文=丸山素行 写真=鈴木栄一

値千金の得点だけでなく、ディフェンスでも貢献

Bリーグ初の公式カップ戦となったアーリーカップ、強豪ひしめく『関東』大会を制したのはアルバルク東京だった。千葉ジェッツとの決勝戦、接戦が続く最終盤に勝利を決定付ける働きを見せたのがエースの田中大貴だ。

第4クォーター残り59秒、2点リードという場面。逆転を狙った富樫勇樹の3ポイントシュートが外れてポゼッションを得ると、田中は左45度の位置でフリーになったのを逃さず3ポイントシュートを決めた。これが決定打となり、最終スコア77-73でA東京が接戦を制している。

田中は29分の出場で、12得点2アシスト。チームで2番目に多い得点を挙げたにもかかわらず、試合後には「シュートタッチが良くなくて、個人的には今日のパフォーマンスには納得していないです」と語る。それでも値千金の3ポイントシュートの他、圧倒的な攻撃力を誇る千葉を止めるディフェンスの貢献も光り、MVPに相応しいパフォーマンスだったことは間違いない。

「あのシュートが外れていたら、最悪な誕生日になっていたかと」と、田中は冗談交じりに試合を振り返る。誕生日に優勝とMVPを獲得し、「チームメートから最高のプレゼントをもらったので、それだけで十分かなと思いますけど、今日くらいはケーキでも食べようかなと思います」と笑顔を見せた。

「試合のほうが楽」と言わせる練習量を積み重ねた夏

初の開催となったアーリーカップは、レギュラシーズン開幕4週間前とあって各チームによって臨む姿勢は様々だった。それでも田中は、レベルの高い東地区を戦うシーズンを見据え、「こうやってタフな相手と現時点の力を試すいい勝負ができたのは良かったです」と話す。

優勝できた要因を問われると、新ヘッドコーチのルカ・パヴィチェヴィッチによるハードな練習を挙げた。「みんな練習のほうがキツい、試合のほうが楽だと言っている状況です。内容の濃い練習をやれていると思いますし、それはやっぱり良いことだと思います」と田中は言う。チーム始動から2部練習が続き、この時期からハードな日々を過ごしている。それがアーリーカップ優勝という結果を呼び込み、モチベーションを高める『好循環』を生んでいる。

昨年のA東京は終盤に失速し、接戦を落とす試合が何度か見受けられた。だがザック・バランスキーの決勝シュートで勝利した川崎ブレイブサンダース戦や、千葉との決勝戦を見る限り、勝負強さが一段階上へと進化したように思える。

田中もそんなチームに手応えを感じている。「今シーズンに関しては40分間我慢してどれだけ戦えるかだと思っています。昨日(川崎戦)も最後の最後で勝ちましたし、今日(千葉戦)もどっちに転ぶか分からない試合をタフに最後まで戦って勝つことができたので、自分たちのバスケットのスタイルというのが、徐々に見えつつあるのかなとは思いました」

優勝のために「最後にどれだけ良いチームになれるか」

今年のA東京は小島元基、安藤誓哉、馬場雄大、ランデン・ルーカスと若い選手が多数加入した。今大会を通じて彼らの成長を田中は収穫に挙げている。「若いメンバーは試合をこなすことによって成長していきます。自分たちが本当にハードな練習をやっているので、力がついているんだということを優勝で実感できたことはすごく良かったんじゃないかと思います」

昨シーズンはチャンピオンシップに出場するも、ベスト4で終わったA東京。優勝を目指すのは当然だが、それまでの過程が大事と田中は強調する。「本当に積み重ねだと思うので、目の前の一つひとつの試合を大事にして、1試合1試合成長していきたいです。最後にどれだけ良いチームになれるかが優勝するための大きなポイント。先を見すぎず、目の前のことを一つひとつ大切にやっていきたいです」

勝負どころでの積極性を欠いた昨シーズンとは違う姿を見せるA東京。その中で頼もしい活躍を見せるエースの田中は「あと1カ月ハードに練習して、自分自身もチームとしてももう1ランクレベルアップした姿を見せれるようにしっかり準備したい」と、開幕への抱負で締めくくった。