女子日本代表

3ポイントシュート攻勢と粘り強いディフェンス

マレーシアで開催された『東京オリンピック プレクオリファイングトーナメント』の大会最終日、5人制バスケットボールの女子日本代表はオーストラリアと対戦した。

9月に行われたアジアカップの準決勝でも両チームは対戦し、日本が勝利を収めているが、今回はオリンピック予選。開催国枠で出場を決めている日本は主力の何人かを欠いた一方で、オーストラリアはアジアカップには参戦しなかったWNBA組が参加。特にリオ五輪でも日本を苦しめた身長203cmのリズ・キャンベージがインサイドで圧倒的な存在感を見せた。

そのキャンベージにいきなりゴール下の得点を奪われて先制されるも、マッチアップする渡嘉敷来夢がすぐさまスピードでキャンベージをかわして得点を奪い返す。その後は日本の3ポイントシュート攻勢がスタート。第1クォーター、速い展開から積極的に放った3ポイントシュートが13本中8本決まり、30-16と大量リードを奪った。

オーストラリアも負けていない。キャンベージに2人、3人がかりで止めに行くのを見て、193cmのエジ・マグベゴールを使いインサイドで優位を作り出す。さらにキャンベージにタイトなディフェンスをしていた渡嘉敷がファウルトラブルでベンチに下がることに。それでも代わって入ったオコエ桃仁花が何とか踏ん張る間に、林咲希、吉田亜沙美、宮澤夕貴が3ポイントシュートを沈めてリードを奪い返し、47-34で前半を終えた。

リズ・キャンベージ

リズ・キャンベージ、203cmの脅威

後半もリードを保った日本だが、それでもオーストラリアの圧力に苦しむ時間帯が続く。後半に入るとオーストラリアは3ポイントシュートへの警戒をさらに強め、ドライブでかわしても高さの圧力に負けてレイアップが決まらない。宮澤から渡嘉敷へ抜群のタイミングでハイローのパスが入ったはずが、遅れたはずのキャンベージのブロックの腕が間に合って得点できず。

こうして5点差まで詰められた状況で、再び日本に勢いを与えたのが吉田だった。第3クォーター残り3分40秒に投入されるとすぐ、渡嘉敷へのパスを相手ディフェンスに意識させて宮下希保のコーナースリーをアシスト。ここで膝を気にする素振りを見せたものの、さらにギアを上げる。渡嘉敷からボールを託されるとリムまで一直線に突き進んでレイアップを沈め、最後は残り時間がない中でオーストラリアの集中が途切れた隙を突き、素早く持ち上がって正面から3ポイントシュートを沈め、64-53とリードを2桁に広げて第3クォーターを締めた。

最終クォーター、キャンベージが再び猛威を奮う。赤穂ひまわり、本橋のレイアップを余裕十分で叩き落し、攻めに転じてはゴール下を強引にねじ込み、反撃の機運を盛り上げる。しかし、渡嘉敷と宮澤がファウル覚悟で止めに行くようなダブルチームをパワーで押し切って得点した後、おそらくファウルがコールされなかったことで怒り、必要以上の抗議をしてしまう。第2クォーターに続いてテクニカルファウルをコールされた結果、退場となってしまった。

本橋菜子

渡嘉敷がディフェンスで踏ん張り、本橋が突き放す

この時点で64-60と追い詰められていた日本だが、キャンベージさえいなければと、本橋がドライブで切り裂いてレイアップを連続で決め、相手がインサイドをケアすれば思い切りの良い3ポイントシュートを沈めて、続いてはフリースローを決め、さらには赤穂のレイアップをアシストと、多彩な攻めでオーストラリアを突き放す。本橋はこの試合でもチーム最多の16得点を挙げて勝利に貢献した。

キャンベージ不在で窮したオーストラリアはそれまで以上に当たりを激しくすることで流れを変えようとするが、渡嘉敷とのポジション争いでファウルを連続で取られ、日本はフリースローで得点を重ねていく。オーストラリアに反撃する力が残っていなかったわけではないが、日本は付け入る隙を見せなかった。82-69で完勝した日本が、大会を3戦全勝で終えている。

第1クォーターこそ3ポイントシュートが当たったことでリードを得たが、試合を通して見れば3ポイントシュートは39本中14本成功(35.9%)と確率が異常に高かったわけではない。勝因はそれよりも、11個のターンオーバーを誘発し、そこからの得点で15-4、ファストブレイクでの得点で22-4と着実に差を付けたことだ。また相手のフィジカルと高さに苦戦しながらも攻める気持ちを失わなかったことで、15のフリースローを獲得して14本と高確率で沈めたことが差を生み出した。まさに高さの不利をスピードとチームワークで補う日本女子バスケットの勝利だった。

4日で3試合と短期間の大会ではあったが、宮下希保は大事なオーストラリア戦で先発を任されるほど評価を高め、さらには吉田が復活を印象付けるパフォーマンスを見せるなど収穫は多かった。来年の東京オリンピックに向けたメンバーを決める内競争はさらに激しさを増し、それがまたチームを強くしていくに違いない。