば、今後もコートに立つ機会は必ずやってくるはず。千葉の大倉のプレーに刮目せよ。