取材=鈴木健一郎

チケットを売ることが「すべての事業のエンジンになる」

9月8日、東京国際フォーラムで行われた宣伝会議プロモーションフォーラム2017で、Bリーグ事務局長の葦原一正が登壇し、『革命を起こすB.LEAGUEの集客とは~デジタルを活用したマーケティング戦略~』と題したセミナーを行った。

葦原は外資系戦略コンサルティング会社を経て、プロ野球のオリックス・バファローズ、DeNAベイスターズで事業戦略立案やプロモーションを担当してきた。2015年にBリーグに加わり、事務局長としてリーグの屋台骨を支えている。

約200席の会場が満席となったこのセミナーで葦原が語った内容の一部を紹介したい。

参加者がバスケファンではなくてビジネスマンであることを意識して、バスケットボールの競技人口やバスケ界の背景を紹介した後、葦原が言葉に力をこめたのは「リーグの最重要事業はチケットであること」だった。スポンサーやマーチャンダイジング、放映権ではなく、チケットを売ることが「すべての事業のエンジンになる」と説く。

セールスに注力すればまとまった金額が取れるスポンサー収入に頼ってしまいがちだが、チケットを売る努力こそが本質で、ここに力を入れるべきだと葦原は言う。理想はNBAの『シーズンシート至上主義』だ。NBAのチーム平均でチケット収入はスポンサー収入の倍以上。売上規模の差はあれ、これはDリーグでも同じ。ところが日本のスポーツは比率が逆転し、JリーグもBリーグもチケット収入はスポンサー収入の半分程度しかない。これを逆転させるべく、チケットを売る努力をすべきだと葦原は言う。

広告宣伝費として予算を一点投下した『LEDコート』

リーグとして最初に打ち上げた大きな花火が『歴史的開幕戦』だった。地上波の視聴率は5.3%と決して高くはなかったが、性別と年代別で見た場合に、巨人の昨年の開幕戦(プロ野球)、Jリーグの2015年チャンピオンシップ第1戦と比べ、スポーツ中継のメイン層とされるM3(男性50歳以上)では大きく落ち込んだが、『男女4~12歳』、『男性20~34歳』、『男性35~49歳』、『女性35歳~49歳』といった区分ではBリーグがトップであることが分かった。

開幕戦の代々木第一体育館で採用した『LEDコート』について、「広告宣伝費だと思って予算をここに一点投下しました」と明かす。そのインパクトは大きく、効果はネット上に表れた。開幕戦が終わった直後のTwitterのトレンドランキングでは20ワードのうち半分以上が、Yahoo!のリアルタイム検索では20ワード中19ワードがBリーグ関連。さらには試合終了からの数時間で各会場のチケットの売れ行きは劇的に伸びた。

葦原はここに、若者をターゲットとする狙いが当たっていると確信するとともに、試合を見ながらSNSに投稿する『ダブルスクリーン』が当たり前になっているという顧客像をイメージした。

ちなみに、開幕戦からシーズンが進むにつれて変わっていったのが来場者の女性比率。5月のファイナルでは、ついに女性客が男性客を上回ったそうだ。

ライト層をアリーナに呼ぶため、コア層にアプローチ

始まったばかりのリーグであり、潜在顧客は多いが試合会場に足を運んだ人が少ない競技である現状、アリーナに来場したことのない、あるいは1回しか観戦経験のない『ライト層』の取り組みが、チケット売上を伸ばすためには非常に重要となる。

だが、葦原が考えるBリーグの手法は、ライトファンに直接訴求して来場を促すアプローチとは大きく異なる。初めてアリーナに来た『ライト層』の意見を集約した結果、チケットを購入して会場に足を運ぶアプローチとして最も有効なのは「誘われたから」だと分かった。

クチコミは有効だが、購買の動機としては弱く、結局はリアルで「一緒にBリーグ行こうよ」と声をかけられることが最大の動機となる。よって、初めてアリーナに来るファンを一人でも増やす、つまり『ライト層を取り込む』のが目的だとしても、手段としては誘う側である『コアファン』の深層心理分析がカギになると葦原は言う。

「まだまだできていないことはたくさんあります」と話す葦原だが、将来像は明確に描けている。新シーズンにどんな手を打ち、どのような成果を出すのかを期待するとともに、5年後、10年後にBリーグの『理想像』が出来上がっていくのを楽しみに待ちたい。