文=鈴木健一郎 写真=小永吉陽子

ゾーンディフェンス攻略を糸口に大濠が巻き返す

福島で行われたインターハイ最終日、男子の決勝は福岡大学附属大濠(福岡)と明成(宮城)の対戦。2014年と同じ顔合わせで、この時は明成が、国際大会に出場するために決勝前にチームを離れた八村塁と納見悠仁を欠く戦いを強いられて敗れている。

その明成は田中裕也の3ポイントシュート攻勢でスタートダッシュに成功。試合開始からの4分で11-0のランを展開して主導権を握り、第1クォーターを16-9とリードする。大濠は明成のゾーンとマンツーマンを併用するディフェンスに戸惑い、大きく出遅れたが、第2クォーターにはゾーンディフェンスを攻略してアップテンポの打ち合いに持ち込み、32-36と4点差にまで追い上げる。

そして後半、2年生の土家大輝が積極果敢なドライブで明成の守備をこじ開け、攻略の糸口を見いだす。第3クォーターの最後に食い下がる明成を突き放して逆転に成功。49-47とリードして最終クォーターを迎えた。

その後は両者一歩も譲らぬ一進一退の攻防に。それでもU-19ワールドカップに唯一の高校生選手として参加した中田嵩基が巧みなゲームコントロールで明成の『走るバスケット』を封印し、さらには井上宗一郎のブロックショットが炸裂、シュートセレクションでも上回って主導権を握る。

明成は逆転を許した上に、得点源の八村阿蓮を封じられ、自分たちのバスケットを展開できず苦しんだが、粘りのバスケットで大崩れすることなく大濠に食らい付き、終盤まで接戦が続く。

残り1分37秒、大濠は横地聖真が勇気あるドライブでファウルをもぎ取り、フリースロー2本を沈めて明成を突き放す。なおもあきらめない明成は、残り1分9秒で大濠の攻めをスティール。ここで得点できれば流れを変えられるところだったが、大濠の戻りが早くて攻め切れず、結局はオフェンスファウルでチャンスを逸することに。痛い痛いターンオーバーとなった。

最後まで分からない大接戦、明暗を分けたフリースロー

残り1分を切って大濠が61-58で3点リードの場面。大濠は自ら24秒オーバータイムを選択し、残り8秒で明成に最後のポゼッションが回ってくる。3ポイントシュートを打たせてはいけない場面、明成は相原アレクサンダー学が急ぎ2点を取りに行ったところで、大濠はまさかのシューティングファウルを犯してしまい、バスケット・カウントに。だが、明成はここで決めれば同点のボーナススローを落としてしまう。そのリバウンドを競っている間に試合終了のブザー。最後までバタバタの展開となったが、大濠が競り勝つ結果となった。

立ち上がりから大量リードを許し、第3クォーターの終盤までビハインドを背負った大濠だが、前日の帝京長岡(新潟)戦で4OTまでもつれた疲労を感じさせない戦いを展開し、見事な逆転勝利を収めた。中崎圭斗の20得点、途中出場で逆転に至るエナジーを注入した土家の13得点の活躍が目立つが、中田を中心に明成に有利な展開に持ち込ませなかった試合運びも光った。

一方の明成は準決勝までMVP級の働きを見せた八村阿蓮が14得点止まり。18リバウンドと十分な存在感を見せたが、インターハイ制覇にはあと一歩届かなかった。チームとしては14アシストを記録しながら14ターンオーバーと、効率の悪さが最後に足を引っ張ることになった。

大濠のキャプテン、永野聖汰はここ2年連続で1回戦負けを喫していたインターハイでの雪辱に成功。「ようやく結果を出せてうれしいです。厳しい試合の中、みんなが勝つ気持ちでやってきました」と喜びを語り、「ウインターも負けないという気持ちでやりたいです」と、早くも高校バスケの集大成となるウインターカップを見据えた。