「NBAに行けなかった選手に選ばれるリーグに」
──Bリーグになってシーズンを重ねる中でグローバル化が進み、海外に挑戦する日本人選手は増えているし、日本に来る外国籍選手のレベルも高くなっています。Bリーグのグローバル化についてはどう考えていますか?
NBAに挑戦する選手がいるのであれば、Bリーグとしてはできる限りサポートしたいと考えています。ただ、NBAを狙うのであれば育成のU18、U15を整備して、NCAAを経由しての挑戦が今後は増えてほしいですね。Bリーグで経験を積んで挑戦する馬場雄大選手のケースもありますが、もうちょっと若い時期にアメリカに行かせてあげたいと思います。これからはBリーグのクラブのU18もウインターカップに出られるようになります。U18やU15で鍛えてNCAAに挑戦する道ができれば、高校卒業を待たずに16歳や17歳でもアメリカに行けるようになるかもしれない。そこをリーグとしてサポートしたいです。
Bリーグでプレーする外国籍選手のレベルも、もっともっと上げていきたい。もともと地政学的な問題で「極東の島国でバスケットやってるの?」みたいな認識の選手もいっぱいいました。それがBリーグになって注目を集めるようになった。そういう意味でも八村塁と渡邊雄太の存在は大きくて、彼らをきっかけに海外のエージェントが日本に目を向けるようになりました。加えて安全だし待遇も良い。他のリーグみたいな給料の未払いもありません。
Bリーグとして掲げているビジョンに『NBAに次ぐリーグとしての地位確保』があります。これはNBAで契約できなかった選手がヨーロッパやGリーグに行くのではなく日本を選ぶ、そんなリーグになることです。今、バイエルンだとかレアル・マドリーやバルセロナといったヨーロッパの名門チームの事業規模は20億から30億です。千葉ジェッツは今、17億まで来ています。あと5年もすれば、この規模のチームが5、6チームはできてくる。そうなるにつれて本当に良い外国籍選手にオファーできます。活躍が見込める外国籍選手を担当するエージェントに私たちがBリーグを正しくアピールして、この健全なリーグに良い外国籍選手を連れてくる。そんな取り組みを一歩一歩やっていきます。
「Bリーグにいたほうが成長できる、というリーグに」
──馬場選手がサマーリーグ挑戦を終えて「Gリーグでもいいからアメリカに残ってプレーしたい」という旨の発言をしました。Bリーグとしては、日本を代表するトッププレーヤーに、それがアメリカであっても育成リーグを選ばれるのは良いことではありませんよね。
だからこそ、レベルの高い外国籍選手を本当はベンチに3人置いて、さすがに3人同時出場となると日本人が出られなくなるので限界がありますが、フレッシュな2人が常にコートにいて、そこをかいくぐらないと馬場選手はやれないよ、という状況が欲しいですね。オン・ザ・コートのルールを含めた2020-21シーズン以降のレギュレーションは、11月に発表したいと考えています。
外国籍選手を3人登録できると、日本人のビッグマンがいるチームは、初年度のディアンテ・ギャレットみたいなガードの外国籍選手を取るかもしれません。馬場選手は今のBリーグでも成長していますが、もっともっと上のレベルになってもまだBリーグで得られるものがある。それが『NBAに次ぐリーグとしての地位確保』という取り組みでもあります。
比江島慎選手を見ていても、オーストラリアを経験して当たりには強くなったし、そういう中でシュートを決められるようになったと思います。ただ、試合に出られないのでは良くありません。それでもBリーグより成長できるのか、Gリーグに行けば本当に上手くなるのか。それはある意味では壮大な実験だし、挑戦なのですが、そこで「Bリーグにいたほうが成長できる」と見なされるリーグになりたいです。そのためにも、各クラブの事業規模をもっと大きくして、国際的なコネクションをユース世代から作っていくことは大事だと考えています。
「バスケットボールを国民的スポーツにするチャレンジ」
──Bリーグのビジョンに『憧れの職業No.1、就職したい企業No.1』が加わりました。あえてこれを掲げたことが割と驚きだったのですが、どんな思いが込められているのでしょうか。
そこも『BREAK THE BORDER』です(笑)。子供の憧れの職業と言えばもともとプロ野球選手で、Jリーグができてサッカー選手が上回りました。バスケは部活動でやっている人数が多くて、女子の競技人口もありますし、そこに八村や渡邊も出てきたので、少子高齢化の中でそれなりに健闘できると思います。子供がBリーグの選手になりたいと願う、それが国民的スポーツの一つの証だと思います。
もう一つは『就職したい企業No.1』ですが、私の感覚からすると、スポーツが本当の意味で産業化して、ブラックじゃなくて給料もある程度は払えるものにすることです。アメリカではNBAで働くのは一流企業に入るのと同じです。スポーツの仕事は感動と隣り合わせで、筋書きのないドラマを毎日見るわけだから、銀行で働くよりずっと面白いですよ(笑)。ただ、それが今までは「好きだから」という理由で薄給で酷使されている状況がありました。状況はかなり良くなってきているとは思うのですが、それをちゃんとしたガバナンス統治が効いた中で、ちゃんと収入も得られる組織にしたいです。
それで『就職したい企業No.1』になるのかどうかは分かりませんが、選択肢の一つにはなりますよね。今はスポーツマーケティングを教える大学がものすごく増えましたが、出口がありません。その一つにBリーグがなれればいいと思います。
──これはBリーグが目指すだけでなく、クラブにも言えることですね。
その通りです。例えば首都圏以外に行くと、今でも就職先で人気なのは県庁や金融機関ですよね。そこにB.LEAGUEのクラブが入らないといけない。首都圏と比べると周辺産業も小さいかもしれませんが、東京一極集中を避けることにもなるし、それぞれの地域でスポーツが産業化することが、地域密着のクラブが全国各地にあるBリーグやJリーグの持ち味であり、引いては日本への貢献になると思っています。
そのためにはBリーグをもっと盛り上げなければいけない。Bリーグ全体の入場者数は224万人から始まって250万人、259万人と伸びていますが、新シーズンの目標は275万人に置いています。この目標を達成することがまずは一番。B3まで入れて300万人に近付いていきたいです。来年に沖縄の新アリーナが完成すれば、それだけで10万人増えるかもしれない。そんな期待を持ちつつ、ワールドカップやオリンピックとも連動させて、バスケ人気を爆発させたいですね。
この1年は予算が限られているから画期的な投資、『BREAK THE BORDER』はできませんが、そのための仕掛けをいっぱい考えておくのが今年です。バスケットボールが国民的スポーツになるための第一歩を、令和元年に『令和のBリーグ』として踏み出します。
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