「身体の使い方を成長させ、ぶつけることに慣れる」
昨夜、バスケットボール日本代表はワールドカップを終えて帰国した。5試合を戦い勝利を挙げられず大会を終えたことで、選手たちの表情は険しいものだった。世界のレベルがいかに高いかを痛感させられる大会となったが、一番厳しかったこととして田中大貴は「40分間当たられ続けて削られて、終盤に足が止まってしまう」と、フィジカルコンタクトの差を挙げた。
これについて篠山竜青は「日本が世界と戦う時に出てくるのがフィジカル。でもこれは何十年も前から言われていて、何なんだと今回考えました」と持論を語り始めた。「僕が感じたのは、身体をぶつける、当てに行くことの慣れや技術です。じゃあ僕がもっと筋トレをするのか、体重を増やせばいいのか。そうではなくて、僕の体格でもしっかりポジションを取って準備ができていれば、210cmある相手にも耐えて、止めることができます。なので、ウエイトトレーニングをやるだけでなく、身体の使い方を成長させて、身体をぶつけることに慣れる必要があります」
「チャンスがあるなら中学生とかの時に、柔道やアメフトのようなコンタクトスポーツの中で身のこなし方を覚えることがヒントになるのでは」と篠山は言う。
「自分たちが先手を取ることが絶対に大事」
フィジカルコンタクトについては、NBAを経験する渡邊雄太も差を感じたと言う。「海外の選手は身体が強い上に、向こうから当てに来ていました。僕はアメリカでこういう経験をしていますが、ヨーロッパ勢の身体の使い方は違うと感じたし、日本は身体の弱さがあるにもかかわらず後手になる。ぶつけられてから対応しても遅いです。自分たちが先手を取ることが絶対に大事になります。口で言うほど簡単ではないですが、やれと言われれば絶対にやれる部分。やらなくてはいけないです」
ヘッドコーチのフリオ・ラマスにとっては、フィジカルの強化は就任以来掲げているテーマだ。「サイズアップとフィジカルの強化が課題だとずっと言っている。今は修正して成長している段階」と語る。
これからリーグが開幕し、代表チームとしてまとまった活動はできなくなるが、その間もそれぞれの選手が個々でレベルアップに取り組むことが欠かせない。「彼らが所属クラブに戻り、国内では代表選手が先頭に立ってフィジカルコンタクトの経験を他の選手に伝える、そういったプレーをすることが大事。そうやって周りに影響を与えていくことが日本バスケのために必要だ」と指揮官は語る。
バスケットはハビットスポーツ。つまり『習慣』が試合に出る。篠山が言う「身体をぶつけることに慣れる」ことは、毎週末のBリーグの試合から、さらに言えば毎日の練習から意識して取り組み、身体に覚えさせるしかない。
篠山は言う。「Bリーグの試合の中でスタンダードを上げること。それは日本代表としての責任だと思います。若い世代に伝えていくことも現役のうちにやれればと思いました」
意識を変える。習慣を作る。渡邊が言うように「口で言うほど簡単ではない」が、代表選手が今回感じた『世界レベルとの差』に対して絶望するのではなく、その差を埋めるための意識を強く持ち続けることができれば、少しずつでもスタンダードは上がっていく。一朝一夕で世界に追い付くことはできない。一歩ずつ、一つひとつのプレーで差を埋めていくしかない。