ルカ・パヴィチェヴィッチ×恋塚唯、疾走するアルバルク東京の強さを語る(前編)

2019/11/14
Bリーグ&国内
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アルバルク東京

アルバルク東京は直近の2シーズンでBリーグを連覇。ヘッドコーチを務めるルカ・パヴィチェヴィッチの妥協しないスタイルがチームに浸透し、土壇場での勝負強さは他の追随を許さず、特に一発勝負のチャンピオンシップでは盤石の強さを発揮してきた。その強さのベースとなっているのは、チームとフロントがガッチリと噛み合う関係性にある。両輪としてA東京を牽引するパヴィチェヴィッチとGMを務める恋塚唯の対談から、その強さの秘密を探る。

「アルバルクはバスケ以外の面でも国際レベル」

──ルカコーチは2017年夏からA東京の指揮を執っています。日本代表でコーチを務めた後、どのような経緯でこのチームにやって来ることになったのでしょうか。また恋塚GMはルカコーチにオファーを出す際、どんな点を強調したのですか。

恋塚 Bリーグ初年度には、NBL時代からの流れで企業チームから脱却できていない部分もありました。そこに私が入ってクラブのプロ意識を高めていく中、ビジネス部門だけでなくバスケットボール部門もイチから作り上げる必要があると感じていました。選手を含めていろんな人とコミュニケーションを取る中、ルカのバスケットボールへの考え方や経験はもちろんですが、その人柄が決め手になりました。バスケに対して真摯に向き合い、選手が言うように鬼のように厳しい部分がありますが、人間としては本当に人間味に溢れ、優しいオジサンなんです。

ルカ 当初、日本代表の仕事を終えた後はヨーロッパに戻るつもりでした。ただ、オファーを受けた時点でアルバルクについての情報はありました。私はチームとの信頼関係を築くため、ハードワークのできるスタッフ陣、マネージメントされた組織を求めます。アルバルクならそれが可能だ、というのが第一印象ですね。

恋塚 彼に最初に言ったのは「中長期的な視点で一緒にチームを作りたい」ということです。Bリーグが立ち上がり、これからワールドカップとオリンピックを見据えて日本代表も強くしていかないといけない。そしてA東京はBリーグを牽引するチームでありたいし、そうならないといけない。そのために力を貸してほしい、短期的な関係は考えていない、と単刀直入に伝えました。

ルカ 一晩かけて頭の中を整理し、家族や知人に相談して決断しました。アルバルクはバスケットボール以外の面でも国際レベルで通用する組織で、チームとの絆は深い。良い決断ができたと思っています。

アルバルク東京

「チームの成長と勝利という目的は全くブレない」

──チームとフロントは時に意見が噛み合わないこともあるでしょう。最初は特に体制作り、組織作りの面でルカコーチの要求に戸惑うこともあったのではないでしょうか。

恋塚 最初はお互いの距離感をつかむのが大変でした。ルカはヘッドコーチの目線からチームにとって大事なことの100%をこちらに要求します。こちらも100%で向き合いますが、クラブのビジョンやバジェット、日本の慣習などが原因で折り合わないことも多々ありました。それをコミュニケーションをしっかり取ることで解決してきました。彼のすごいところは、最終的には折り合いが取れるところです。引けないところは主張しますが、最終的にはクラブの決定を尊重してくれます。僕も結構強く言うこともある中で、2人の関係性はすごく良いと思っています。

ルカ 特に1年目は選手を変えたり、チームカラーも過去のアルバルクからガラッと変える大きなチャレンジが必要でした。そこでしっかり向き合って話を進められたと思います。それはお互いにこのチームをいかに強くして成功させるか、目的が一致していたからです。

恋塚 お互いに主張してぶつかり合うこともチームを推進させるには必要です。お互いに言いたいことを言っていますが、チームの成長と勝利という目的は全くブレないので、すごくやりがいがあります。私は彼のことを全面的に信頼しているし、こんなに良いパートナーはいないと思っていますよ(笑)。

アルバルク東京

「みんなで乗り切って優勝したことが自信に」

──ルカコーチはこれまでのキャリアでいろんなGMと仕事をしてきました。その中で恋塚さんはどんなタイプのGMだと思いますか?

ルカ 選手としてもコーチとしても多くのGMと接してきましたが、ヨーロッパでは元選手だったりバスケットに長く携わった人がGMになることが多いです。ユイさんはバスケットの世界にずっといたわけではありませんが、大事なのはコーチやスタッフから信頼され、組織全体を見ることができる人。バスケットボールの専門知識があればプラスになりますが、不可欠な資質ではありません。ユイさんはヨーロッパのトップレベルのクラブでも通用するGMだと思います。

恋塚 (照れている)

ルカ 以前、スパーズでヘッドコーチを務めるグレッグ・ポポヴィッチから「ヨーロッパのコーチはなぜ偉そうで、何でも判断できるという感じなのか。我々はただのコーチだ」と言われたことがあります。私も同じ考えで、ヘッドコーチは偉いわけではなく、チームのため、周りの人のために働くだけ。それに、私は目の前の試合に勝つことに集中するので、すべてにおいて視野を広く持つのは簡単ではありません。全体を見渡せるGMがクラブを守ってくれるのは、とても大事なこと。それこそ、コーチとしての私がGMと築いていきたい関係なんです。

──そんな現体制も3シーズン目を迎えました。連覇という成功を収めたからこそクラブには何か変化があると感じていますか?

恋塚 アルバルクは東京をホームとし、トヨタ自動車のバックアップを受けていることもあり、バスケット界を引っ張っていくべきだと思っています。だからこそ短期的ではなく継続的に優勝を狙えるチームを作る上で、ルカのスタイルは適していると判断して取り入れました。実際、彼はアルバルクをBリーグの盟主へと押し上げてくれています。ウチには代表選手がたくさんいてチームから離れることも多いですし、ケガ人が出たり外国籍選手の入れ替えがあったり、スケジュール的に厳しい環境に置かれることもあり、1年中いろんなことが起きます。そこをみんなで乗り切って優勝したことが自信になっています。3年目はチームの熟成により重点を置いた面はあります。ただ、ルカも常に言いますが、毎シーズン違う戦いなので、そこは常にチャレンジャーの気持ちであり、連覇をしていてもそこは変わりません。

ルカ・パヴィチェヴィッチ×恋塚唯、疾走するアルバルク東京の強さを語る(後編)