チームでディフェンスし、チームでオフェンスした東芝神奈川
NBLプレーオフファイナル第3戦。初戦から連敗を喫して後がない東芝神奈川が、ようやく本来のバスケットを取り戻した。
試合は立ち上がりから両者とも激しく、なおかつ冷静にバランスを保ちながらのディフェンス合戦。開始直後に桜木ジェイアールとやり合ったジュフ磨々道がアンスポーツマンライク・ファウルを取られるなど、激しいスタートとなった。
インサイドの強みを生かそうと内を固めるアイシン三河に対し、東芝神奈川は前から積極的にボールにアタックする。ミドルレンジからのジャンプショットを確実に決め、辻直人の3ポイントシュートも飛び出した東芝神奈川が最初に抜け出した。
比江島慎を中心とするアイシン三河の反撃を浴び、比江島の3ポイントシュートで26-26と追い付かれるも、そこから9-2のランで再び突き放すなど東芝神奈川がリードを守る。この日の東芝神奈川はチーム全体が積極的。第2戦に敗れた後、北卓也ヘッドコーチが「雰囲気に飲まれて、シュートを打てるところで打っていない選手が何人かいる」と指摘していたのとは全く別の姿を見せた。
39-37と2点リードで迎えた第3ピリオド、東芝神奈川は一気に抜け出す。辻が3ポイントシュートを狙うと見せかけてパス、ニック・ファジーカスからのリターンをもらって投じた3ポイントシュートをまず決めると、次は同じ流れからファジーカスがそのまま3ポイントシュートを決める。続いて篠山竜青が真正面からミドルシュートを沈めて、47-37とリードを10点に広げた。
東芝神奈川のオフェンスは、辻とニック・ファジーカスの2人に限らず、誰もが積極的だった。ジュフ磨々道はインサイドで我慢強く戦いながらコツコツと得点を重ね、永吉佑也がインサイドでパワフルな仕掛けを見せれば、長谷川技は攻守が切り替わるたびに誰よりも早く走る。栗原貴宏や山下泰弘など、ここまで持ち味を発揮できなかった選手が果敢な働きを見せたことでオフェンスの幅が広がり、アイシン三河に的を絞らせなかった。
62-51で迎えた最終ピリオド。残り4分58秒、ファジーカスがアイザック・バッツとギャビン・エドワーズの2人に挟まれながらゴール下のジャンプショットをねじ込んで72-62、ここでオフィシャルタイムアウト。リードは再び10点、残り時間も少なくなっていたが、それでもこの2試合でアイシン三河はその強さを十分に発揮しており、気を許せば一気に流れが変わってもおかしくない、緊張感のある終盤となった。
試合が動いたのは残り3分37秒。3ポイントシュートを打たすまいとミドルエリアで激しくチェックするアイシン三河の守備陣を、辻が巧みなドリブルでかわし、そして引き付けてパス。フリーでこれを受けたファジーカスが3ポイントシュートを決めて、77-66と突き放す。
この直後、アイシン三河のインサイドを支えるバッツが5ファウルで退場。残る2人のビッグマン、エドワーズと桜木ジェイアールもファウルトラブルに陥っており、強く当たることができない。最後は桜木も5ファウルでコートを去り、東芝神奈川が88-73で勝利した。
前年王者のアイシン三河に一矢報いた東芝神奈川の北ヘッドコーチは、「これが本来の東芝のプレーです」と胸を張った。「全員が頑張ってくれました。気持ちの面は大きいです。ミスしても次、次という気持ちで、チーム力でアイシン三河に勝ることができた。チームでディフェンスして、チームでオフェンスできました」
アイシン三河のエース、比江島は敗因をこう語る。「シュートがあまり入らなかった印象もありますが、やはりディフェンスです。いいディフェンスをしても肝心の場面でリバウンドを取られたりして、良い流れを作れませんでした」。だが、先に2勝していることもあるのか、比江島に自信を失った様子はなかった。
「今日で終わらせたかったのですが、こうなってしまった以上は、アイシンのバスケットを見せられる機会をもらったと切り替えます。1週間で良い準備をします」
ファイナル第4戦は6月4日、場所を大田区総合体育館から代々木競技場第二体育館へと移して行われる。
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