本橋菜子

「大きい相手に対してスピードで行けると思った」

日本代表の4連覇で幕を閉じたアジアカップ。この大会でMVPに輝いたのが本橋菜子だ。先発を務めた町田瑠唯は日本の『走るバスケ』をパスで演出する司令塔だが、スピードで切り込んで自ら得点を狙うスコアリングガードとしての本橋のスタイルが、この大会ではハマった。

「昨日すごく積極的に攻めて、空いたらシュートを打つ自分のプレーができたので、今日も自分が出た時間帯は引き続き。それが自分の役割だと思うし、それでチームに貢献したいと思ったので積極的に最後まで攻め続けました」

特にサイズのある準決勝オーストラリア戦、決勝の中国戦では、渡嘉敷来夢とのピック&ロールでサイズの大きい選手とマッチアップする状況を作り出し、スピードでブチ抜いて得点を量産。ブロックショットを浴びる場面もあったが、試合を通して見れば本橋の完勝だった。

「ミスマッチでドライブすることは練習中からすごく意識していたし、そこは絶対に攻めて行けと言われていました。下がられたら3ポイントシュートとかジャンプシュート、出て来たらドライブというプレーを練習中からずっとやってきて、そこがしっかり試合で出せました」

「大きい相手に対してスピードで行けると思ったので、最後のフィニッシュだけタイミングを見れば攻められると強気で行きました」。その言葉通りのアタックで、オーストラリアを相手に22得点6アシスト、中国には24得点8アシストと出色の出来。ファイナルでの24得点は大会を通じて1試合最多得点。平均17.0得点、5.0アシストはともに大会トップの数字となった。

本橋菜子

「苦しいこともいっぱい、みんなで頑張ってきた」

ひざの大ケガで長く苦しんだ時期もあった。司令塔としてエースとして引っ張る東京羽田ヴィッキーズは、なかなか優勝争いに絡むことができない。また今は状況が変わりつつあるが、女子の有望選手は高校卒業とともにWリーグに行くケースがほとんどの時期、本橋は早稲田大へと進学している。日本代表に初めて招集されたのも去年のこと。それでも、ここまで積み重ねた努力がこのタイミングで形になり、『アジアのMVP』へと躍り出た。

「信じられなかったんですけど、本当に感無量ってこういうことなんだなって」と、金メダルを下げた本橋は晴れやかな笑顔を見せる。

「本当に達成感が一番大きいです。4連覇するために合宿で積み重ねてきて、苦しいこともいっぱいあったし、みんなで頑張ってきたので、達成感が一番強いです」

今回の代表活動も、特に序盤は本橋にとっては苦しいものだった。Wリーグのシーズンを終えて一度コンディションを落とし、代表合宿が始まってもなかなか調子が上がらないことに焦りを感じたこともある。「上手く行かない時期が今年は多くて、トムさん(ホーバスヘッドコーチ)にも結構怒られたんですけど、大会の最後でこういう賞が取れたのは本当にうれしいです。これに満足するのではなくて、これから先はよりマークされると思うので、もっともっと成長していかないといけないなって」と本橋は言う。

帰国してすぐにWリーグが開幕する。本橋を擁する東京羽田はリーグ開幕を10月4日、大田区総合体育館で迎える。この日は東京羽田vs山梨クィーンビーズの試合が15時半から、そしてJX-ENEOSサンフラワーズと富士通レッドウェーブの試合が19時から同会場で行われる。