文=丸山素行 写真=鈴木栄一

堅守から立て直す強みを失った栃木、劣勢を覆せず

アーリーカップ『関東』地区の2回戦では、栃木ブレックスと千葉ジェッツが対戦した。Bリーグ初代王者とオールジャパン優勝チームの対戦とあって、実力伯仲の接戦が予想されたが、千葉が88-56と大差で勝利を収めた。

栃木は昨シーズンのファイナルで故障したジェフ・ギブスに加え遠藤祐亮が欠場。田臥勇太も途中出場でわずか3分のプレーと主力を欠いたが、それにしても予想外の大敗に。差が付いたのは第2クォーター、栃木は選手間の連携がうまくいかずビハインドを広げる悪循環に陥っていた。

栃木の長谷川健志ヘッドコーチはこう説明する。「トランジションディフェンスが悪かったのと、CB(セドリック・ボーズマン)を3番で出したのが逆に機能しなかった。彼をどうやって生かすのかもチームとしてまだできていなく、タフショットになって走られました」

昨年の栃木はリーグナンバー1の守備力を誇り、相手に主導権を握られてもディフェンスから立て直すことができたが、今日の試合ではそれができなかった。「オフェンスの終わり方が悪いとディフェンスに影響します。ディフェンスだけ頑張ると言ってもオフェンスの終わり方が悪かったらディフェンスも乗らないので」とは長谷川ヘッドコーチの弁。

一方、前半を終えて45-22と大量リードを奪った千葉の大野篤史ヘッドコーチは「第1クォーターは入りが良かったのに、ディフェンスがルーズになってイージーバスケットを何本もやられました。その時に『ディフェンスのフォーカスを変えなさい、自分たちのテンポが生まれないよ』と伝えました」と語る。

千葉の選手たちは指揮官の言葉を忠実に実行した。良いディフェンスからリバウンドを取り、テンポを上げる。思うように立て直せない栃木を攻め続け、第2クォーターを28-7と圧倒した。

千葉は新戦力が揃って結果を出し、優勝に向け意気盛ん

昨シーズンのチャンピオンシップでもこのカードが実現したが、この時は栃木が大量ビハインドをひっくり返す鮮やかな逆転勝利を挙げている。だが、ヘッドコーチも選手も入れ替わり、立ち上がったばかりの今のチームに、その力はなかった。

後半も若手中心の選手起用で挽回を図るも、一度狂った歯車はなかなか元に戻らない。新加入選手は迷いながらプレーして持ち味を発揮できず、エースのライアン・ロシターも31分のプレーで9得点と平凡な出来。

長谷川ヘッドコーチは「内容的にもスコア的にもまだまだ我々が目指すものに程遠いと分かり、良い課題ができたと思っています」と敗戦をポジティブにとらえようとした。しかし、リーグが掲げる「3大タイトルの一つ」というアーリーカップの位置づけを額面通りに受け止めていないのは明らか。栃木はチームの始動も遅く、この時期に真剣勝負を求めること自体が間違っているのかもしれない。

対照的に、ホームの船橋アリーナ開催ということもあって千葉はタイトル獲得に向け意気盛ん。司令塔の富樫勇樹は代表活動の疲れも見せずプレーしているし、新加入のトニー・ガフニー、アキ・チェンバース、ギャビン・エドワーズが揃って結果を出している。試合後の大野ヘッドコーチは「夏にキャンプでやってきたことをコートで表現できたところが収穫です」と、昨日と同じコメントを繰り返した。

明日の決勝は千葉ジェッツとアルバルク東京との対戦となる。