コー・フリッピン

「カルバーのリズムを作らせないことに集中した」

53日に開催された群馬クレインサンダーズと仙台89ERSのレギュラーシーズン最終戦。オーバータイム残り9.2秒。1点ビハインドかつ仙台ボールと、群馬は窮地に立たされた。バスケットボールの定石ではファウルゲームを選択する場面だが、群馬はここで素晴らしいチームディフェンスを見せた。

仙台はエースのジャレット・カルバーにボールを託す。マッチアップした群馬のコー・フリッピンがカルバーに身体を寄せると同時に、エージェー・エドゥがダブルチームを仕掛け、ジャンプボールシチュエーションに持ち込みマイボールに。その後のポゼッションで中村拓人がブザービーターを沈めて、87-86で見事な逆転勝利を収めた。

今シーズン平均26.5得点で得点王に輝いたカルバー対策は、群馬にとって重要なミッションだった。結果的に、この試合で36得点を許したものの、7つのターンオーバーを誘発したことを踏まえれば、決して自由にプレーさせたとは言えない。

カルバーとのマッチアップが予想されたトレイ・ジョーンズを欠いた群馬は、スピードのミスマッチを避けるためガードの選手たちがカルバーとマッチアップ。その中でも執拗なディフェンスを仕掛けていたのが、フリッピンだった。

前述の重要な場面以外でも、フットワークを生かしたフリッピンのディフェンスはカルバーに有効だった。フリッピンはマッチアップをこう振り返る。「彼がリーグでもトップクラスの選手だということは分かっていました。完全に抑えるのは不可能ですが、100%のパフォーマンスをさせないことが重要だったので、リズムを簡単に作らせないことに集中しました」

1クォーターはカルバーを1得点に抑えたものの、その代償としてフリッピンは2つのファウルを犯した。第2クォーターは出場はなかったが、後半は要所で存在感を示した。「ファウルの影響でアグレッシブさを抑える必要がありました。後半は、より賢く守ることを意識しました」

個々の強度に加えて、チームディフェンスを機能させることも不可欠だった。カルバーにボールが渡ればダブルチームを仕掛け、そこから展開された際には素早いローテーションで対応してみせた。

フリッピンも手応えを感じていた。「チームディフェンスは全員の意識が重要でした。トレイやJT(ヨハネス・ティーマン)がいなかったから、いつもと守り方を変えなければいけなかった。より多くの選手がプレーに関わることで遂行できました」

コー・フリッピン

「優勝してクラブとこの街を誇りに思ってもらえるように」

フリッピンはディフェンスだけでなく、オフェンスでも自身の持ち味を発揮した。この試合で記録した9得点は3本のバスケット・カウントによるもの。コンタクトを受けながらも、しっかりと得点に結びつける強さを示した。

「最初のand 1でゴールにアタックする自信がつきました。相手にリムプロテクターがいなかったので、アグレッシブにリングへ向かえたことが良いプレーに繋がりました」

そう振り返る1本目のバスケット・カウントは、ファストブレイクから生まれた。リバウンドを獲得し、そのままリングまで一直線にボールプッシュしての得点。試合開始から6分半で4得点と停滞していた群馬にとって、起爆剤となるビッグプレーだった。このプレーをきっかけに群馬は残り3分半で13得点を挙げて序盤の主導権を握った。

スピードと身体能力を生かしたプレーは以前からフリッピンの魅力だが、今シーズンはプレーメーカーとしても成長を見せている。アグレッシブさで試合のリズムを変えるだけでなく、群馬が重要視するハーフコートバスケにおける状況判断やクレバーさが目立つようになってきた。

「チームメートを生かして得点に繋げる力は、自分の強みになってきています。自分がスコアリングしなくても『どうすれば一番効率よくチームの得点につながるか』を常に考えています。チームメートのチャンスを広げることが自分の強みになり、結果的にチーム戦略の強みになっています」

今シーズンは大ケガを負い、36試合の出場にとどまった。外からチームを見る時間が長くなったことが、より広い視野を持つ契機になったのではないかと想像し、フリッピンにそう問うた。フリッピンは笑顔で、まさにケガの功名だと言う。

「復帰した時には100%の状態ではなかったので、プレーのスピードを落とさざるを得なかったです。それが結果的に、状況を分析しながらプレーすることになり、チームを客観的に学ぶ機会になったと思います」

群馬はB1でのクラブ最高勝率となる4218敗でレギュラーシーズンを終えた。チャンピオンシップのクォーターファイナルは、アウェーで千葉ジェッツと対戦する。千葉Jは、フリッピンにとってプロキャリアをスタートさせたクラブであり、優勝も経験している古巣である。

10月の対戦時には出場できなかったので、彼らと戦えるのがとにかく楽しみです(笑)。群馬にとって楽しい週末になります」。そう笑顔で語りながらも「純粋に戦う準備はできています」としっかりと兜の緒を締める。

フリッピンは異なる2クラブでチャンピオンリングを持っている稀有な存在。現状、3クラブ目のチャンピオンリングを狙えるのは、リーグ内でも彼ただ1人である。「チャンピオンシップを獲得できるチャンスがあるチームです。ここで優勝して、このクラブとこの街を誇りに思ってもらえるようにしたいですね」