2年目のBリーグは明日開幕! 日常から日本バスケットボールのスタンダードを引き上げる『ヘッドコーチの手腕』に注目!

2017/09/28
Bリーグ&国内
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文=泉誠一 写真=B.LEAGUE

新ヘッドコーチが結果を出したアーリーカップ

バスケットを生業とするプロである以上、厳しい練習を行い、強さと勝利を求めるのが最優先事項である。しかしその一方で、プロであるにもかかわらず練習場の使用時間が制限され、思うように自主練習できないなど、環境改善は急務だった。まだまだ理想の環境を手にするクラブは一部かもしれないが、Bリーグがスタートしたことにより少しずつ周りの理解を得ながら整備されている。それを証明したのがアーリーカップであり、ファンを楽しませるに値するしっかりとしたバスケットを披露していた。

B1のうち、9クラブがヘッドコーチを交代して改革に着手。アーリーカップを制したいずれのクラブも、新たな指揮官を迎えたばかりだった。準優勝まで範囲を広げれば、B2勢で争われた東北を含めた4地区8クラブ中、千葉ジェッツを除く7つのクラブがヘッドコーチを新しく迎えていた。客観的にチームを評価し、明確な改善点を挙げられたことでチームが上向いたのだろう。幸先の良いスタートは自信となり、新ヘッドコーチとの信頼関係も深くなったはずだ。

GMが明文化されているクラブが少ない以上、その責任のすべてがヘッドコーチの双肩に懸かっている。だからこそ一切の妥協を許さない練習を強い、徹底した準備を行っている今シーズンは質の高いゲームが増えると期待できそうだ。

新たなヘッドコーチがチームのポテンシャルを引き出す

富山グラウジーズのミオドラグ・ライコビッチヘッドコーチ、アルバルク東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチはともにFIBAランキング3位のバスケット大国であるセルビアからやって来た『伝道師』である。これまで以上に厳しい練習を課しており、「試合の方が楽」とA東京のエース、田中大貴が漏らすほどだ。

これまでの富山は、『練習をしないチーム』という話をチーム内外から耳にしてきた。しかし、ライコビッチが来たことで状況は一変し、宇都直輝は「ムチャクチャ厳しい」とそのイケメンをしかめていた。少なからずタレントは揃っており、練習さえすれば簡単に上向くポテンシャルがもともとあった。ようやく本来の力が発揮され始めただけであり、驚くような話ではない。

B2の秋田ノーザンハピネッツもスペイン人のジョゼップ・クラロス・カナルスヘッドコーチが指揮し、アーリーカップではぶっちぎりの勝利を果たしている。B1復帰へ向けて早くも視界良好と言えよう。

昨シーズン西地区最下位の滋賀レイクスターズは、ショーン・デニスヘッドコーチに再建を託した。デニスヘッドコーチはオーストラリアNBLを経て、昨シーズンは栃木ブレックスのアシスタントコーチとして優勝に貢献している。関西アーリーカップ決勝では、外国籍選手が1人しかいない中でも琉球ゴールデンキングスと対等に戦い、敗れたとはいえファンにとっては希望を持てる内容であった。

40分間フルコートでプレーするスタイルを課すデニスヘッドコーチは、滋賀の勝利によって日本全体のレベルを引き上げようと画策しており、こんな話をしていた。

「日本の選手はスピードとアジリティ(俊敏性)があるので、フルコートでのプレースタイルが合っている。このスタイルが日本のスタンダードになってくるだろう。ルカや(フリオ)ラマスさん(日本代表ヘッドコーチ)、そして佐々も同じことを考えており、我々で日本のレベルやスタイルを確立していき、国際舞台でも戦っていけるようにしていきたい」

名前が挙がった琉球の佐々宜央ヘッドコーチは、これまで多くの名将たちに師事してきた。日本代表ではパヴィチェヴィッチや長谷川健志(現栃木ヘッドコーチ)の右腕として重責を担い、栃木時代には2006年日本で開催された世界選手権(現FIBAワールドカップ)でリトアニア代表を率い、アメリカ代表を破ったアンタナス・シレイカの下で学び、世界基準のコーチングを身につけた持ち主である。チーム一員である石崎巧とは東海大学時代の同級生であり、その時から選手とコーチの関係が続いている。ヘッドコーチとしてはルーキーだが、希有な経験をしており、それをどう自分なりに咀嚼して指揮するのかが楽しみである。

ヘッドコーチ対決に見る開幕戦

今週末に迫ったBリーグ開幕戦。ヘッドコーチの対決からその見どころを超簡単にオススメしよう。琉球(佐々ヘッドコーチ)vsSR渋谷(勝久ジェフリーヘッドコーチ)、横浜(古田悟ヘッドコーチ)vs滋賀(デニスヘッドコーチ)はいずれも新ヘッドコーチ同士の対戦であり、お披露目試合となる。

栃木vs三河はかつて日本代表を指揮した日本人ヘッドコーチによる対決。特に三河は、「速いバスケットに取り組んでいる」と比江島慎が話していたように、23シーズン目を迎える鈴木貴美一ヘッドコーチは新しいスタイルに着手。対する長谷川ヘッドコーチは、青山学院大学のヘッドコーチ時代は天皇杯でトップリーグチームへのアップセットに挑み続けていた根っからのチャレンジャー。勝利に向かう2人の采配は注目である。

ともに日本体育大、パナソニック(旧JBLチーム)をベースにした指揮官である西宮(天日謙作コーチ)vs千葉(大野篤史ヘッドコーチ)は、往年のバスケファンにとっても興味深い対戦だ。

プロであり、センスがある選手を集めたBリーグでは、練習さえすればいくらでも向上できる伸びしろがある。これまでは学生時代に培った貯金だけで惰性的にやってる選手が多く見られ、期待以上の伸びを感じられずにいた。しかし、本格的なプロになったことで事態はようやく好転し始めている。

磨けば光る原石ばかり。ヘッドコーチがなりふり構わず強化し、シーズンを通して信念を貫き通すことができたチームが、自ずと優勝争いに絡んでくるだろう。

今シーズンはファンの皆さんも、昨シーズンよりワンランク上の基準で見ていただき、不甲斐ないプレーにはブーイングという愛のムチで選手たちを叱咤してほしい。東京オリンピックへの出場を懸けたFIBAワールドカップ予選がシーズン中にある以上、Bリーグを通してレベルアップしてもらわなければならないのだから──。